麻倉氏: 薄型テレビではありませんが、注目すべき製品があるのでご紹介しましょう。PTPの全録(ぜんろく)レコーダー「SPIDER Zero」です。放送を片っ端から録画していく「全録」という言葉は、実は4年ほど前に私が言い出したのですが(笑)。
同様の機能を持つ製品として、既にソニーの「VAIO type X」が存在しますが、レコーダーとしてカタチになったのは本製品が初めてのはずです。アナログ放送の7チャンネルを1週間24時間録画し続けるので、予約ミスが存在しません。しかも、ネットから録画した番組に関する情報を取得してタグとして埋め込んでいくので、キーワードを指定すると関連する映像を片っ端から検出してきます。これは全録しているからこそできるワザで、「1週間Googleエアチェック」ともいえる体験ができます。
業務用として既に数百台が広告代理店などで利用されており、市販化を望む声が高まったことから製品化されました。搭載しているのがアナログチューナーのみなので「Zero」なのですが、将来はデジタル放送に対応させ、「One」へと進化する計画といいます。
EPGの普及でエアチェックは手軽になりましたが、それでも「自分の録りたいもの」「興味のあるもの」しかカバーできません。全録レコーダーならば、自分の興味や能力、好みの限界を超える体験を提供してくれます。これは明らかにエアチェックの革命です。見たいものを見るではなく、関連する情報、情報の外苑部までをも見せてくれます。そうすれば、放送メディアへの興味も自然と増してきます。全録からまったく新しい録画体験が始まるといえるでしょう。
「画質の鬼」の異名を取るオーディオ・ビジュアル評論家・麻倉怜士氏が、誰よりもわかりやすくハイビジョンの魅力を伝える。これから薄型テレビを購入しようとしている人にはもちろん、本来の画質を楽しむためテクニックも紹介。既にハイビジョンテレビを購入している人も必見の一冊となっている。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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