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» 2007年12月05日 11時20分 公開

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」VOL.3:ソニー「VW200」で観る「キング・コング」のナオミ・ワッツ (2/2)

[山本浩司,ITmedia]
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キセノンランプ特有の味わい

photo (C)2005 Universal Studios and MFPV Film GmbH. All Rights Reserved. THE EMPIRE STATE BUILDING IS A TRADEMARK OF EMPIRE STATE BUILDING L.L.C. AND IS USED WITH PERMISSION.

 「ロード・オブ・ザ・リング」三部作で、世界的な評価を確立したピーター・ジャクソン監督がメガフォンを撮ったこの映画、3時間を超える長尺作品だが、よく練られた脚本と素晴らしい映像とサウンドデザインで、まったくダレることなく最後まで楽しめる。間然するところのない傑作といってよい(2005年アカデミー賞で、視覚効果、音響効果、音響の3部門でオスカーを獲っている)。

 ナオミ・ワッツ演じるアン・ダロウは、30年代の大恐慌時代のニューヨークに生きるコメディエンヌ。映画プロデューサーのカール・デナム(ジャック・ブラック)に口説かれて、冒険映画の主演女優として南海の孤島スカルアイランドへ。しかし、そこで原住民に捕らえられ大猿キング・コングの生贄にされるが……。

 孤島に取り残され、たくさんの恐竜たちに狙われる彼女を身を挺して守ろうとするコングの男らしい戦いぶりが大きな見ものだが、ぼくがいちばん好きなのは、捕獲されニューヨークに見せ物として連れて来られたコングがアンを探し求めて大暴れした後、彼女と再会し、二人(一人と一匹か)でエンパイアステートビルに登って夕陽を眺めるシーンである。

 ここでの慈愛に満ちた表情でコングを見上げるアン=ナオミ・ワッツのはかなげな風情がほんとうに素晴らしく、ぼくは自宅のプロジェクターVPL-VW100でこのシーンを観て、撮影当時37歳のナオミ様ととつぜん恋に落ちたのだった!

 前回の「ビクターLH805とナスターシャ・キンスキー」で述べたが、バックライトに色温度の高い螢光管を使った液晶テレビや高圧水銀ランプを用いた3LCDプロジェクターは、6500k近辺まで色温度を落したシネマ・ポジションで見ると、女性(とくに白人女優)の肌色に違和感を抱くケースがすごく多い。顔が妙に黄色がかったり、緑がかぶったり。ブロンドの髪もなーんか違う。金髪というより黄土色髪というか。

 白人女性と個人的にそれほど親しくお付き合いしているわけではないけれど、ほとんどがこれ明らかに間違ってるでしょ、と思えるスキントーンなのである。この肌色がディレクターズ・インテンション=制作者の意図です、と言われると返す言葉はないのだが、そんなときぼくは「制作時のマスターモニターの色温度設定が正確に合ってなかったんじゃないですか」と声に出さずにつぶやくのである。

 ところが。このVW200の「色温度・低」のナオミ様の肌色が実にいいのだ。5500kで観てまったく違和感がない。顔色が妙に黄ばんだり緑がかったりすることなく、そうか30年代のニートな時代の白人女性はこんな感じだったんだろうなとノスタルジックな気分を喚起する、美しい女性像を活写するのである。やはりこれは5500kがキセノン光源の色温度に近い設定で、RGBそれぞれのゲイン・バイアスを大きく動かし、電気的な補正を過度にかけて無理やり低い色温度のホワイトバランスをつくっているわけではないからなのだろう。高価で消費電力の大きいキセノンランプだが、やはりこの光源ではなければ味わえない、ハイエンドな色が存在するのは間違いない。

 また、本機の「色温度・中=6500k」「色温度・高=8000k」のフェイストーンも実に安定している。色温度が上がるにつれ、ナオミ・ワッツがどんどん現代女性らしく見えてくるのが面白い。

 コングとアンがニューヨークで再会し、お互いを見つめ合うシーンの安定したコントラスト表現も出色だ。平均輝度が大きく変動する切り返しショットが続くが、アイリス(絞り)オート1の設定で、ほとんど違和感を抱かせない。黒そのものの沈み込みは、ライバル機ビクター「DLA-HD100」のほうが勝るが、隣に並べない限り、本機の黒表現に不満を感じることはないだろう。

 先述したように、ぼくはこの2年ほど本機の前のソニー製プロジェクターのトップエンド・モデル「VPL-VW100」を自宅で使用している。それとの比較でいうと、絞りを使わないネイティブ・コントラストが本機は明らかによくなっているし、カールツァイス製レンズを奢った光学ブロックの性能向上により格段にフォーカス感が上がって見える。

 また、本機ならではの特徴として、中間フレームを生成する120Hzハイフレームレート駆動の採用が挙げられる。しかし、映画ソフト再生に限れば、中間フレームの生成を行なわない「モーションエンハンサー・切」、24フレームの単純等倍速表示となる「フィルムプロジェクション・切」の画質がいちばん好ましい。

 モーションエンハンサーを入れると、やはり映画の場合は、これまで見たことのない「不自然な滑らかさ」にどうしても違和感を抱いてしまう。動いている人物が、ぐにゃぐにゃした骨のない生物(?)のように見えるときがあるのだ。

 中間フレームは生成しないが、フレーム間に黒画面や逆ガンマ処理した映像を挟み込むのが、フィルムプロジェクション。まさに映画館方式といえる表示法だが、これを動作させると、やはり画面が暗くなりすぎる印象だ。もっとハイフレームレートの映像、例えば180Hz駆動くらいになると、面白い効果が得られるのではないかと思う。

 では、「モーションエンハンサー・切」「フィルムプロジェクション・切」の状態でどのように映画ソフトの映像が表示されるのかというと、24p入力の場合は4等倍(96Hz)、60p入力では、2-3プルダウン検出で24フレームに戻し、5等倍(120Hz)で表示される。


 そんなわけで、本機の最終画質を確認して、我がシアターへの導入を決めた。それに合わせ、スクリーンも現状のホワイトマット・タイプから、より華やかな色再現を見せるゲイン1.3のキクチ/スチュワートのマリブに取り替える予定。このペアでこれからどんな美しい女優さんたちに出会えるのか、ほんとうに楽しみ。ぼくのホームシアター趣味も病膏盲に入ってきた感じです。

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