ビクターお得意のオブリ・コーンスピーカーは、軸非対称の形状をしている。中央部から周辺部までの距離が異なるため共振周波数の影響が分散され、付帯音が少ない自然な音が特長だ。しかし従来のアルミニウム振動板は、軽量で加工しやすい反面、内部損失が少ないというデメリットがあった。
「アルミニウム振動板は内部ロスが小さく、音が収まる前に次の音が出てくる。つまり一音一音の分離が不十分で、塊のように聞こえてしまう」(北岩氏)。このためクセのある音をオブリ・コーンで改善しながら、より良い素材を探していたという。
同社が着目したのはマグネシウムだった。アルミニウムと同様に軽量で剛性が高く、しかも内部損失はアルミの2倍以上と素材としては申し分ない。これまでは加工の難しさから採用することができなかったが、SX-M3では1つの振動板を5つの工程に分けて加工(加重)するという手間のかかる方法で実用化にこぎ着けた。しかも厚さはアルミニウムの1.5倍として、剛性を従来比3倍に高めている。
「とくにツィーターのDDOD(Direct Drive Obli-dome)構造は、メカニカルロスを排除するためにドームとV.Cボビンを一体成形する必要がある。高い精度が求められる加工だが、ようやく量産できるレベルになった」(北岩氏)。
オブリ・コーンとマグネシウムの組み合わせは相性が良い。高域ピークを減少して付帯音を抑えるオブリ・コーンに、減衰特性の良さから付帯音のないマグネシウム振動板。金属ならではの反応の速さが、ひずみ感の少ないオブリ・コーンによって“素直な音”を出すという。「よりひずみ感の少ない自然な音。オブリ・コーンとマグネシウム振動板が相乗効果をもたらす」。
このほかにも、磁気ギャップの対称化やエッジ、ダンパー形状の見直し、さらに磁気回路の電流ひずみを低減するなど、オーソドックスな手法で低ひずみ設計を一歩進めた。従来製品と比べると、400Hz以上の帯域で最大20dB、200〜2kHzの帯域では約10dBの改善が見られるという。なお、その一環として防磁設計ではなくなった点には留意したい。
SX-M3の主な仕様は下表の通り。
製品名 | SX-M3 |
---|---|
方式 | 2Way バスレフ型 |
ツィーター | 1.9センチ オブリ・ドーム型 |
ウーファー | 14.5センチ オブリ・コーン型 |
最大入力 | 120ワット |
定格入力 | 30ワット |
インピーダンス | 6オーム |
クロスオーバー周波数 | 3.5kHz |
再生周波数 | 50Hz〜65kHz |
出力音圧レベル | 88dB/W・m |
外形寸法/重量 | 217(幅)×358(高さ)×276.5(奥行き)ミリ/11.5キログラム |
価格 | 9万9750円(1本) |
発売時期 | 6月上旬 |
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