麻倉氏: プラズマは画質面で優れた点を多く持ちますが、欠点がないというわけでもありません。その弱点を改善する動きも顕著になっています。
その例の1つがパナソニックのプラズマVIERAの前面パネル処理です。昨年リリースされたPZ600/700シリーズはパネル性能は向上していたものの、前面のノングレアパネルのギラツキがスポイルしていました。
最新のPZ800シリーズではノングレア処理を「無反射コーティング」に切り替え、本来のパネルの優秀さがよみがえりました。液晶テレビ対策として映り込みの少ないノングレアにしたという経緯もあるのですが、一方、最近は液晶テレビがグレア処理に興味を示しています。プラズマとは逆ですね。
映像という観点からみれば、グレアのほうがグロッシーで質感もありますが、映り込みは発生してしまいます。パナソニックの無反射コーティングのように、今後はグレアを残したまま反射を抑制するというアプローチをとる製品が増えるでしょう。
もう1つの例としてあげられるのが、日立のプラズマWoooのプログレッシブ化です。これまではALISパネルで数々のヒット製品を生み出してきましたが、KUROの登場以降、プラズマには画面サイズや価格だけではなく、コントラストを含めた絵作りが強く求められるようになってきました。ALISのインターレースパネルではそうした要求に応えることが難しくなってきたのです。
ALISでもコントラスト比1万;1は実現されていますが、残念ながら黒浮きの目立つものでした。今プラズマに求められているのはきちんとした黒の沈みなのです。新型プラズマWoooはプログレッシブ方式を採用したほか、隔壁構造をクローズド型にした「ボックス・リブ」構造で改善を進めています。まだ白の伸びはいまひとつで、おっとりとした映像ですが、でも黒の沈みは確実に出てきました。
方針の転換から、それを自社のものにするには少し時間がかかります。それは日立に限った話ではなく、パナソニックもパイオニアもしかり。今後に大いに期待したいところです。
麻倉氏: 過去の連載でも言及してきましたが、液晶は長く「表示」の表現レベルにとどまってきました。SDまではリソースの情報量自体が少なくく、欲しいイメージに対してディスプレイ側が人為的に映像を作り込んできましたが、ハイビジョン時代になって状況は変わりました。
リソースの情報量が飛躍的に増え、ディスプレイにも表現力が求められる時代がやってきたのです。そこではディレクターズ・インテンションをどこまで表現できるかが大切になってきています。液晶テレビもその「表現」のレベルにようやくなりつつあることが感じられます。
シャープの最新AQUOSはオーセンティックな印象を漂わせています。これまでは4波長バックライトなど、ややトリッキーな手法が目立っていましたが、最近は映像も自然な感じに変わってきました。パネル自体から得られるコントラストのリソースが豊富となり、階調の再現性がリニアであるという液晶自体のメリットを生かす方向性が明確になってきたからです。
その意味では入力された信号へ忠実に、バランスの良い映像を作り出すという方法論に挑戦しているようにも感じます。次はコンテンツのディレクターズ・インテンションを追求し、表現型の絵作りを進めていくことが次の大きな課題になるでしょう。それにはもっとコントラストが欲しいですが。
日本ビクター「905」シリーズも素晴らしいですね。開発陣が時には映画監督に話を聞きに行くといった努力のかいもあり、同社製品は1年ほど前から非常に表現力が高まっています。
ここまで熱意を持って表現を追求しているのは同社ぐらいでしょう。新製品の「905」シリーズでは表現的解像力という部分にも踏み込み、場面に応じた表現を得られるように努力しています。液晶テレビ市場からの部分撤退というニュースもありましたが、大型製品の国内展開は継続するということで一応は安心しました。世界的にみてもテレビの絵作りをリードするのは日本メーカーですし、同社の得意な製品が残るのはうれしいことですね。
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