この秋から冬にかけて、各社から一斉に発売されたHDMI 1.3a対応のAVアンプ。今回は、その最新モデルのなかから実力派がそろう実売10〜20万円クラスにフォーカス、6機種をピックアップして、サウンドとユーザビリティーの両面から実力を徹底的にチェックする。まずはデノン「AVC-2808」を紹介しよう。
オーディオ機器メーカーとして長い実績を持ち、近年はプレーヤーからアンプ、スピーカーに至るまで、オーディオビジュアル全般に対して積極的な展開を見せているデノン。AVアンプに関しても力が入っており、ラインアップはプリ/パワー別売で合計147万円(!)のフラッグシップ「AVC-A1HD」(プリアンプ)/「POA-AIHD」(パワーアンプ)から定価5万8800円「AVC=1508」の入門機まで5モデル、しかもそのすべてがHDMI 1.3aに対応済みという充実ぶりだ。
今回紹介するAVC-2808は、同社HDMI 1.3a対応AVアンプのラインアップのなかではちょうどミドルクラスに位置する存在。その内容を詳しく見ていくと、コストとクオリティーが絶妙であることが分かる。
まずAVアンプにとって音質の肝となるデコーダー/コンバーターには、上位機種と同様のシステムが投入されている。アナログデバイセズ製32bit“SHARC”DSP2基をコアとしたDDSC-HDサラウンド回路や、192kHz/24bitDAC、デノン独自の高音質技術「AL24Processing Plus」などのチョイスは上位機種とまったく同じ構成だ。
加えてパートごとに分離独立した基板配置やマスタークロックの純度を高めて残留ジッターを押さえる回路構成、可変ゲインボリュームの採用などの設計思想も共通。そうした基本的なサウンドクオリティーは維持しつつ、シャーシの作り込みや電源トランスのグレード、入出力端子の数、HDMI→HDMIのIP変換、Webラジオ対応など、コスト対効果のさほど大きくない付加機能を取捨選択することで、絶妙なコストバランスを保っている。
フロントパネルにはセレクター/ボリューム/オン・オフスイッチのほか、いくつかの小さなボタンを配置。そのうち、右下にあるクイックセレクトが結構役に立つ。カスタムしたサウンド設定を3種類呼び出せるようになっているので、映画やライブ、CDなど、1台のユニバーサルプレーヤーから異なるテイストの音を再生するときなどにはとても便利だ。LEDが点灯するため、シアター試聴中の暗がりでも操作は容易。大いに活用したいボタンだ。
リモコンの操作感も良かった。ボタンの数を整理して最小限に留めるかわりに、モニターを活用してモードごとに操作系を最適化しており、複雑な操作も比較的スムーズに行えた。オフブラックのボディとシルバーのボタンというカラーレイアウトも見栄えよく、リモコン操作に対する反応も素早い。文句のない出来映えだ。
接続から自動音場調整、その結果を微調整という一連の操作も良好。オンスクリーンメニューは英文表示ながらもシンプルで分かりやすかった。唯一の欠点はスピーカー端子の接続だろう。ターミナルにもコストダウンの手がまわっているのか、ダイヤル部分が微妙に小さく固定しにくかった。頻繁に手をいれる部分ではないと割り切るしかないだろう。
一番の問題はHDMI端子の少なさかもしれない。今回取り上げたもののなかで唯一、入力端子が2つしかないのだ。購入時はこの数でも足りるかもしれないが、今後はHDMI接続機器が主流となるだろうから、すぐに不足してしまうのは明白だ。もう1〜2つは装備して欲しかったところだ。HDMI機器が増えてしまった場合、面倒だがセレクターで補うしかなさそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR