日本ビクターは5月15日、オーディオ用のブックシェルフ型スピーカー「SX-M3」を発表した。2月末の「A&Vフェスタ」で開発表明とデモンストレーションを行ったもので、マグネシウム振動板を採用したオブリ・コーンスピーカーが特長。高剛性かつ適度な内部損失を持つマグネシウムにより、ひずみ感のない自然な音を実現したという。6月上旬に発売する予定で、価格は1本9万9750円。
同社はコンポーネントスピーカーシステムとして「SX-L」シリーズを展開しているが、今回は「SX-M」という新シリーズの第1弾と位置づけられる。“L”はLifeあるいはLikeを表し、どちらかといえばAV志向だったSX-Lシリーズに対して、SX-Mシリーズは“Music”志向だ。「コンテンツに記録された音楽の魅力を引き出す」ことを開発コンセプトに定評のあるオブリ・コーンスピーカーを新素材でブラッシュアップ。内部構造も一新した。
外観は、既存の同社製Hi-Fiスピーカーと大きく異なる。SX-Lシリーズはリビングルームにも合う明るいブラウンでつややかに仕上げていたが、SX-M3は黒を基調としたシックな趣。バッフル面はあえてつやを落とした黒で、突板仕様の側面は木目がしっかりと分かるように少し明るいカラーになっている。
背面が傾斜したスタイルも独特だ。下に向かうほど広くなるキャビネットはリア・テーパード形状と呼ばれ、低音再生に適した容積を確保するとともに、定在波を抑える効果が期待できる「技術的な裏付けを持ったフォルム」(日本ビクターAVシステムカテゴリー技術部音響グループの北岩公彦氏)。
また、キャビネット内には新開発のメカニカル・ベース・マウントを組み込み、ウーファーの磁気回路を固定。バッフルから底板、裏板をつなぐ内部構造体を形成し、余分な振動を抑えながらユニットの駆動点を安定させた。鋳鉄製のベースと3点支持フットも制震と低重心化に一役買っている。
側板は、MDFをチェリー突板でサンドイッチした構造とし、さらにチェリー無垢(むく)材を使用した棒状の補強材(Sound Bar)を上から下へ通した。前述のベースマウントが振動を抑える一方、側板は振動を逃がす構造になっているという。「なるべく振動させない部分と振動を逃がす部分を分けて考えた。キャビネット内部の定在波と振動を的確にコントロールする」と北岩氏は説明する。
SX-M3のような小型スピーカーは、低音の量感という点で明らかに不利だ。しかしキャビネット周りの工夫に加え、駆動点が明確になったことで、音像がしっかりと分かるようになったという。「量としては少ないが、“低音の楽器”として輪郭が見える」(北岩氏)。
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