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第1回 今年は複合機の“当たり年”――最新モデルの傾向と注目機は?複合機08-09年モデル徹底検証(2/4 ページ)

» 2008年12月08日 12時45分 公開
[榊信康,ITmedia]

エプソンの複合機注目モデル

・EP-901F(エプソン)――実売4万円台前半

「EP-901F」

 エプソンの個人向け複合機でフラッグシップモデルとなる「EP-901」には、FAX機能を搭載した「EP-901F」と、FAX機能を省いた「EP-901A」(実売3万円台前半)が存在する。FAXの有無を除き、EP-901FとEP-901Aの機能は同等だ。ここではEP-901Fをピックアップしたが、FAXが不要ならばEP-901Aを選ぶことになるだろう。

 EP-901Fのプリントエンジンとデザインは後述するミドルレンジモデル「EP-801A」と同一の部分が多いので、ここではEP-801Aとの差異を記しておこう。まず目を引くのは堂々たる操作パネルだ。7.8型のタッチパネル(ビュワー部は3.5型液晶)を採用しているため、ボタン類がなく、一層スリムな印象を受ける。もちろん、タッチパネルは外見だけでなく、操作性にも大きなメリットをもたらす。操作エリアの必要な部分だけが点灯するので、操作に戸惑うことが少ないのだ。

 また、個人向けの複合機としては珍しく、ADFユニットを内蔵(原稿台の圧板と一体化)している。防じんカバーは折りたたみ式になっており、開いた状態では給排紙トレイとして機能する仕組みだ。ADFは閉じた状態ではロックされるので、コピーやスキャン時に原稿台を後方に倒しても不意に開いてしまうことはない。

 スキャンエンジンの解像度は4800×4800dpiとハイスペックだが、ボディの小型化のためか、センサーがCCDからCISに切り替わっており、ユーザーニーズが低下しているフィルムスキャン機能はついに非対応となった。

 このほかにも、有線LAN(100BASE-TX)、無線LAN(IEEE802.11b/g)の搭載など豊富な機能をそろえていながら、ボディサイズは466(幅)×385(奥行き)×198(高さ)ミリと小型で、カラリオ複合機のフラッグシップモデルらしく、豪華絢爛(けんらん)な仕上がりだ。

2段式の給紙カセットを備えた前面給排紙機構と、ADF、FAX機能まで搭載する(写真=左)。インクは染料6色のPM-Gインク(つよインク200)で、全色独立カートリッジを本体の右前方に装着し、そこからプリントヘッドへチューブでインクを搬送するオフキャリッジ機構だ(写真=中央)。スキャナは光学4800dpiのCISセンサーを搭載したもので、フィルムスキャン機能は省かれた(写真=右)

・EP-801A(エプソン)――実売2万円台半ば

「EP-801A」

 エプソンがカタログで「まよったらコレ!」とおすすめする今年の売れ筋ミドルレンジモデルで、新生カラリオを象徴する製品がこの「EP-801A」だ。ネットワーク機能は標準で装備していないが、主力機だけあって手堅くまとまっている。

 新生カラリオの特徴であるリビングにマッチした省スペースボディは、446(幅)×385(奥行き)×150(高さ)ミリと特に高さを抑えている。このデザインは、オフキャリッジ式のプリントエンジンにより実現した。プリントヘッドの左右に動くキャリッジ部分からインクタンクを分離し、インクをチューブでプリントヘッドへ送る仕組みとすることにより、キャリッジに要す空間を縮小したわけだ。

 小型化にともなって給紙機構も見直された。新たに前面給排紙機構を採用しており、使用時でも背面に余分なスペースを必要としない。従来機のような後部トレイはないが、前面カセットは上部にはがきを最大20枚、下部にA4普通紙を最大120枚セットできる2段構造なので、2方向から別々の用紙を搬送可能だ。排紙トレイのカバーが印刷時に自動で開くほか、本体から離れた場所でも動作状況が確認できるように液晶モニタの下に青色LEDのステータスバーを追加するなど、使い勝手はよい。

