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今そこにある「dynabook TX/98MBL」の3D立体視を試す元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2010年08月17日 11時05分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]

PC史上で初となる3D立体視ブームが到来!?

東芝唯一の3D立体視対応モデル「dynabook TX/98MBL」

 左右の目に、それぞれ別の絵を見せることにより視差を作り出し、見る者に遠近感を与える3D立体視(ステレオスコピック3D)は、古くからある技術だ。雑誌の付録などに添付された左右に赤と青のセロファンの張られたメガネで、立体視をしたことがある人も少なくないだろう。その3D立体視が、映画「アバター」のヒット以来、テレビやBlu-rayレコーダー、さらにはPCまで巻き込んだブームになろうとしている。

 これまで3D立体視は、何年かに1度、ちょっとしたブームが起こり、また消えて行くというパターンを繰り返してきた。ところが、今回はハリウッドや大手家電メーカーも3D立体視に多額の投資を行っている。このままスンナリと今回のブームが定着するのかどうかはともかくとして、そう遠くない将来、3D立体視はごく普通の機能になっているのではないだろうか。

 とはいえ、まだ短いその歴史において、PC上で3D立体視がブームとなったことはない。ハリウッドに先導される形で始まった今回が、実質的に最初のブームとなる。PCベンダーもまだ手探り中というのが正直なところではないかと思う。

 ここで紹介する東芝の「dynabook TX/98MBL」は、同社としては初の3D立体視をサポートしたノートPCだ。dynabookシリーズにあってTXは、上位スペックを備えたスタンダードノートPCという位置付けだ。書き込み可能なBlu-ray Discドライブを内蔵しているものの、Qosmio/dynabook QuosmioのようなAVノートPCと違ってデジタル放送対応のテレビチューナーや、画像処理用エンジン(SpursEngine)は搭載していない。本機もこの路線を踏襲しているが、3D立体視対応ということで、ほかの(通常の)TXシリーズよりもさらにハイスペックになっている。

 それが最も端的に表れているのは、本機のCPUがインテルのCore i7-740QM(4コア/8スレッド)であるということだろう。45ナノメートルプロセスルールで製造されるCore i7-740QMは、Turbo Boost Technology有効時に最大2.93GHzで動作する定格1.73GHz動作のクアッドコアCPUだ。わが国において、クアッドコアCPUを搭載したノートPCが店頭販売されるのは、かなり珍しいことだ。メモリも標準で4Gバイト(DDR3-1066)備えており、一般的な利用には十分なスペックを持つ。

4コア/8スレッドのCore i7-740QM(1.73GHz/2.93GHz)を備える
harman/kardon製のステレオスピーカーを内蔵。Dolby Advanced Audioのほか、Maxx Audio技術もサポートする
パームレストはシボ加工が施されており、ツヤを抑えたベルベッティブラックを採用している

3D立体視機能はNVIDIAの3D Visionを採用

 さて、肝心の3D立体視機能だが、本機ではNVIDIAの3D Visionを利用している。ベースとなるGPUはGeForce GTS 350Mで、1Gバイトのグラフィックスメモリを搭載する。3D Visionは、フレームシーケンシャル方式の3D立体視技術で、一般的な液晶ディスプレイの2倍にあたる120Hzの垂直同期周波数を必要とする。左目用の絵と右目用の絵を1/120秒単位で表示し、アクティブシャッター方式メガネの液晶シャッターを1/120秒単位で片眼側だけ閉じることで、左右の目にそれぞれの絵を届ける仕組みだ。従って、3D立体視中の実効垂直同期周波数は、半分の60Hz(一般的なPCと同じ)になる。本機のディスプレイはこの120Hzに対応可能なもので、おそらくはこの理由で16型ワイド液晶を採用するほかのTXシリーズより、一回り小型のディスプレイ(15.6型ワイド)となっている(解像度は1366×768ドット)。現在市販されている家庭用プラズマあるいは液晶テレビが採用する3D立体視技術と、基本的には同じ方式と思ってもらえばいい。

 付属する3D Visionは市販されているNVIDIA製のキットで、USB接続のIRエミッター(メガネにシャッターを開閉する同期信号を送る)、USB充電をサポートした3Dメガネ、2本のUSBケーブルなどが添付されている。メガネには、ユーザーに合わせて交換可能なシリコン製のノーズパッドを付属しており、交換することでフィット感を高めることができる。メガネはフル充電で連続約40時間利用可能だ(充電されていれば、利用中ケーブルの接続は必要ない)。

15.6型ワイドのClear SuperView LED液晶を搭載。画面輝度は8段階に調整可能だ。光沢液晶ゆえ画面への映り込みは気になる
3D立体視機能はNVIDIAの3D Visionで提供される。3DメガネとIRエミッターが付属する
NVIDIAコントロールパネルにあるステレオスコピック3Dの設定。ここで3D効果の奥行き感を調整できるほか、無効に設定可能だ

