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家庭における3D映像の可能性を考える(4)〜3D映像の将来本田雅一のTV Style

» 2008年03月21日 20時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 先日、あるメーカーの方から「本当にすぐに3Dソフトとか、来ますか? そろそろ検討した方がいいでしょうか?」と質問された。おそらく、この連載を見ていただいているのだろう。

 しかし、3D映像が今後のトレンドになるのか? といえば、筆者も主流になるとは全く思っていない。映画製作において3Dが増えてくるのであれば、それを家庭でもなんとか楽しめないだろうか? というのが、3D映像への興味の出発点だ。今後も2Dが主流であることは間違いないだろうし、2D映像を見るための機能性や画質を犠牲にしてまで3Dを重視するのが正しい方向とは思わない。

 3D映像の可能性を探るというのは、あくまでも“映画向けに提供されるコンテンツがあるのだから、それをなんとか楽しむ方法はないか?”という、プラスαのエンターテイメントを求めてのこと。もっとも重要視すべきは、やはり一般的な2D映像の画質と機能だ。

 とはいえ、そうしたことを踏まえた上でも、3D映像には将来に向けての発展性があるとも感じている。コンテンツあるところには、それを活用しようと新しい技術が集まるものだからだ。

メガネなしでも楽しめる3Dテレビとは?

 さて先週、メガネなしでも楽しめる3Dテレビがあるという話をした。では、これはどういった仕組みになっているのだろうか?

photo メガネなしでも楽しめるReal Dの3Dテレビシステム

 実は仕組みは比較的簡単で、右目のある方向と左目のある方向に、レンズを通してそれぞれ異なる映像を見せているだけだ。このため、画素数が半分に落ちる上、3Dに見える位置は限られる。人間の目を追いかけて映像を構成する光を放出できればいいが、頭の動きに応じて自動的に追尾するわけではないため、自分で「ちょうどいい場所」に頭を動かさなければならない。

 さらに「ちょうどいい場所(スイートスポット)」が1つだけでは、やはり不便ということで、デモをしてくれたReal Dのシステムでは、3×3ピクセルを1画素に見立てて、それぞれ異なる方向に光を向けるよう、画素ごとに異なるマイクロレンズを使っていた。

 これでディスプレイの周りには9カ所のスイートスポットを作ることができるため、どの位置から見てもほんの少し頭を左右にズラせば、3D感を味わうことができる。ただし、9画素を1画素として表現するので、映像の解像度は大きく下がってしまうのは致し方ないところだろう。

 実際にデモ機の映像を見ると、解像度が下がった分、立体感が臨場感をカバーしてくれ、3Dメガネをかける負担から解放されるため、実際に見た印象は悪くない。しかし、ビデオパッケージソフトや放送を見るための仕掛けとしては、プラスとマイナスでマイナスの方が大きい。またパネル前面にマイクロレンズを成形する必要があるため、ディスプレイが3D専用になってしまうという欠点もある。

 しかしReal Dはこの技術を、店頭での商品デモや街頭のビデオ広告などに使えると考えているようだ。筆者が見せてもらったデモも、コカコーラからの依頼で試作品を製作したものだという。近い将来、液晶パネルが4K2K解像度になってくれば、現在のDVD並みの画質にできるため、数年後の広告用ディスプレイとして研究開発を進めている。

photo Real D社内のシアタールーム。もちろん円偏向を用いた3D方式だ

 今後は、おそらく家庭向けにはアクティブシャッター付きメガネを用いた方式がアドオン機能として、広告用など商用市場ではメガネなしのマイクロレンズを用いた方式が主流になるだろう。劇場向けはReal Dの円偏向を用いた方式が今後も主流で、色の帯域を分割して左右に振り分けるドルビー方式がそこにどう食い込んでくるかという展開になるだろう。縦偏向と横偏向を組み合わせ、走査線を左右に振り分ける方式は、通常の2D画質に影響するため、一般家庭への普及は難しいと推測する。

 もちろん、どちらにしてもコンテンツが増えなければ、ハードウェア環境を整えても意味がない。3D熱が徐々に高まるハリウッド映画会社は、以前にも述べたように3D映画の本数を徐々に増やしてきている。3Dテレビへの道のりは険しいと言わざるを得ないが、まずは次々と登場する予定の3D映画を劇場で楽しみながら、将来の可能性をあれこれ想像してみる今の時期が、一番愉しいのかもしれない。

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