本連載では、ヤマハ、パイオニアのこの冬のAVアンプのフラグシップ・モデル、「DSP-Z11」と「SC-LX90」の魅力についてリポートしてきた。そして、ついに今回は真打ち、AVコントロールアンプ部と10チャンネル・パワーアンプ部を別筐体にしたセパレート型、デノン「AVP-A1HD/POA-A1HD」の登場である。
発売は1月下旬ということで、ホンバンの製品の試聴はまだかなわないのだが、最終試作モデルの音があまりに素晴らしく、いち早く本欄でその感動をお伝えしたいと思い、リポートすることにした。
今シーズン、デノンはこのセパレート型を2モデルと数えると、全部で7機種という、ちょっと考えられない数のAVアンプを登場させてきた。そのうち、「AVC-2808」「AVC-3808」「AVC-A1HD」そして本セパレート・システムの4モデルがドルビーTrue HDやDTS HD MA(マスターオーディオ)といったエンコード/デコード時に情報欠落の生じない、ロスレス圧縮のHDオーディオ・デコーダーを搭載したモデルである。
このデノンの大攻勢は凄まじく、同業他社のエンジニアもみな信じられないとつぶやく。映像と音声の集中制御室であるAVアンプの設計・開発は、音質をケアしながら多種多様な信号処理を進めなければならず、想像を絶する時間と労力を要する。また、簡単に7モデルといっても、北米、欧州、日本で放送方式やサラウンド・フォーマットも異なるわけで、実質7×3の21モデルを開発するに等しいシンドサがあるわけだ。開発現場ではたいへんな修羅場があったのではないかと想像する。
ぼくは幸いなことに、この冬4機種すべてのデノン製HDオーディオ対応AVアンプを聴くチャンスを得たが、中低域のしっかりしたピラミッド・バランスのデノン・トーンで統一させながら、価格が上がるにつれ、音の凄味、スケール感が増してくる印象を受けた。見事なトーン・コントロールであり、クォリティ管理であるなあと感心した。この20年、マジメにAVアンプの高音質化に取り組んできたデノンならではの芸当である。
とくに最後に聴いたこのセパレート型の本格的な音には、度肝を抜かれる思いがした。まず、コントロールアンプとパワーアンプをバランス接続して聴いたステレオCDの音のよさに瞠目した。優美かつ雄大で、繊細可憐ながら力感あふれるサウンド。二律背反する評価語が高次元で両立する音、と言ってお分かりいただけるだろうか。
ヤマハDSP-Z11もパイオニアSC-LX90も、AVアンプを20年以上ウォッチしてきた筆者をおおいに感動させてくれたが、デノンのこのセパレート・システムは、もう1つ次元が高い音という気がする。世の中の数ある2チャンネル専用のハイエンド・セパレートアンプと伍して戦える製品だと思うのである。
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