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CESで新たな展開――パナソニックの「3Dシアター」戦略を聞く2009 International CES(2/3 ページ)

» 2009年01月06日 13時24分 公開
[本田雅一,ITmedia]

小塚氏 これまで、映画のパッケージ化ではリファレンスとなる映像がはっきりとしていました。映画スタジオはマスターテープを所有しており、そこに監督が伝えたい映像の意図が込められていました。そのマスターテープにきわめて近い質感を出すことが、高画質化の目的だったわけです。ところが、3D映像の場合は撮影方法によって見え方が変わりますが、見せ方、つまりディスプレイ側の設定やサイズ、視聴位置などによっても、見え方が大きく変化します。

 これがCGアニメならば、家庭向けと劇場向けで3Dの設定を変えるなど、やり直しを何度でも行えますが、実写に関しては撮影段階で失敗してしまうと、後からの修正には限りがあります。そこで、キャメロン監督と劇場でも、家庭でも楽しめる3Dの実写映画制作のノウハウを構築していくことにしました。

――協業相手にキャメロン監督を選んだのはなぜでしょう?

小塚氏 キャメロン監督は、3Dの実写映像に関してはハリウッドでも第一人者です。3D撮影では業界標準になっているPaceの3Dカメラの開発にも関わっており、すでに多くのノウハウを持っています。さらに現在、3Dの実写大作映画「アバター」を撮影中で、その撮影を通じて共同作業を進めてきました。これらのノウハウをフィードバックし、より優れた、より心地よく楽しめる3Dテレビの開発を行うため、キャメロン監督との協業を進めました。

 キャメロン監督は次のように話しています。「3D技術は、トーキー(サウンド対応)やカラー化と同じように、新たな標準的な映画製作の技術だ。3D技術を映画会社幹部の金もうけの手段とするのではなく、映画製作者の視点で完成させるべきだ。客寄せのためにギミックとして3D効果を入れるのではなく、3Dならではの表現を追求したい」。こうした制作者側の情熱を受け止めることができる、コンシューマー向け機器の開発をわれわれはしていかなければならないと考えています。

photo パナソニックが提案する3D方式の特徴

――今回の展示で使用するデモ映像のビットレートは、どれぐらいあるのでしょう?

小塚氏 メイン映像(左目用)に通常のBDと同じピーク40Mbps、右目用にメイン映像の差分情報を20Mbps割り当てていますから、2D映像としてもBDソフトとしては最高クラスになります(左目用は通常、右目の半分のビットレートで同等品質を保つことができるため)。

――Blu-ray Discの規格として3D映像を収録する方法は、検討が開始されているのでしょうか?

小塚氏 現在、BDAでは具体的な活動はありませんが、次回のBDA総会が3月にありますので、その会議では具体的な議論が開始できるようにしたいと考えています。

――CEATECでは、従来のプレーヤーとも互換性を保ちながら3D化したエンコード技術について紹介していました。BDAに提案するのは同様の技術と考えていいのでしょうか?

小塚氏 互換性はもっとも大きなテーマです。従来のプレーヤーでは2Dの一般的なBDコンテンツとして楽しめ、3Dプレーヤーとディスプレイを用いることで3D化する上位互換のコンテンツ規格として提案します。


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