Blu-ray 3Dと3Dゲームの両方で3D立体視を楽しめるが……

NVIDIAコントロールパネルに用意されているゲームとの互換情報

 この3D Visionを使って3D立体視できるコンテンツは、Blu-ray 3Dと3Dゲーム(DirectX 9以降)だ。残念ながら、現時点でBlu-ray 3Dに準拠したタイトルはまだ国内販売されておらず、2010年秋といわれる発売を待たねばならない。ただ、試用機に添付されていたデモを見る限り、3D効果は非常に高く、チラつきも少ない。横に寝っ転がってしまうと不可だが、多少頭の位置や首が動いたくらいでは、3D効果が得にくくなることはなかった。背面に強い光源があると、メガネの内側に反射して見にくくなることがあるものの、最も安定/確実な3D立体視技術であることは間違いない。Blu-ray 3Dタイトルのリリースが待たれるところだ。

 このBlu-ray 3D用の再生ソフトウェアは、Corel WinDVDの東芝版(WinDVD BD for TOSHIBA)を使う。BDやDVDメディアをドライブに挿入すると、まず「TOSHIBA DVD PLAYER」が起動し、メディアがDVDであればそのままTOSHIBA DVD PLAYERによる再生が行われ、BDの場合はCorel WinDVDが呼び出される仕組みだ。本機がサポートする超解像技術によるDVDのアップスケール再生は、このTOSHIBA DVD PLAYERを用いた場合のみ有効となる。Corel WinDVD BD for TOSHIBAは東芝向けのOEM版ということで、ファイルやフォルダの再生機能が省略されている。

 一方、ゲームに関してはDirect 3Dの奥行き情報を利用するため、特に対応をうたったゲームでなくとも3D立体視が可能だが、その効果にはタイトルごとにバラつきがある。タイトルによる効果の程度は、NVIDIAコントロールパネル(ディスプレイドライバ付属のユーティリティ)の中から確認することが可能で、優、良、並、非推奨の4段階による評価がされている。

 いくつかのタイトルを見てみたが、ゲーム会社が独自のアルゴリズム(ソフトウェア)で3D効果をがんばったものより、素直にDirect 3Dで描画したタイトルの方が効果が高い傾向にあるようだ。ゲームもムービーと同様、チラつきが少なく3D効果は高いのだが、フレームレートのペナルティが結構大きい(次ページのベンチマークテストを参照)。3D立体視よりフレームレートを優先する場合は、NVIDIAコントロールパネルでこの機能を無効にしたほうがよいだろう。

 この3D立体視で気をつけなければならないのは、必ずアプリケーション(ビデオプレーヤーやゲームタイトル)をフルスクリーンにする必要がある、ということ。ウィンドウ状態で起動すると2D表示となり、フルスクリーンに変更すると3D立体視モード(120Hz表示)に切り替わる。フルスクリーン表示できないゲームなどでは3D効果を得ることはできない。メガネをかけていると、3D立体視モードに入ったところで、少し視界が暗くなる(液晶シャッターが動作を始める)のでそれと分かる。あとは、3Dメガネのスイッチで3Dメガネのスリープ状態を解除しておくことだ。

インモールド(IMR)加工が施された液晶ディスプレイ天面部分

 さて、世の中にはBlu-ray 3DやDirect Xゲーム以外にも、3D対応をうたうコンテンツが存在する。左右の絵を1フレーム内の左右に配するサイドバイサイド、あるいは走査線の奇数と偶数に左右の絵を配するインターリーブといった方式による3D動画だ。例えばBS11で放映されている3Dコンテンツやパナソニックが発表した3Dムービーは、サイドバイサイドによるものである。また、Blu-ray 3Dと違って、3Dコンテンツを記録する標準フォーマットのないDVDでは、サイドバイサイドやインターリーブで3D画像を記録したタイトルが市販されている。

 残念ながら、本機はノートPCとして、これらのコンテンツの3D立体視をサポートしていない。しかし、添付されている3D Vision Video Playerで、サイドバイサイドやインターリーブ、あるいは上下分割による3Dコンテンツを、3D Visionがサポートするフレームシーケンシャル方式に変換して3D立体視することができる。3D Vision Video Playerはデモ用のアプリケーションらしく、ドルビーデジタル音声をサポートしていない(AC3フィルタが組み込まれていない)、コンテンツを3D Vision Video Playerが開くことが可能なファイルにメディア変換する必要があるなど、ユーザーによる工夫を余儀なくされるが、サイドバイサイドやインターリーブの3Dコンテンツを再生すること自体は可能だった(上下分割による3Dコンテンツの再生は試していない)。もう少しアプリケーションの完成度を上げて、3Dの変換再生を正式サポートしてほしいところだ。

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