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空気が読めるロボット、バンダイ「My ドラえもん」(2/2 ページ)

» 2009年07月01日 20時00分 公開
[ITmedia]
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 前述の通り、My ドラえもんは“おしゃべり”を中心としたコミュニケーションロボットだ。しかし、いわゆる音声認識機能は搭載していない。

 実は、バンダイがコミュニケーションロボットとして「ドラえもん」を製品化するのは、今回が2度目。My ドラえもんの前身といえる「ドラえもん・ザ・ロボット」(2004年)は、各種センサーと音声認識機能を備え、ユーザーの呼びかけに応じてさまざまな“おしゃべり”ができるロボットだった。

photo 2004年に発売された「ドラえもん・ザ・ロボット」

 ただし、2万円を切る玩具に本格的な音声認識機能など搭載できるわけはなく、ユーザーの言葉から「ねずみ」など特定の単語だけを抜き出して認識する“ワードスポッティング”と呼ばれるタイプだった。「認識できる単語の数も限られていました。むしろ、センサーに刺激が加わると話すなど、見た目の楽しさを強調したロボットといえます」(知久氏)。

 そもそも現在の音声認識技術では、お金をかけても認識率を100%にすることはできない。まして大人向けとはいっても玩具の価格帯を大きく外れることは避けたいところ。「ならば、音声認識技術を使わず、疑似会話を成り立たせることはできないか、と考えました」(知久氏)。

 大胆な発想の転換の末、生み出されたのが「スキット」と呼ばれる感情分析型会話システムだ。その名の通り、英会話番組の寸劇のように、あるテーマに沿っていくつもの分岐を持った会話のシナリオを用意。ユーザーの感情を分析する評価エンジンを組み合わせ、ドラえもんのセリフを選び出す独自のアルゴリズムといえる。

 評価エンジンでは、ユーザーの返答を、その‘間合い’や“長さ”で分析・判断するという。例えば、ドラえもんが「今日はホントに気持ちのいい日だね」と話しかけたとき、ユーザーが「そうだね、いい天気だ」と返答すると、評価エンジンは長い返事を肯定(興味あり)と判断。ドラえもんは「風がさわやかだよ。窓を開けようよ」と続ける。一方、ユーザーの返答が「そうでもないよ」など短かった場合は否定(興味なし)と認識。ドラえもんは「どんな天気?」と語りかける。これを繰り返すことで擬似的な会話が成り立つ仕組みだ。

photophoto My ドラえもんの図面は、子どものころに雑誌で見た“ドラえもん解剖図”をほうふつとさせる

 もちろん、言葉の意味を理解しているわけではないから間違いもある。それでもドラえもんがユーザーの返答を聞き、その心理を推測するというのは、単語だけの音声認識より深いコミュニケーションといえる。言葉のキャッチボールを続けることができて、ときどき飛んでくる変化球(間違い)も、相手がドラえもんなら面白い。逆に、ユーザーが評価エンジンの仕組みを把握していれば、意図的にスムーズな会話を続けることもできる。子どもたちに見せたら、きっと喜ぶだろう。

 My ドラえもんに搭載されるスキットは16以上あり、さらにクリスマスやお正月、ユーザーの誕生日といったイベントを反映して多彩な“おしゃべり”が可能だ。セリフの数は1300以上。それには原作やアニメに登場したドラえもんの名セリフも多く含まれているという。さらにMy ドラえもんは、自分が話したことを記憶しているため、同じ話を繰り返したりはしない。

 「ドラえもんがいたらいいな、とあこがれていた人、癒しを求める人など、さまざまな方に楽しんでももらえると思います」。


 ドラえもんの誕生日とされる西暦2112年9月3日まで、あと103年と2カ月。ドラえもんはほしいが、そんなに待てないという人、また机の引き出しにタイムマシンが見あたらないという人も、My ドラえもんで23世紀の気分を味わってみてはいかがだろう。

 ちなみに、事前予約をしておくと、あの「未来デパート」の小包ふうパッケージに入ったMy ドラえもんが、2009年9月3日に届けられる。

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