麻倉氏: KDL-ZX1で実現された世界最薄「9.9ミリ」(最薄部)ですが、これには少々仕掛けがあります。光源そのものは側面部にあり、そこからの光を導光で照射するというシステムが採用されているのです。これには慶応義塾大学で開発された新技術が採用されています。
側面に光源を配するという手法はノートPCでは既に定着しているのですが、これを40型という大画面で実用化したことに技術的な見どころがあります。ですが、背面に光源がないと部分輝度制御は困難です。次は「背面に光源を配置しながら、どれだけ薄くできるか」がポイントになるでしょう。
単純な薄さだけで言えば、年頭に行われたInternational CESでパイオニアが最薄部9ミリのプラズマを展示していますし、今後も薄さ競争は続くでしょう。そうなるとチューナーをディスプレイ部に内蔵することは難しくなり、設置スタイルとしては昔のセパレート型に戻ることとなりますが、違いはディスプレイとチューナーの間がワイヤレス化されることです。ワイヤレス化を実現した製品は既に登場していますが、アンテナの小型化も進んでいます。これはテレビ本体は壁掛け、コントロール系は手元といったスタイルを定着させるため、有効な手法になるでしょう。
ソニーは今秋、ブランドイメージを高めるための手法として、技術開発を強力にアピールしてきました。部分輝度制御という新たな技術を備えたLEDバックライトがどれだけの威力を持ち、「表示」からどれだけ「表現」の領域に踏み込めるか、作品性を表現できるが非常に楽しみです。ただ、基本的に液晶は液晶であり、有機ELやプラズマとは異なりバックライトが必要なことにはかわりがなく、その弱点をどのようにフォローしていくのかも注目したいところですね。
麻倉氏: Blu-ray Disc製品における同社とパナソニックの競争は新次元に突入しようとしています。ソニーからすれば「BDは自分たちが作った」という意識がありますが、パナソニックは「育てたのは自分たちだ」と強烈に思っています。
パナソニックはMPEG-4 AVC/H.264のHigh Profileを作り出し、そのノウハウを映画作品の圧縮に投入し、映画のBDソフトの再生においては特別な色信号再現技術も開発するなどの施策をとってきました。そうした手厚いフォローが同社のイメージを高め、マニア層のマインドシェアとしては同社が優位に立つという状況を作り出したのです。
ソニーは2003年の「BDZ−S77」でBDの世界を切り開き、その後も製品を投入してきましたが、画質に対して何らかの素晴らしい貢献をしたかというと、寡聞にしてわたしは聞いたことがありません。デジタルノイズリダクションについては継続した取り組みを続けてきましたが、パナソニックが画質訴求の取り組みを進めている中で、「もったいない」に代表されるマーケティング面での活動しかしてこなかった印象があります。話を聞くと、ソニーの画質担当者はそれが非常に悔しかったそうです。
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