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目指したのは“究極” 地上を走る「戦艦大和」開発秘話(3/3 ページ)

» 2009年09月20日 09時10分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ラッキーな偶然

——どうやって旋回や傾きの動きを再現するのですか?

 底面に1本のタイヤがあり、舵をきるとタイヤの周囲ごと回転する仕組みになっています。

 船というのは、スクリューの後ろにある舵を動かして曲がるものです。それと同様、“後輪駆動、後輪ステアリング”の配置により、船がおしりを滑らせながら旋回していく様子が再現できました。また、駆動部の左右に黒い突起が見えますが、この部分が上下することで、旋回時に大和が傾く仕組みになっています。

photophoto 大和の底面にある駆動輪。舵をきるとタイヤの周囲ごと回転する(左)。船の旋回も再現(右)。なお、大和の動きについては後日動画付きの記事を掲載予定だ

 資料では、主砲の旋回は1秒間に2度ずつ、主砲の上下動については1秒間に8度といった記述があります。ただ、この模型の場合は1秒間に2度ではあまりに遅いので、少しデフォルメして5度くらいに調整しました。

——同時発売の「情景ストラクチャー」シリーズも当時の呉軍港を忠実に再現したということですが、資料を集めるのは大変だったのではないですか?

 当然ながら、戦時中の呉海軍工廠(こうしょう)というのは、日本海軍にとって最重要軍事機密でしたので、当時の建物が写った写真などはほとんどありません。終戦後にイギリスとオーストラリアの進駐軍が撮影した写真が少しだけある程度です。

 建物の配置などは、1945年と1947年に米軍が撮影した航空写真を参考にしました。現地の住宅地図を買ってきて、写真を見ながら地形を図り、解析しながら設計を進めるという手順です。また、第二次大戦よりも前、大正から昭和初期に撮影された写真なども参考にしました。情景ストラクチャーセットに含まれる建物や車、列車なども当時、実際に使われていたものです。

photophoto 資料の数々。起重機(クレーン)の図面には赤いペンでいくつもの線が入れられている。斜めを向いた写真から角度の補正をかけ、ピッチを割り出した計算の跡だという(左)。情景ストラクチャーセットに含まれる建物や車、列車なども当時、実際に使われていたもの(右)

 建物の“色”も問題です。例えば中央の造船部艤装(ぎそう)工場は最近(平成14年)まで実物が残っていたのですが、今はもうなくなってしまって、資料もない状態でした。ところが、平成13年に“ふらり一人旅”で呉をたずねたことがあり、そのときのスナップ写真を見てみると、ちょうどこの建物が写っていたんです。本当に偶然なのですが、写真を見つけたときは10年前の自分に「よくやった」と言いたい気分でした。当時は、この建物を商品化するなど、まったく想像していませんでしたが。

photophoto 10年前のスナップ写真と再現された建物。窓も光ったりする

 資料収集とリサーチには相当苦労しました。それでもパーフェクトに集められたわけではありませんから、類推せざるをえない部分もあります。しかし、できうる限り集めて、最大限に再現できたと思っています。

——最後に今後の製品展開を教えてください。すでに大和型戦艦二番艦「武蔵」をリリースする予定があると聞きましたが、いつ頃発売になりますか?

 「戦艦武蔵」は年末年始あたりに発売するつもりです。大和と武蔵は同型艦(大和型戦艦)のため、外観にあまり違いはありませんが、大和に関しては昭和20年前後、武蔵は昭和17年時点の姿を再現しています。

 大和は艦橋の左右に6基の対空高角砲がありますが、昭和17年の武蔵ではその代わりに左右にも副砲が付いた状態です。艦船同士の戦いを想定した装備ですね。

——ちなみに三番艦「信濃」についてはいかがでしょう

 「信濃」については船底は同じですが、上は空母ですから……。ゼロから作るよりは楽だと思いますが、まだ予定には入っていません。

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