Quantenna Communications(クアンテナ・コミュニケーションズ)は11月19日、IEEE802.11n準拠の無線LANチップセット「QHS」シリーズを発表した。増え続ける無線LAN機器がハイビジョン映像伝送などのアプリケーションを阻害しないよう、新たにベクトル・メッシュ・ルーティング機能を装備。ホームネットワークにメッシュ構成を持ち込むことで、干渉が起きた際には“迂回路”を選択できるようにする。
クアンテナの創業者で現在も会長兼CEOを務めるベルーズ・レズバーニ博士は、「日本の家屋では、多くの薄い壁があり、過度の干渉を受けやすい」という。同様に、欧州の家庭では“壁の厚さ”が、北米の家庭では広さが無線LANのカバレッジを下げる要因になっていると指摘する。「1つの電球ですべての部屋を明るくすることができないように、1つのアクセスポイントですべての部屋をカバーすることは難しい」(レズバーニ氏)。
同社の提案は、「高速プラグ」と呼ばれる小型の中継ノードを宅内に複数設け、アクセスポイントやほかのエッジノード(PCなど)とともにメッシュネットワークを構築するというもの。同氏が持ち出したプラグのリファレンスボードはマッチ箱程度の大きさで、電源部を取り付けるだけで「高速プラグ」が完成。これを宅内の電源コンセントにいつか挿しておけば、ルーティング機能を持った中継ノードとなる仕組みだ。「サイズは一般的なアクセスポイントの10分の1程度。このプラグを壁に付けるだけで家庭内にメッシュノードができあがる」。
またQHSシリーズには、最大4×4のMIMO(Multiple Input Multiple Output)およびTxビームフォーミングといった機能もあり、従来の無線LANチップに比べて格段にカバレッジを広げた。「伝送範囲は、現在入手できる3×3 MIMOの2倍。データ転送速度も2倍。同じデータレートならカバレッジは4倍になる」(同氏)。これをメッシュルーティング機能と合わせ、チャンネルや出力、アンテナを動的に割り当てることで、さらに電波干渉を抑え、ハイビジョン動画伝送などをスムーズに実行できるようにする。
発表された無線LANチップは3種類。いずれもベースバンド、RF、ARMベースのネットワークプロセッサなどを統合したものだ。5GHz帯を使う「QHS600」は、最大600Mbpsのリンクスピードと最大400Mbpsのスループットを持ち、アンテナはシングルの4×4またはデュアル2×2のMIMOアーキテクチャをサポート。また2.4GHz帯の「QHS450」は、リンクスピードが最大450Mbps、データ転送速度は最大200Mbpsで、QHS600と同じアンテナコンフィグレーションに対応する。さらに上記の2つをICC接続したデュアルバンド仕様の「QHS1000」も用意。こちらはデュアル4×4もしくはクアッド2×2に対応し、リンクスピード1Gbps、スループットは最大600Mbpsに達するという。
クアンテナでは、12月からサンプル出荷を開始する予定。国内では、技術パートナーであるバッファローと検証を進めているという。レズバーニ氏は、「2009年の5月から7月ころには同チップを搭載した製品が登場するだろう。802.11nのワイヤレスネットワークを介してリアルタイムの動画配信を実現する、他社の1年先をいくソリューションだ」と胸を張った。
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