近年、急速に利用局面の増えている「LED」(Light Emitting Diode)。これは微弱な電圧を加えることで発光する半導体素子の一種で、発光ダイオードとも呼ばれる。用途は幅広く、DVDやBlu-Rayの読み取り装置(ピックアップ)に不可欠な部品として、あるいは信号機や車のポジショニングランプなどの照明器具としても活用されている。構造がシンプルなため製造コストが低く、故障が少ないうえに長寿命なことから、今後もさまざまな分野で利用されるはずだ。
液晶テレビの分野でも、LEDの採用が始まっている。液晶そのものは発光しないため、液晶テレビ/ディスプレイは背後に発光装置(光源/バックライト)を配置するが、そのバックライトをLEDに置き換える動きが進んでいる。
LEDバックライトを採用する利点は複数あるが、その1つが電力消費量に比べた輝度の高さだ。従来の冷陰極蛍光(CCFL)を利用したバックライトと比較すると、20〜60パーセント程度少ない消費電力で同じ明るさを実現できるといわれている。そのため、長時間駆動(省電力性)が重要視されるノートPCでは、すでにLEDバックライトへの移行が本格化している。また、水銀を利用しないのも、環境対策の面からも好ましいといえる。
液晶テレビの場合、LEDバックライトにより「本物に近い黒」の再現が可能になるという画質への恩恵も期待できる。9月に発表されたシャープ「AQUOS Xシリーズ」の場合、100万:1という高いコントラスト比(テレビコントラスト:全白信号で画面最大輝度と全黒信号での画面最小輝度比)を達成している。発表時点の旗艦機「RXシリーズ」が3300:1であることに比べると、その差は歴然だ。また、8月発表のソニーBRAVIA「XR1シリーズ」も、LEDバックライトにより同様の高いコントラスト比を実現している。
そのカラクリは、LEDバックライトが部分的に消灯できることにある。CCFLは常に蛍光管が点灯状態のためどうしても光漏れは避けられず、暗いシーンであっても完全な黒を再現することは難しいが、消灯できるLEDバックライトならば、光が発生しない故に、黒は黒らしい黒となる。さらに、RGBの3原色ごとにLEDを制御するなど、そこへメーカー独自の機能をプラスすることが、今後の液晶テレビにおけるトレンドになると予想される。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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