「2009 International CES」は、"世界的不況"が、1つのテーマになっていた。残念なことではあるが、利益率が低く、利潤に対してキャッシュフローが極端に多い家電業界は不況の波を受けやすく、業界の編成にまで影響が及ぶこともある。厳しい情勢の中、どう舵を取っていくかというのは、市場に安心感をもたらすためにも重要なことなのだろう。
しかし、多くのAV家電が不況の影響を受けている中、北米のテレビ市場は思ったほどの影響を受けていないという強気の声もある。加えて北米のパナソニックは新たな営業体制を整え、北米市場でのブランド力確立に向けての足固めが進んだという。Panasonic Corporation of North America(以下、北米パナソニック)社長の北島嗣郎氏に話を聞いた。
昨年、北米市場では年の前半に表面化したサブプライムローン問題に端を発した不況があったが、このときは家電業界全体に与えたインパクトはあまり大きくはなかった。人々は旅行など長期の外出を控え、旅行業界などは大打撃を受けたようだが、一方で自宅で過ごす人が増えたため、家庭で楽しむAV家電の売り上げはむしろ上向きだったという。
しかし、さすがに9月のリーマン・ブラウザーズ破たんの際には、業界全体に悪い空気が充満し、それを振り払うことができなかったと北島氏は振り返る。
――不況の影響が出始めたのはいつ頃でしょう?
北島氏:9月末ごろの大手流通とのミーティングで、他業界で顕著になりつつある不況が、いよいよ家電業界にも来るのではないか? という話が出始めました。その後、10月になってゼネラルモータースの危機的状況が発覚しはじめると、単なる景況感の悪化だけでなく、実需の下落が数字として出てくるようになりました。しかし、実はその中でもテレビはそれほど悪くありませんでした。
もちろん、ホームシアターセットとか、デジタルカメラ、カムコーダーといった、どちらかといえば嗜好(しこう)品の度合いが高い製品は、ものすごく売り上げが落ちました。しかし、不況でおとなしく自宅にこもる人ほど、テレビがほしくなるのでしょう。台数ベースでは業界全体で昨年比5%ぐらい、われわれの製品に関しては30%以上も伸びました。とくに大型テレビに関しては業界全体でも2桁成長を遂げています。
――売れ始めたのは、やはり(BDの売上げが急増したという)ブラックフライデー以降でしょうか?
北島氏:ブラックフライデーが大きな契機にはなりました。とくにBDプレーヤーの動きが急でした。ブラックフライデーを境にBD関連製品、ハードウェアもソフトウェアも売れ始めたのです。ネットフリックスのレンタルBDも人気を博しているようです。月17ドルで同時3枚をレンタルできる、郵便を用いたネットレンタルサービスですが、これがBDにも対応しています。
――BDプレーヤーでは、瞬間的にソニーのシェアを抜いたと聞きました
北島氏:12月第1週目の瞬間的なものですが、ソニーを抜いています。ただ、あんまり急に売れたもので、その後にすぐ在庫を切らしてしまい、シェアはその後、落としています。とはいえ、われわれのBDプレーヤーが売れたことで、テレビにも良い影響が出ました。1080pをキーワードにしているので、同時にテレビを購入してくれるお客様が、WXGAではなくワンランク上のフルHD機を買ってくれるからです。
――テレビについては大型化の進行もあるとのことですが、どの程度進んでいるのでしょう
北島氏:われわれの場合でいいますと、プラズマをメインに訴求していることもあり、50インチ以上の製品が半分以上を占めます。
――特定の流通では42V型のパナソニック製フルHDプラズマテレビが999ドルで、さらにリベートが100ドル戻るといった設定でした。日本に比べると、かなり安い値付けですが、さすがに下がりすぎではないでしょうか?
北島氏:42V型フルHDなら1000ドルを切るのは北米では当たり前なんです。ほとんどの人がケーブルテレビを見ていて、チューナーなどの内蔵機能が日本向けの製品に比べて圧倒的に少ない。業界全体では600ドルぐらいの製品を望まれていて、1000ドルクラスのテレビは全体の20%ぐらいの高所得者層向け製品になるのです。確かに機能の違いを考えても、日本より安く感じるかもしれませんが、北米での価格相場からいえば異常な状況というわけではありません。
――大型化は今年もさらに進みそうですか?
北島氏:フルHDへの移行と大型化は間違いなく進みます。65V型以上となると、確かに一部の限られた人にしか売れませんが、50V型以上はのテレビは今後も堅調に伸びるでしょう。そしてフルHDの大型テレビでは画質差が見えやすいこともあって、BDの販売も伸びます。
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