「この合意はダビング10の議論を前進させるものではない」――文部科学省と経済産業省が、私的録音録画補償金をBlu-ray Disc(BD)とBD録画機に課すことで合意したことを受け、権利者側の89団体が6月17日、声明を発表した。「合意内容がどれだけの意味を持つものかについて現時点では判断できない」としている。
発表したのは、日本音楽著作権協会(JASRAC)など著作権関連28団体で構成する「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」と、賛同する日本芸能実演家団体協議会加盟61団体。
声明で権利者側は「省庁間の垣根を越えてこのような努力が行われたことに心より謝意を表したい」としながらも、「そもそもBDは、もっと早い段階で課金対象に指定されるべきだった。この合意がダビング10の議論を前進させるものではないと考えている」とする。
さらに「権利者は合意のプロセスを承知していなかった」といい、合意内容についても(1)BDはアナログ放送の録画も可能であり、今回の課金がデジタル放送の録画に着目したものか明確ではない、(2)文化庁が提案している将来の補償金制度の枠組みについて、今後の取り扱いが明確ではない――という2点から「どれだけの意味を持つものかについて現時点では判断できない」としている。
BD課金が権利者への適正な対価の還元に当たるかどうかも「はなはだ疑問」とし、「今回の両大臣のコメントには戸惑いと失望を感じざるを得ない。この合意をもって、ダビング10実施期日の確定ができるとは考えていない」としている。
権利者団体は、この件に関する記者会見を6月24日に開く予定だ。
権利者側はこれまで「ダビング10には、権利者への適正な対価の還元を前提として合意した。対価を得る手段は現状、補償金しかないため、HDDレコーダーやBDを補償金の対象にしない限り受け入れられない」と主張。対するメーカー側は「ダビング10のようなDRMがかかった機器には補償金は不要」と主張して対立し、6月2日に予定されていたダビング10スタートは延期されていた。
BDへの課金は、それぞれの主張の折衷案となるもので、渡海紀三朗文科相と甘利明経産相が17日の記者会見で明らかにした。背景には、BD課金と引き替えに権利者にダビング10開始を受け入れてもらい、北京五輪に間に合わせたい――という両省の思惑がある(ダビング10先送りで「五輪商戦」に水? メーカー板挟み)。
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