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とにかく明るいパワフル機――エプソン「EH-TW3000」特集:30万円で買えるフルHDプロジェクター(3/3 ページ)

» 2008年12月09日 12時06分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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映像チェック

 まず最初に驚くのが、ホームシアター用プロジェクターとしては望外の明るさだ。1800ルーメンという最大輝度は伊達ではなく、モードを「ダイナミック」にしていると、意地悪のつもりで試した蛍光灯の下でもはっきりと絵が見える。もちろん階調は大幅に減り、エッジが強調された絵になってしまうが、それでも「ちゃんと見える」という事実は大きい。ゲームで遊んだり、ニュースやバラエティなどを見たりする場合には、液晶テレビ代わりとして充分に活用できる。

 クオリティー方面の話をすると、こちらもなかなか良好。部屋を暗めにして「シアターブラック2」などのモードに切り替えると、ミッドレンジ機という印象を一掃する映像表現を楽しむことができる。とくにホワイトアウトまでの粘りと輝かしさが素晴らしく、風景などの映像が清々しく、フレッシュなイメージを持つようになる。

 印象的なのが、「シアター」モードを利用したライブ映像だ。輝かしいまでのライティングとブラックアウトが同居する画面は、プロジェクターにとって最も難しい表現なのだが、持ち前の明るさと幅広いダイナミックレンジを生かし、強烈なコントラストを持つ非現実的な映像をリアルに再現する。

photophoto 「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館」(ESXL-2/6090円)の映像。眩いばかりのライティングがとても印象的。こと明るさに関しては大きなアドバンテージを持ち合わせている(左)。部屋のモードをダイナミックに変更、30型+40型の蛍光灯を点けた状態の映像(EOS kiss N、ISO400、シャッター速度1/15、F11で撮影)。写真では画面が多少白んで見えるが、実際には充分に映像を確認できるレベル。あまりの明るさに驚いたのが正直なところ。間接照明であれば「シアター」モードでも充分(右)

 ちなみにオートアイリスは、オンの状態にすることで黒側の階調が多少細やかになるので、基本的には利用したい。けれどもライブ映像など、コントラストがはっきりしている映像では、オフにするのも手だ。EH-TW3000はネイティブコントラストが高いため、必要な階調はオフの状態でもすでに確保されており、かえってパリッとした、力強い映像を楽しめるようになるからだ。このあたりは好みや映像ソースでセッティングを選んでほしい。

 映像をチェックしているうちに、ちょっとした弱点も垣間見られた。なかでも気になったのが、黒の表現。階調表現に大きな不満はないものの、明るすぎるあまり、どうしても“黒浮き”気味になってしまうのだ。こちらは各パラメーターを調整することで多少押さえられるものの、それで満足できるかどうかは好みによって分かれるだろう。もし不満を持つ場合は、黒浮きを抑え、7.5万対1という階調性を実現しているEH-TW4000を候補に加えてほしい。

お勧めしたいユーザー

 1800ルーメンという業務用プロジェクターに近い明るさと、1.8万対1というコントラストは、明るいリビングでも楽しめるという、プロジェクターの概念を打ち破る使い方を提案してくれるだけでなく、映像に輝きや力強さまでも与えてくれている。ホームシアターの初心者であるか否かにかかわらず、この映像表現に魅力を感じるすべてのユーザーにお勧めしたい製品だ。また7〜8万円程度の予算を上乗せすれば、コントラスト7.5万対1、倍速駆動対応の上位機種EH-TW4000も手に入れることができる。両者の価格差はそれほど大きくはないので、実際の映像をじっくりチェックして、どちらがより好ましいか検討してほしい。

品番 EH-TW3000
パネル形式 有機液晶パネル0.74型×3枚、アスペクト比16:9
投映レンズ 手動ズーム・フォーカス(1〜2.1)、F:2.0-3.17 f:22.5-47.2ミリ
光源 200ワットUHEランプ
画面サイズ 最小30型〜最大300型
投射距離(100インチ) 3.0〜6.3メートル
有効光束(明るさ) 1800ルーメン(ダイナミックモード選択時)
コントラスト比 18000:1(ダイナミックモード選択時)
騒音レベル 22デシベル(ランプ低輝度時)
映像入力端子 HDMI端子×2(HDMI 1.3a、Deep Color対応)、コンポーネント(Y-Pb/Cb-Pr/Cr)×2、S端子×1、RCAビデオ端子×1、ミニD-sub15×1
消費電力 269ワット(待機時 0.2ワット)
外形寸法 450(幅)×360(奥行き)×136(高さ)ミリ
質量 7.3キログラム

試聴に使用した環境

 今回のテストには、わが家の自称「極小シアタールーム」を使用。広さは6畳程度であるものの、スクリーンは16:9、100インチのキクチ「ホワイトマットアドバンス」を使用。スピーカー下の床を抜いて地面から直接重量ブロックを積み上げたり、両サイドの壁面に反響板を設置して音響特性をそろえるなど、ホームシアター系のテストにはおおよそ適した環境となっている。

 この部屋を縦長に使用し、スクリーンの対向面にある棚にプロジェクターを設置。レンズシフト機能を使って最適な投射に設定することで、ごく一般的なパターンの利用方法を再現している。またプロジェクターとプレーヤーはオーディオテクニカ製の高級HDMIケーブル「AT-EDH1000/1.3」(2万3625円)を使用してダイレクトに接続。音声は光デジタル出力とした。また各機器はオーディオテクニカ製の電源タップ「AT-PT707」(オープン価格)に接続、配線や電源による音質の劣化も最小限にとどめている。


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