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» 2008年09月19日 12時49分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:ソニーの「大爆発」 (2/4)

[渡邊宏,ITmedia]

世界初の「部分輝度制御付きLEDバックライト」

麻倉氏: KDL-55/46XR1で採用された「部分輝度制御付きLEDバックライト」ですが、ここで採用された部分輝度制御はこれからの液晶テレビを語る上で絶対的に欠かせない技術といえます。ちなみにLEDバックライトそのものは、2004年に発表された「QUALIA005」という市販製品で既に採用されており、ソニーは市販製品へLEDバックライトを実装した世界初のメーカーでもあります。

 液晶には“液晶3悪”ともよべる難点があります。それは動画追従性、視野角、暗所コントラストですが、一般的に液晶のバックライトへ用いられるCCFL(冷陰極蛍光ランプ)ではどれだけバックライト制御しても画一的なコントロールとなるため、改善にも限界があります。そこで解決手法として注目されているのが、部分輝度制御の行えるLEDバックライトです。昨年のCEATEC JAPANでは各社が技術展示を行っていますので、ソニーが他社に先駆けて製品化した格好ですね。来年にはかなりの数のメーカーがこの技術を製品へ反映させてくるでしょう。

photo KDL-55/46XR1のLEDバックライト。レッド1つとブルー1つに対してグリーン2つの計4つが最小ブロックを構成している

 実はこの部分輝度制御ですが、技術的にはかなり難易度が高いのです。以前から「暗い中で明るいモノがあると段差が出てしまう」「光源が動くとノイズがでる」「全体がパンするような映像に弱い」などの欠点を指摘されているのですが、ソニーの搭載製品を見る限り、完全に解消というまでにはいかないのですがかなり良好と言えます。

 部分輝度制御を行うLEDバックライトはその構造上、暗所が発光しないので、黒はパネルの地の黒になります。ソニーの発表では100万:1相当のコントラスト比といいます。これは全白画面と全黒画面の比較で、同一画面内では3000:1ですが、3000:1という数字が低いと感じるほどのダイナミックレンジを持っています。しかし、このダイナミックレンジをいかしてどのような絵作りをしていくかについては改善の余地があります。まだ「技術の特徴」が前面に出ているところがあり、自然な色、再現感を表現するのが今後の課題でしょう。

 KDL-55/46XR1のLEDバックライト“トリルミナス”は独立した赤/緑/青のLEDを搭載することで、NTSC比プラス22%の色域を実現していますが、広いだけでは逆効果になりかねません。そもそも、ハイビジョン放送であってもその色域はNTSC比70%程度なので、放送受像器としてみた場合、本製品の広色域を生かし切る信号は人工的に作り出さねばなりません。

 パナソニックはすでに「ハリウッド画質」をうたう製品を投入していますが、これはRGBの3角形を直線的に拡大するのではなく、カラリストが人の目から見て好ましい軌跡を生成することでナチュラルに色域を拡大しています。そのため、彩度感が豊かながらバランスの取れた色再現性が実現されているのです。このように、「人の目」からみた心地よさをどのように実現するかが、これから大切になるでしょう。

世界初の液晶テレビ「4倍速駆動」

麻倉氏: 液晶が視聴者へ残像感を与えてしまう原因としては、「液晶自体の反応スピードの遅さ」「1フレームの映像が置き換えられるまで表示され続けるホールド型表示デバイスであること」の2つが挙げられます。ホールド時間を短くすれば残像感は減少するはずという考えから、倍速駆動という手法が考え出され、その効果を証明しました。

 4倍速も考え方は倍速を継承するものですが、課題は中間画像として挟み込まれる3枚に映像をどのように作り出すかです。KDL-40/46W1の最終製品を見る機会に恵まれていないので正確な判断はできませんが、現時点ではまだ違和感を覚えます。ただ、最終製品までにはきちんと作り込んでくるでしょう。

 倍速(120Hz)より4倍速(240Hz)、4倍速より6倍速(360Hz)と考えてしまいますが、同社は学会で「液晶テレビには4倍速駆動が最適」という旨の発表をしています。ただ、数字でアピールできる要素は他社も追従しやすいですから、部分輝度制御付きLEDバックライトのように、ソニーが先導し、他社が追いかけるという流れはここでも起こるでしょう。

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