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すべての放送を光ファイバー1本で――「スカパー!光」の新サービス帯域幅拡大

» 2008年06月23日 17時13分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、東日本電信電話(NTT東日本)、オプティキャストの3社は6月23日、「スカパー!光」の伝送帯域を拡張して多チャンネルサービスを拡充すると発表した。7月1日から順次提供を開始する予定で、新たに「スカパー!光 ホームタイプ ワイド」および「フレッツ・テレビ」を提供する。

 スカパー!光は、NTT地域会社の「Bフレッツ」回線を利用して波長多重により放送波を伝送するサービス。IP通信の帯域幅を圧迫せず、また放送波に手を加えることなく再送信できるのがメリットで、現在はスカパー!(124/128相当)や地上デジタル/BSデジタル放送の再送信を行っている。

photophoto オプティキャストの斎藤達郎社長(左)と広帯域化の概要図(右)

 しかし、現在の周波数帯(70MHz〜770MHzまで)では多チャンネル放送を伝送するには不十分。事実、現状ではBSデジタル放送の9/10/11/12チャンネルが提供できていないほか、ほかのBSデジタルチャンネルを受信するために別途アップコンバーターが必要になる。「今までは70M〜770MHzに入れるため、BSデジタル放送を一度ダウンコンバートして伝送し、視聴者宅で再度アップコンバートしていた」(オプティキャストの斎藤達郎社長)。

 今回の発表は、まずNTT側が波長多重に利用する周波数帯を2072MHzまで拡張できるよう、電話局のヘッドエンド設備を増設するというもの。これにより、BSデジタル放送の12chすべてがアップコンバーターなしで配信可能になるほか、e2 byスカパー!や、夏以降に提供される予定の124/128スカパー!HD放送、2011年のアナログ停波以降に開始される新しいBSデジタル放送までカバーできるようになる。

photophotophoto システムイメージ図(左)、再送信のみのメニューも追加(中)、月額料金(右)

 「つまり、日本の放送がすべて光ファイバー1本で見られる環境になるということ」(斎藤氏)。

photophotophoto 新サービスのメリット。すべての放送が光ファイバー1本で視聴可(左)。宅内機器がシンプルになる(中)。提供スケジュール(右)

 ユーザー宅では、これまで「GE-ONU」(GE-PONの終端装置)と「V-ONU」(映像用の終端装置)+BSデジタル放送のアップコンバーターが必要だったが、新メニュー「スカパー!光ホームタイプ ワイド」に切り替えると「一体型ONU」に統合できる。前述のようにBSデジタル放送もパススルーに変更されるため、テレビやレコーダーの内蔵チューナーでそのまま受信可能だ。これは11月に追加提供される予定の「e2 by スカパー!」も同様になる。

 今秋から提供する計画のハイビジョン版スカパー!に関しては、2009年度中にスカパー!光でも視聴可能になる。ただし、こちらは映像コーデックにMPEG-4/AVC(H.264)を採用することもあって専用チューナーなどが別途必要だ。

 料金設定がリーズナブルになっている点も新サービスの特徴。スカパー!光ホームタイプ ワイドには、従来と同じ「光パック」(68ch)、「光パックセレクション」(50ch)、「アラカルト」のほかに、地上デジタル/BSデジタル放送の再送信だけを受信できる「ライトコース」を設定する。ライトコースは月額650円。アラカルトでも2000円以下から導入できる(フレッツ光の料金は別途必要)。

 「今までは地上デジタル放送を見るためにスカパー!も利用することになっていたが、今回からユーザーは無理することなく、個々のニーズにあったメニューを選択できる」(斎藤氏)

 なお、7月1日の新サービス提供開始とともに現行サービスの販売は終了するが、現在BSデジタル放送を伝送している帯域でもサイマル配信を行うため、移行しないユーザーが手持ちの機器で視聴をつづけることもできる。

 新サービスが利用できるBフレッツは、「フレッツ 光ネクスト ファミリータイプ」「Bフレッツ ハイバーファミリータイプ」「フレッツ 光ネクスト マンションタイプ光配線方式」「Bフレッツ マンションタイプ 光配線方式」の4タイプ。NTT東日本では、VDSLマンションタイプの光配線方式への移行も積極的に進める。

 サービスエリアは、NTT東日本の収容局改修スケジュールに依存する。今回の発表で明らかにされたのは、7月1日時点で東京23区および神奈川県(横浜市ほか)、埼玉県の一部(新座市、川口市ほか)、8月1日に東京都下(八王子ほか)、千葉県の一部(千葉市ほか)、9月1日に福島県の一部(郡山ほか)。またNTT西日本エリアでも「年内に同様のサービスを開始する」という。

photophoto スカイパーフェクト・コミュニケーションズの仁藤雅夫社長(左)とNTT東日本の古賀哲夫副社長(右)

 スカイパーフェクト・コミュニケーションズの仁藤雅夫社長は、「多チャンネル放送の裾野を拡大する役割は、現在(デジタルテレビにチューナーが内蔵されている)e2 by スカパー!が担っているが、アンテナの設置がハードルになっていた。光ファイバーがアンテナ代わりになることは非常に重要」と帯域幅拡大の意義をアピールした。

 また、発表会に同席したNTT東日本の古賀哲夫副社長は、「光ファイバーのメリットは、映像で最大限に発揮されると考えている。今までテレビといえばアンテナかCATVだったが、“光をつなぐ”を訴求していきたい」としている。

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