だからフルサイズ機はおじさん向け、というのは少々短絡で強引な結論だが、最近のフルサイズデジタル一眼のターゲットユーザーは、プロや若年層のアマチュアを含めるとはいえ、中高年の写真愛好家層がかなりの割合で占めると思う。なにしろ、いくら安くなったとはいえ、製品寿命が短いデジタル一眼のボディに約30万円をかけるのは、職業カメラマン以外では中高年の男性だろう。
一方、フルサイズのデメリットは、従来より小型軽量の製品が登場したといっても、それでもAPS-Cサイズの製品よりは大きくて重いことだ。ボディだけではない。フルサイズの高画質を十二分に引き出すための、最新のフルサイズ対応レンズは大柄であるため、トータルのシステムとしては1.5〜2倍以上の重量アップを覚悟しなければならない。また、画素数に比例してファイル容量が大きくなるので、大容量カードや高速PCも欠かせない。
それでは、今年7月から11月にかけて登場した3台のフルサイズ機の特徴をごく簡単に紹介しよう。
フラッグシップ機「D3」と共通した、有効1210万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載しつつ、ボディを一回り以上小型化し、本体重量を995グラムに抑えたモデル。約95%のファインダー視野率や、秒間5コマ連写性能はD3に及ばないものの、通常で最高ISO6400、拡張設定で最高ISO25600の高感度性能はD3と同等で、ライブビューや電子水準器機能も搭載する。
ボディは防じん防滴構造のマグネシウム合金製で、液晶には3型92万ドットのTFTを採用。フルサイズ機では希少な内蔵ストロボも装備する。オプションのマルチパワーバッテリーパックを装着した場合は、秒間8コマの高速連写が可能になる。後述のライバル2台に比べて画素数は少ないものの、プロ機D3と同等の画質をより低価格の小型軽量ボディで味わえることが魅力だ。
有効2460万画素のフルサイズCMOSを搭載したαシリーズのフラッグシップ機。最大の特徴は、フルサイズ機では世界初となるセンサーシフト式手ブレ補正機構を内蔵し、装着する全レンズで手ブレ補正が機能すること。加えて、ファインダー視野率100%の実現は、ライバルに差を付ける大きなメリットといえる。
ボディは防じん防滴仕様のマグネシウム合金製。中級機「α700」に比べて一回り大きくて重いが、それでも手ブレ補正機構内蔵のフルサイズ機で重量850グラムは立派。液晶には3型92万ドットのエクストラファイン液晶を採用。ライブビュー機能を持たない代わりに、バッファメモリ内に画像を一時記録し、露出やホワイトバランスなどを事前確認するインテリジェントプレビュー機能を搭載。同社の意気込みを感じる力作だ。
従来機「EOS 5D」から約3年ぶりにモデルチェンジを果たしたキヤノンの中級機。撮像素子は有効2110万画素のフルサイズCMOSで、高感度は通常で最高ISO6400、拡張設定で最高ISO25600に対応する。前作にはなかったライブビューやAF微調整、センサークリーニング機能、周辺光量補正機能なども新装備する。
液晶は3型92万ドットのTFTで、ファインダーは視野率98%を実現。ここまでは予想通りのまっとうな改良だが、ハイビジョン動画機能の搭載は意表を突く画期的な試み。家庭用ビデオカメラの代用というよりは、一眼レフ機ならではの映像作品を作るための機能といえそうだ。そのほか、連写の高速化や電池の長寿命化、防じん防滴性の向上など全方向的な進化を遂げている。
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