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エプソン「EH-TW4000」で観る「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の光と闇山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.27(1/2 ページ)

» 2008年11月12日 18時39分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 前回の当連載では、パナソニックのフルHD(1920×1080ピクセル)プロジェクター「TH-AE3000」について触れたが、今回はその好敵手と目されるエプソン「EH-TW4000」をご紹介しよう。11月下旬に発売が予定される製品だが、いち早くその画質をじっくりとチェックする機会があったので、そのインプレッションを中心にお伝えしたい。

photo エプソン「EH-TW4000」は11月下旬に発売予定。価格はオープンプライスだが、店頭では37万円前後になる見込みだ

 EH-TW4000に使われている液晶パネルは、パナソニック機と同じエプソン製0.74型倍速駆動対応新D7タイプ。電圧をかけない状態で黒を表示するノーマリーブラック仕様である。この新D7パネルを採用することで、新たに生成(補間)した中間フレームの画像を内挿し、毎秒120フレーム(Hz)表示が可能になったわけだが、これは次のフレーム画像が来るまで現画像を表示し続ける「ホールド」型表示素子である液晶の弱点を補う上でたいへん有効な手法。毎秒120枚の画像を表示させるので、60フレーム/秒の通常駆動に比べてホールド時間が半減し、早い動きのスポーツ番組や横移動するテロップなどで動画ボケが軽減されるのである。

 実際にこのフレーム補間をオンにした状態で映像をチェックしてみて、その効果がとりわけ面白いと思ったのは、最新のCGを使った3DアニメーションのBDソフトだった。24コマ/秒で構成された実写映画をフレーム補間を入れて観ると、その滑らかすぎるヌメッとした動きに違和感を抱いたり、補間ミスによるノイズの発生が気になるケースが多く、結局、見慣れたフィルムジャダー(映画特有のカタカタした動き)が認知できる24コマの等倍速表示(48Hz/96Hz)、または2-3プルダウンの60コマ/秒表示のほうが個人的には好ましく思える。しかし、3Dアニメにフレーム補間を入れると、その滑らかな動きが独特の立体感を生み出し、それぞれのキャラクターが実際に生きているかのような臨場感を生み出すのである。これはぜひ一度体験していただきたい面白さだ。

photo 左側が倍速駆動対応の新D7タイプ

 さて前回お伝えしたように、パナソニック機をはじめ今季のプロジェクターは、液晶パネルの出射側に位相補償板を設けて、プロジェクター内部の楕円(だえん)偏光による光漏れを抑えてコントラストを改善する手法を一斉に採用している。じつはこの工夫、エプソンが昨年発売した「EMP-TW2000」で、「ディープ・ブラック・テクノロジー」というネーミングでいち早く採用した手法である。

 EH-TW2000のアイリス(光学絞り)を使わないネイティブ・コントラストの素晴らしさに驚嘆した各社が、今年一気にその採用に走ったという図だが、オリジネーターであるエプソンは、今年のEH-TW4000でさらにこの「ディープ・ブラック・テクノロジー」に磨きをかけている。偏光フィルター周りの精度アップとともに、液晶パネルに対して斜めに入る光を抑え込むことで、よりいっそうプロジェクター内部の光漏れを低減し、より黒らしい黒が表現できるようにしたのである。

 本機の光源ランプは、E-TORLランプと呼ばれる高圧水銀系ランプが引き続き使われている。出力を見ると、昨年のEH-TW2000が170ワットだったのに比べてEH-TW4000は200ワットとハイパワー化されているが、最大輝度スペックはEH-TW2000と同じ1600ルーメン。ランプをハイパワー化しながらも、斜め入射の不要光を捨て、良質な“おいしい”光のみ使用することでハイコントラスト化を図ったという開発意図が、このスペック表示から読み取れる。

 本機のネイティブ・コントラストは公式には発表されていないが、おそらく6000〜7000:1くらいの値は達成されているのだろう。わが家で愛用している、反射型液晶素子「SXRD」を用いたソニー「VPL-VW200」のネイティブ・コントラストを上回るような黒と白の表現力を持っていると思えるからである。

 実際、本機の映画観賞用映像モードである「シアターブラック1/2」のデフォルト(初期設定)は、オートアイリス・オフである。ここが他社の液晶プロジェクターの初期設定と大きく異なる点で、エプソンがネイティブ・コントラストに強い自信を持っていることがここからもうかがい知れる。ちなみにオートアイリスを入れた状態のコントラスト・スペックは、驚異の7万5000:1である。

 なお、色域を広げ、色純度を上げる「エプソンシネマフィルター」は色再現領域の座標を変更し、EH-TW2000に比べて黄色やオレンジ色の再現性を向上させている。このシネマフィルターの精度アップは、肌色表現の向上に大きく寄与している印象で、ぼくの大好きな白人女優、アン・マーグレットやナオミ・ワッツ、ナスターシャ・キンスキー、ニコール・キッドマンの横顔を、生気あふれる美しさで描写してくれるのである。

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