いわゆる「リニアPCMレコーダー」の特徴は、外部の音をリニアすなわち非圧縮の音データ――PCではWAVファイルとして扱うことが一般的――として記録することにある。
リニアPCMレコーダー以外の一般的なICレコーダーでも、高性能な外付けマイクを用意すれば、それなりに聞き応えのある音質で音を残すことができるが、音のディテールにこだわるユーザーを満足させることは難しい。
その理由のひとつには、ビデオカメラやポータブルオーディオなどに搭載されている録音機能が多くの場合、「非可逆圧縮」かつ「サンプリング周波数44.1kHz以下」であることが挙げられる。可逆圧縮かつ高いサンプリング周波数に対応しているリニアPCMレコーダーのほうが、なにより音質を優先したいユーザーには好ましいのだ。
可逆圧縮は圧縮時と圧縮・展開時のデータが同一であるため(データの欠落がない)、マイクが拾った「素」の音をデジタルで記録できるのがメリットだ。データ量は多くなるため、MP3など非可逆圧縮を使う録音機器と比較した場合、連続記録時間は短くなるが、そのぶんピュアな音を残すことができる。
サンプリング周波数と量子化ビット数も重要なポイントだ。サンプリング周波数とは、本来アナログ情報である音をデジタルデータ化する処理において、単位時間あたりの標本をとる頻度のこと。簡単にいえば、この数値が高ければ高いほど原音に忠実となり、その代わり標本数が増えるのでデータ量が増す。
量子化ビット数はアナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)するときの、信号を何段階の数値で記録するかという値で、高いほうがよいとされる。つまり、マイクの性能が同じであれば、44.1kHz/16bitよりも96kHz/24bitのほうが原音に忠実、ということになる。
以上がリニアPCMレコーダーの特徴だが、「リニアPCMレコーダー」として販売されている製品では、内蔵マイクにも一工夫されていることも多い。たとえばソニー「PCM-D50」では、左右のマイクを内/外方向にポジション調整することで、ステレオ感を変えることができる。野外での風切音を和らげるウインドスクリーンなど、マイク用のオプションもある。このあたりが、「生録」にこだわるユーザーから支持される理由なのだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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