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オンキヨー「TX-SA706X」で「ノーカントリー」のリアルな音を聴く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.21(1/2 ページ)

» 2008年08月20日 19時21分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 今年2月に発表された第80回アカデミー賞で、作品賞、監督賞をはじめ4冠に輝いたジョエル&イーサン・コーエン兄弟の「ノーカントリー」。この8月にDVDが発売されたこの作品の舞台は、1980年代のメキシコ国境沿いのテキサスである。麻薬絡みの犯罪現場で大金を発見し、持ち逃げした男モスが、ギャングに雇われた殺し屋に執拗(しつよう)に追われる姿をサスペンスフルに描いた作品だ。

photo 「ノーカントリー」(C)2007 by Paramount Vantage, a Division of Paramount Pictures and Miramax Film Corp. All Rights Reserved.

 その殺し屋アントン・シガーを演じたのが、ハビエル・バルデム。ローリング・ストーンズ・デビュー時のチャーリー・ワッツを思い起こさせる不思議なオカッパ頭(!)で、悪霊を思わせる不気味なサイコキラーを演じ、前評判通りアカデミー賞助演男優賞を獲得した。コインを放り投げ、その裏表で殺すかどうかを決めたり、酸素ボンベのようなエアガンで相手の脳天を撃ち抜いたり、どこかユーモラスで生真面目なそのキャラクター造形の見事さに、まずコーエン兄弟の才気がうかがえる。

 そして、この映画をひときわ鮮やかな傑作たらしめていると思うのは、コーエン兄弟ならではのスタイリッシュな映像と寡黙なサウンドデザインである。

 テキサスとメキシコの乾いた空気感と夜の闇の深さを見事に活写した撮影の巧さ、そして音楽を極限まで排し、同時録音と思しきリアルな現実音を積み重ねたミニマルな音響設計の見事さに、ぼくは深く感じ入った。

 本作の国内盤DVDはドルビーデジタル5.1チャンネル仕様だが、ぼくが購入した米国盤BD ROMはドルビーデジタルのほかに、非圧縮の48kHz/24ビット/リニアPCM 5.1チャンネル音声が収録されている。1つ1つの効果音に力感が付与されたこのリニアPCM音声は、かつて聴いたことがないほどのナマナマしさを感じさせる。とくにシガーと追われる男モスが初めて対決する夜のホテルを舞台としたシーンのサスペンスフルな音響設計には、身震いするほどの興奮を覚えた。

 そして、最近試聴したAVアンプの中で、この場面をもっともリアルに再現し、ぼくをはげしく興奮させてくれたのは、オンキヨーの中級モデルの新製品「TX-SA706X」であった。

photo オンキヨー「TX-SA706X」は、「THX Ultra2 Plus」の認証を取った7.1チャンネルAVセンター。18万9000円

 昨年、オンキョーは8万円代のAVアンプで初めてHDオーディオのフルデコードに対応し、価格の枠を感じさせない力感あふれるリッチな音で大人気を呼んだ「TX-SA605」を発売した。同社は、今季も魅力的なAVセンターを矢継ぎ早に登場させているが、ここで取り上げるTX-SA706Xは、定格出力145ワット(6オーム)のパワーアンプを7チャンネルぶん内蔵し、HDMI入力を5系統装備。「THX Ultra2 Plus」の認証を取った注目の新製品である。

 本機の内容を吟味すると、興味深いことに気づく。型番を見ると本機は昨年の「TX-SA705」の後継機のように思えるが、価格はその上級機であった「TX-SA805」と同じ18万9000円。オンキヨー製AVアンプは、伝統的にTHX認定をそのセールスポイントにしてきたが、昨年のTX-SA705は「THX セレクト2」、本機TX-SA706Xはより音質基準の厳しい「THX ウルトラ2(プラス)」の認証を受けている。以上の事柄から考えて、TX-SA706Xは昨年のTX-SA805の後継機と位置付けてよいだろう。

 では、TX-SA805と本機の違いについて見てみよう。HDオーディオのデコードなどを司るメインDSPはどちらもテキサス・インスツルメンツ製の「オーリアス」。しかし、本機はより演算精度の高い最新DSPが用いられ、TX-SA805の3個使いから2個使いに改められている。また、D/Aコンバーターは、TX-SA805のバーブラウン製2チャンネル仕様の5個使いからシーラスロジック製8チャンネルDACの単独使用へと合理化された。ビデオ関連では本機の進化が明らかに認められ、HDMI入力はTX-SA805の3系統から5系統に、TX-SA805ではできなかったアナログ入力のアップスケーリング(1080p HDMI出力)が可能となっている。

 またどちらも「THX ウルトラ2」の認証を得ているが、本機TX-SA706Xは小音量時にレベルを補正するコンプレッション技術を組み込んだ“プラス”仕様に進化しているのも見逃せないところだろう。

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