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中国発の詐欺広告に甘いMeta、数千億円規模の収入優先か ザッカーバーグCEO関与の疑いも(1/4 ページ)

» 2025年12月16日 17時20分 公開
[ロイター]

 米Metaは2024年、中国の広告主に関する不愉快な結論を認めざるを得なくなった。これらの広告主は全世界で、Metaが運営するFacebook、Instagram、WhatsAppの利用者をだましていたのだ。

 中国政府は国民がMetaのソーシャルメディアを利用するのを禁じているが、中国企業が外国の消費者向け広告に使うのは容認している。結果としてMetaの中国における広告事業は拡大し、24年の年間収入は180億ドル(2兆8000億円)強と、全世界収入の10分の1余りを占めた。

 ところが、その約19%に当たる30億ドル強(約4643億円)が、詐欺や違法ギャンブル、ポルノやその他禁止商品に誘導する広告に由来するとMetaが計算していたことが、ロイターが確認した同社の内部文書で分かった。

 内部文書は過去4年間、Metaの財務、ロビー活動、エンジニアリング、安全対策などの部門が作成し、これまで公表されていない資料の一部。この資料からは、Metaがその期間、自社プラットフォーム上での不正行為の規模把握に取り組んでいたものの、事業や収益にマイナスとなる恐れもある是正措置の導入には消極的だった実態が見えてくる。

中国発の詐欺広告に甘いMeta

 文書によると、Metaは自社プラットフォーム上で世界的に掲載される詐欺や禁止商品の広告のおよそ4分の1が中国を発信源にしていると考えていた。

 そのためMetaは中国からの詐欺やその他禁止行為に関する従来の取り組み以外に、特別な詐欺防止チームを設立。さまざまな取り締まりの強化ツールを駆使し、24年後半には問題のある広告を約半分に減らすことができた。中国からの広告収入に占める禁止広告の割合は19%から9%に下がった。

 ここで事態に介入してきたのがマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)だ。

 24年終盤に作成された文書には「インテグリティー戦略の転換とザック(ザッカーバーグ氏)によるフォローアップの結果」として中国広告対策チームが業務を一時停止するよう求められたと記されている。

 ロイターは、そうした戦略の転換が何を意味するか、またザッカーバーグ氏の関与の詳細を突き止めることはできなかった。

 ただザッカーバーグ氏の関与後、Metaは中国に特化した詐欺防止チームを解散し、中国の新規の広告代理店に対するプラットフォームへのアクセス凍結措置も解除した。

 ある文書では、Metaが内部試験で効果的と証明された他の詐欺防止策も棚上げしたことも示されていた。

 さらにMetaが採用した外部コンサルタントの調査で「Meta自身の行動と方針」が、他国の利用者をターゲットにした中国広告市場の体系的な腐敗を助長しているという警告が発せられたとする文書もある。

 結局、Metaの取り締まりは数カ月行われただけで、その後中国では新手の広告代理店が禁止された広告をFacebookやInstagramへ大量に出稿し、25年半ばまでにMetaが中国で得る収入の約16%が禁止広告に関連する構図に戻ってしまった。

 20年までFacebookのプロダクトマネジメント部門で幹部を務めたロブ・レザーン氏は、これらの内部文書が明かにする詐欺広告の実態は、ソーシャルメディア最大手の消費者保護が崩壊していることを示していると話す。

 「その(不正広告の)水準は弁解のしようがない。これで問題なしといえる人などいるのだろうか」と、現在は同社を去ったレザーン氏は話した。

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