パイオニアのプラズマテレビ「KURO」シリーズの評価が高い。1月の「International CES」で“計り知れない黒”と紹介されたコントラスト比2万:1の新世代パネルを搭載するが、コントラスト比という数値的な側面が優れているだけではなく、人間の感情へ直接訴える高い画質を備えており、その美しさは見るものを圧倒する。
日本画質学会の副会長かつデジタルメディア評論家として日々、最新AV機器のチェックを欠かさない麻倉怜士氏もKUROに注目するひとり。麻倉氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回は麻倉氏に世代違いともいえるクオリティを持つKUROが示す、ディスプレイのトレンドについて語ってもらった。
――8月に発表された「KURO」シリーズですが、いよいよ出荷も開始されました。これまで同社が行った体験イベントなどの様子を聞くところ、参加した方にも大きなインパクトを与えているようですね。
麻倉氏: テレビという文化、システムが始まって半世紀が過ぎていますが、KUROの登場は第3の革命と呼べるほどの出来事です。第1は映像を伝播するテレビという存在の出現、第2はより高い臨場感をもたらすカラー化ですが、KUROによってもたらされた表現力の飛躍的な向上は第3の革命といえるでしょう。
KUROの登場はハイビジョンコンテンツの進化と密接な関係にあります。薄型テレビが普及して以来、ハイビジョンとの親和性が語られることが増えていますが、ここに来てさらにハイビジョンコンテンツがリッチ化・高度化しています。そうした背景を受けての登場と考えれば分かりやすいでしょう。
パイオニアは発売前に全国30カ所で体験イベントを行いましたが、これはマーケティング的にみても画期的なことです。KUROという製品はその特性上、店頭の明るい環境で見せてもその進化を理解してもらうのが難しいので、適切な環境を用意してやり、その存在感と画質力を感じさせる手法を取ったのです。これはKUROにふさわしいアピールの仕方といえるでしょう。
私は東京と大阪のイベントで講師をしました。そこではまず、「2001年宇宙の旅」を来場した方へお見せしました。実は「2001年〜」を2つ用意したのです。いずれもNHK BShiで放送されたバージョンですが、1つは2002年に放送されたもの、1つは今年に放送されたものです。4年以上の間が空いているのですが、その間にハイビジョンのコンテンツも大きく変化したことを感じました。
旧バージョンはDVDより高い精細感を持つものの、若干淡い感じで黒沈みが抑えられているのに対し、新バージョンは黒の沈みが非常に深く、フォーカス感がもの凄く出ているのです。「こんなところにこんなものが」と気づかされるほどの情報量があります。猿同士の喧嘩から一匹が骨を投げると宇宙船になるという有名なシーンでは、骨のディテールが非常に鮮明なほか、宇宙船の立体感も素晴らしく、劇場で見たときの感動が鮮やかに甦ってくるほどです。
新旧2つの間に存在する進化――同様の進化はディスプレイにも起こっています。同じプラズマテレビでも4年前は黒も沈んでおらず、解像感もそこそこと言わざるを得ませんでしたが、KUROは沈み感、精細感、質感、再現性のいずれも非常に高くなっています。
KUROで見る新バージョンの「2001年〜」はほんとうに素晴らしいです。逆に言えば表現力に乏しいディスプレイではここまでのコンテンツの持つ力を引き出すことがなかなかできず、感じられる違いも小さいものになっていたはずです。KUROの出現によって、コンテンツの力をいかす、コンテンツとディスプレイの“幸せな関係”を築くことができたといえるでしょう。
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