テレビやビデオのリモコンといえば、もう30年も前から赤外線が主流だ。それまでは一部の高級機に有線リモコンが付属していただけで、リモコンなど付いていないのが当たり前。テレビやビデオの前まで行って操作する手間をなくしたワイヤレスリモコンは、地味ながらもお茶の間になくてはならない存在になっている。
そのリモコンが大きく変わろうとしている。先月から今月にかけ、赤外線リモコンのリプレースを狙う無線方式(RF)リモコンに関する発表が続いた。1つは、ソニーなど4社の家電メーカーが中心になって設立した「RF4CE」(Radio Frequency for Consumer Electronics)、もう1つはPCや携帯電話でお馴染みのBluetoothから派生した「低エネルギーBluetooth規格」だ。「ワイヤレスジャパン2008」の関連する団体や企業のブースで話を聞いた。
RF4CEは、ソニー、パナソニック、フィリップス、サムスン電子が中心となって“無線リモコンの標準仕様”を開発するという試みだ。フリースケール・セミコンダクタ、沖電気工業株式会社、テキサス・インスツルメンツの半導体各社と協調し、7社でコンソーシアムを結成。“見通し外操作”や機器とリモコン間の双方向通信などの高度な機能を実現するという。
見通し外操作とは、操作する機器にリモコンを向けなくても操作できるということ。現在の赤外線は指向性が高く、障害物の影響も受けやすいため、リモコンを機器に向けて操作しなければならない。お年寄りがリモコンを立てて(よく見えるように顔に近づけて)操作することが多いことから、最近ではわざわざ赤外線発光部を2個所、3個所と備えるリモコンも存在するくらいだ。
対して無線方式は指向性がなく、障害物にも強いため、機器をAVラックの中に設置していても、あるいはリモコンをどこに向けていても操作できる。ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」が昨年から採用している「おき楽リモコン」が良い例だろう。
双方向通信では、機器側の状態をリモコンが把握できるようになる。送信したはずのコマンドが届かないと分かればすぐに再送信できるため、リモコン操作の確実性が増す。複数の機器に対する複数の操作をワンアクションで実行する「マクロ機能」なども、より便利な展開が期待できるだろう。またリモコンに液晶などの表示装置が付いていれば、視聴中の映像や音楽に関する情報を把握できる。
RF4CEのベースになる技術は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)で既に規格化されているIEEE 802.15.4。これは近距離無線ネットワーク規格「ZigBee」向けに開発された技術で、このうちPHY(物理層)とMAC(メディアアクセス層)だけをリモコンに利用するという。伝送速度は最大250Kbps、伝送距離は80メートル程度。既に実績のある技術を活用するため、信頼性の向上および開発期間の短縮が期待できる。
一方の低エネルギーBluetoothは、その名の通り消費電力を抑えたBluetoothの新規格だ。時計や玩具、スポーツ用品、健康器具、ゲーム機など幅広い用途を想定しているが、家電機器のリモコンも重要なアプリケーションの1つと位置づけている。
基本的なスペックは既存のBluetooth Class2と同等で、伝送速度は最大1Mbps、伝送距離は10メートル程度。伝送速度はRF4CEよりも早く、伝送距離では大きく見劣りするが、リモコンの用途を考えれば、いずれも十分なスペックだ。
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