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自発光の極み――パナソニックの「Neo PDP」が見えてきた?(1/2 ページ)

» 2008年10月08日 12時41分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 パナソニックは10月7日、同社のテレビ生産が累計3億台を突破したと発表した(→関連記事)。同日、行われたプラズマディスプレイの事業戦略説明会では、断片的ではあるが来年投入される新世代プラズマ「Neo PDP」の数値による性能が初めて示された。

 パナソニックのNeo PDPは、プラズマパネルの性能を底上げする技術を総称したもの。今年1月の「International CES」で、CESの基調講演に登場した3つのプロトタイプはそれぞれNeo PDPの特徴を分かりやすく形にしていた。つまり、2倍の輝度もしくは消費電力が2分の1になる「高効率」、フルフラットで厚さ24.7ミリを実現した「超薄型」、150V型に至る「超大型化」だ。

photophoto CESの基調講演に登場した「Neo PDP」。発光効率を従来の倍に高めたというプラズマパネルと厚さ2.5センチの超薄型PDP(左)。CEATEC JAPANの同社ブースにも登場。150V型プラズマテレビは4K2K解像度を持つ(右)

 このうち大型化に関しては、建設中の尼崎工場「P5」(プラント5)で採用されるガラス基板をカットせずにそのまま使用するもので、考え方としては新しいものではない。このことから、Neo PDPという言葉が単なるパネル技術ではなく、生産体制までを包含した幅広い意味を持っていることが伺える。

 一方、発光効率の向上などプラズマパネルそのものの進化は、複数の要素技術を組み合わせて実現される。パナソニックはこれまで、Neo PDPの要素技術として「蛍光体などの新材料」「新しいセル構造」「駆動の低電圧化」を挙げて説明してきたが、これらは今までにも繰り返されてきた、いわばプラズマパネルの正常進化であり、「Neo PDP」という言葉が持つインパクトと少々アンバランスな印象を受けていた。

 しかし、今回の説明会では気になるスライドが2つ示された。

photophoto 発光効率の向上により、2009年にパネル電力を2分の1に、2011年にはさらに半分(現状の4分の1)にする(左)。動画解像度は上限値の1080本(右)。Neo PDPのスペックが数値で示されたのは今回が初めて

 発光効率の向上により、2009年にパネル電力を2分の1に、2011年にはさらに半分(現状の4分の1)にするという。パナソニック常務・パナソニックプラズマディスプレイ社長の森田研氏は、「プラズマパネルの発光原理は蛍光灯と同じ。しかし、大きな違いが発光効率で、蛍光灯を100とすると現在のプラズマパネルは3。33分の1程度の発光効率でしかない。これを改善すれば大幅な省エネが可能になる」と説明している。

 要素技術の進歩は、製品開発のオプションを増やすものだ。新材料の採用やセル構造の進歩によってプラズマパネルの発光効率が向上すると、メーカーには「輝度を上げて明るいテレビを作る」という選択肢と、「輝度はそのままで消費電力を抑える」という選択肢が生まれる。現在のプラズマテレビが必要十分の輝度を持っていることを考えれば、後者を選択するのが自然だ。それでも3年後の2011年までに消費電力が4分の1になるメドが立っているというのは、少々驚かされる。

 2つめの動画解像度のスライドは、さらに示唆的だ。動画解像度とはapdc(次世代PDP開発センター)が提案した指標で、動画表示性能を“人の見た目に近い尺度”で測定・評価する(→“動画解像度”に関するいくつかの懸念)。上限はパネルの実解像度(フルハイビジョンなら1080本)ということになるが、等速(60Hz駆動)の液晶テレビではおよそ300本、倍速駆動でも600本以上。またグラフに書かれている「4倍速液晶」は、将来登場するであろう240Hz駆動の液晶テレビを想定した“推定値”で、それでも900本だ。

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