「CEATEC JAPAN 2008」2日めの10月1日、ヤフーの井上雅博社長がキーノートスピーチを行い、テレビ向け「Yahoo! 動画」を披露した。サービスの開始時期などは明らかにしていないが、壇上に各メーカーの試作機を並べてデモンストレーションを行った。
ここ数年、同社が進めている“どこでもヤフー”こと「Yahoo! Everywhere構想」。インターネットの普及が進みユーザー数の頭打ちが懸念されるなか、携帯電話やカーナビなど、さまざまな端末にYahoo!へのアクセス機能を持たせることで利用時間を拡大する戦略だ。ユーザーは共通のYahoo! JAPAN IDを使ってさまざまなWebサービスを利用できる。
同社はこれまでに「Yahoo!ケータイ」をはじめ、任天堂「Wii」のインターネットチャンネル、日産「カーウィングス」のナビポータルなど、いくつもの機器にYahoo!のサービスを提供してきた。今月中には、本田技研工業の「インターナビ」でYahoo!ドライブのスポットデータを参照できるサービスが開始されるほか、「今後の計画」として、車でドライブしたルート(走行軌跡)を利用したアルバム機能などの追加も予定しているという。
一方、リビングルームにおけるインターネット端末と位置づけたテレビに対しても、ソニー「BRAVIA」の「アプリキャスト」やシャープ「AQUOS」の「Yahoo! JAPAN for AQUOS」といったサービスを提供している。「AQUOS向けのサービスは、この10月からセカンドステージに入る。Yahoo! JAPAN IDとテレビをひも付けして写真共有などの連携が可能になる」(同氏)。
これらのサービスは、テレビのリモコンで簡単に操作できるほか、テレビの機能を生かした高品位の画像表示などが特徴。ただし、テレビ本来の動画表示については、まだ本格的に展開してはいない。「日本のブロードバンド世帯普及率は57.1%(2008年推計)に上り、インフラの整備に伴いコンテンツ配信事業も拡大している。とくに映像やゲームなどのリッチコンテンツが主流だ」。
現在では、前述のシャープやソニーのほか、パナソニック、東芝、日立製作所など国内の主要メーカーがそろってインターネット対応テレビを販売している。井上氏は、「昨年のCEATECと比べてもっとも状況が変わっているのがテレビ。2008年は日本のテレビインターネット元年になるのではないか」と指摘。広がるIPテレビのマーケットに対し、早い段階からオープンな環境を作って対応する必要があるという。
テレビ向けの「Yahoo!動画」は、コンテンツプロバイダー(番組提供者)やメーカーを問わないオープンな動画配信プラットフォームになる。メーカーは製品の付加価値を上げ、番組提供者は新しい販売チャネルを確保できるのがメリットだ。
独特のユーザーインタフェースは、テレビ的な操作性を提供するものだ。例えば、番組提供者ごとに放送のような“チャンネル”を設け、それぞれにチャンネル番号を付加。リモコンの数字ボタン一発で“選局”が可能だ。またYahoo!動画を呼び出すと、すぐに動画再生が始まり、そのコンテンツが終了すると次のコンテンツが開始される連続再生もテレビ的。ただし、8チャンネルと9チャンネルを、ユーザーがお気に入りの動画サイトなどを登録できる「マイチャンネル」にするなど、インターネット的な使い勝手の良さも取り込んだ。
デモンストレーションでは、東芝や日立、シャープの試作機を使い、吉本興業などが提供した動画コンテンツを再生してみせた。動画が全画面表示も可能で、早送り/早戻し、スキップといったトリックプレイもサポート。Yahoo! JAPAN IDを使って携帯電話で購入したコンテンツをテレビに表示するといった連携機能の追加も計画しているという。
また、将来的にコンテンツが増え、検索の必要性が高まることを想定した新しいユーザーインタフェースもデモンストレーション。ユーザーは、リモコン代わりに「iPhone」を持ち、独特のタッチパネル操作でコンテンツを検索。お目当てのコンテンツを見つけたら、DLNAのレンダラー機能を利用してテレビに再生させるというものだ。
テレビ向けYahoo!動画のサービス開始時期など、詳細については触れなかった井上氏だが、各番組提供者やテレビメーカーとの協調を進めているとアピールした。
「日本は、IPテレビを先導する環境が整っている。国内のインターネット利用者は8800万人で世界第3位。携帯電話は3G普及率が72.3%に達し、薄型テレビ市場の4割を日本のメーカーが占める。IPテレビを世界に先駆けて普及させ、ユーザーにより便利な生活を提供するとともに、ビジネスでも大きな市場を作っていきたい」(井上氏)。
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