 また、新デザインのボディはCD/DVDレーベル印刷機構のプリントトレイも内蔵している。しかも、トレイの出し入れは操作パネルのボタンを押すだけで自動で行えるため、扱いは従来よりも格段に手軽になった。

 操作パネルはEP-901Fと異なり、2.5型液晶モニタと複数のボタンで構成される。従来のカラリオ複合機と同様に、左から右に向かって順番にボタンを押していくことで作業が終了する設計だ。

 プリントエンジンは、従来機と共通の6色独立インクカートリッジを採用。インクを5つのドットサイズで制御する「Advanced-MSDT」(アドバンスド・マルチ・サイズ・ドットテクノロジー)は継承され、インク滴のサイズは1.5〜11ピコリットル範囲、駆動周波数は65kHzだ。「Epson Color」の画作りも引き継がれた。

 新機能のインク目詰まり対策は、印刷前に電荷を加えたインクを電極プレートに吐出して自動的にドット抜けをチェックし、ドット抜けを検知した場合、ヘッドクリーニングを実施する「自動ノズルチェックシステム」を装備。はっ水性の高いノズルプレート、ヘッド内部に気泡を排出しやすい材料やガス・水蒸気のバリア性の高い材料を採用し、圧力振動で微小な気泡の消滅を促進させる技術も新たに採用した。

 スキャナエンジンはセンサーにCISを採用。解像度は2400×4800dpiでEP-901よりも落ちるが、対応する原稿種が反射原稿のみなので、これでも十分すぎる性能だろう。

2段式の給紙カセットを持つ前面給排紙機構により、使用時も外観はスマートだ(写真=左)。インクはEP-901Fと同様、染料6色のPM-Gインク(つよインク200)で、全色独立カートリッジを用いる(写真=中央)。スキャナは光学2400dpiのCISセンサーを搭載したもので、フィルムスキャンには対応しない(写真=右)

・PM-A840S(エプソン)――実売2万円前後

「PM-A840S」

 「PM-A840S」はその名の通り、昨年の売れ筋モデル「PM-A840」のマイナーアップモデルであり、旧カラリオのデザインを引き継いだ唯一の機体だ。

 変更点は天板にドットプリントを施した程度で、基本的なボディデザイン、プリントヘッドなどハードウェアの仕様は従来とほぼ同等である。ソフトウェア面では上位機と同じ「オートフォトファイン!EX」における「覆い焼き」補正対応の逆光補正が利用可能になるなど、細かな進歩はあるものの、PM-A840のユーザーが買い替えるのに適したモデルではない。

 とはいえ、昨年のミドルレンジモデルと同等の製品なのだから悪い性能ではない。画質に不満はなく、印刷速度も極端に劣るわけではない。機能面も2系統給紙はできないものの、CD/DVDレーベル印刷など、基本は押さえている。ただ、ネットワーク機能は標準装備してほしかったところだ。間口を狭くすることを嫌ったのだろうが、無線プリントアダプタの「PA-W11G2」を別途購入するとEP-901Aの販売価格と変わらなくなってしまう。

 ボディは上背があるため、本体サイズは450(幅)×413(奥行き)×205(高さ)ミリと大きいが、実のところ設置面積は新生カラリオとそれほど大きな差はない。収納時はともかく、トレイを引き出した状態では、むしろこちらの奥行きが短くなる。操作パネルは本体の横幅をめいっぱいに利用したレイアウトだ。大振りのボタンなので押しやすく、機能も把握しやすい。この辺りは、小型ボディに機能を詰め込んだEP-801Aよりもむしろ優れているようにも思える。

給紙は後部トレイの1系統だけで、前面に排紙する(写真=左)。インクは上位機と同じ染料6色のPM-Gインク(つよインク200)で、全色独立カートリッジだが、こちらはキャリッジ上にインクを装着する(写真=中央)。スキャナは光学1200dpi(副走査2400dpi)のCISセンサーを搭載し、フィルムスキャンには対応しない(写真=右)

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