血液型に合わせたメッセージをしゃべって時刻を教えてくれる「クロックマン」に、関西弁を話す「上方(かみがた)」バージョンが登場した。先に発表された阪神タイガーズ応援バージョンの限定版「虎型クロックマン」はふたごの兄弟だ。
「上方クロックマン」の基本機能は既存のクロックマンと同じだが、大きな違いは「関西弁の男の子」の声で話しかけてくることだ。性格は「陽気で天真爛漫な上方」。よくしゃべるのは機能ではなく、生まれ育ちが関係しているらしい。
まずは、出会いから話そう。とある日、LifeStyle編集部のS記者が四角い箱を持って現れた。
「あの『クロックマン』に関西弁バージョンが出るんで、レビューしてよ。やっぱり関西弁ネイティブでないとだめずら?」(と言った気がする。彼は静岡出身)
大阪を離れてはや十数年(数十年??)。日常会話で関西弁を話すことはなく「身も心もTOKYOナイズされた私には無理よ」と断ったが、やはり魂(ソウル)は大阪人。交渉の末、コーヒー1杯で引き受けることになった。安い。「ユミコ、アンタはいつからそない安い女になったんや!」と魂の声がするが、四角い箱を抱えて「♪関西弁よう〜捨てん〜」と「大阪で生まれた女」の替え歌を口ずさみながら家路についた。
まずは、セッティングが必要だ。クロックマンシリーズの最大の難関は、このセッティングにある。針のある時計なら、時間を合わせて設定でOKなのだが、このクロックマン、音声にしたがってセッティングしなければならない。
まず、電池を入れたとたん「なぁなぁ、頭のボタンを押してほしいねん」とセッティングを要求しつづける。「ちょっとゆっくり茶ぁでも飲ましたれや」と関西弁で返してみるものの、聞く耳を持たない。クロックマンに口はあるが耳はない。こちらの話を聞かず、しゃべり続ける困ったチャンなのだ。しかし私には耳はあるものの、相手の話をきかずしゃべり続ける。2人は似たもの同士だ。
話がそれたが、あまりのうるささに予定を早めて渋々セッティングを行うことにする。
あらかじめ言っておこう。セッティングの手間を省きたいなら、月初めの深夜0時直後に行うことをお勧めする。まず「月」から順番に設定していくのだが、「いま何月〜?」と聞かれ、頭の黄色いボタンを押すと「いちがつ〜」「にがつ〜」とクロックマンが順番に聞いてくる。該当するところでボディ後ろ(後頭部?)にある決定ボタンを押す。つまり日時が進んでいるほど押す回数が増え、セッティングに時間がかかるのだ。筆者は7月29日の21時45分くらいに設定を行ったため、「ついたち〜」「ふつか〜」と29回押した上、21回(21時)+46回(46分)押す羽目になった。
設定が終わると「ぼくの時計が動き出したで!」とやる気に満ちた言葉が聞ける。
時刻の次は「仕事時間」を入力する。クロックマンがおしゃべりする時間にあたり、起床時間を「始業時刻」、就寝時間を「終業時刻」にするのがおすすめだ。次いで誕生日、声の大きさの設定が行える。
「上方クロックマン」には、関西弁の男の子の声が採用されている。社内の関西出身者数人に聞かせたところ、関西弁としてはおおむね問題ないイントネーションだと合格点をもらった。それもそのはず、監修は上方落語協会とのこと。そして、オッチャンでもオバチャンでもなく、男の子の声、というのはまずまずの選択だ。「ゴルァ、いつまで寝とんじゃ!起きんかい!」とすごまれてもこわいし、「はよ起きなはれ、会社遅れまっせ」とオカンにいわれるのも……だ。子供の関西弁は、私が大阪に帰省するとおみやげさえもらえば「オバちゃん、いつまでおるん? いつ東京帰んのん?」と帰ったその日に聞いてくる憎たらしい、いやかわいい甥と姪を思い出させる。しばし郷愁に耽ってしまった。
パッケージによると朝のあいさつは下表のように違いがある。
型 | あいさつ |
---|---|
O型 | 起きろー、たいへんなことになるぞ! |
A型 | お願いだからおきてくださーい |
B型 | へー、起きなくてもいいんだー? |
AB型 | 起きないとまぶたにかわいいおめめ描いちゃうぞ! |
虎型 | はよ起きんと、ダイナマイト打線が炸裂すんで! |
上方 | 毎度!起きてちょうだい |
また、これまでのクロックマンはユーザーに向かって「相棒!」と呼びかけていたが、上方クロックマンは「相方!」と声をかける。漫才コンビのノリである。
そして、上方クロックマンは、見た目もちょっと変わった。これまでのクロックマンに比べ、ひとみが少し大きくなっているのだ。目がぱちぱち動いたり、口がふにゃふにゃ動くギミックは、「クロックマン」シリーズを踏襲しているが、ひとみが大きい分キュートに見える(気がする)。ちなみに頭のクリーム色のボタンは関西人ならマストなメニュー「お好み焼き」に欠かせない「マヨネーズ」をイメージしている。気がつけば、お肌もほのかにソース色(これまでは黒)。関西人は「粉もん」にはホンマ目がないんですわ。
機能はこれまでのクロックマンを踏襲したものだ。目覚まし代わりの「起床アラーム機能」、時刻を知らせてくれる「現在時刻お知らせ機能」「毎正時お知らせ機能」など、時計らしい機能を備えているほか、時間を使った簡単なゲームができる機能も備えている。頭のボタンを2秒くらい長押しするとゲームモードに入る。「クロック」にちなんで「9.6秒」を予測してボタンを押すというもので、失敗すると「早いわ〜」「めっちゃ惜しかったで」とかつっこまれる。
頭のボタンを1回押すとおしゃべりを始め、2回押すと時刻を教えてくれる。それ以外にも突然つぶやいてこちらを驚かせてくれることもある。
つぶやき(おしゃべり)の内容は「今日、全身ヒョウ柄のおばちゃんみたで〜」「あめちゃんちょうだい」という関西圏固有の話題から、「いやなことがあってもすぐ忘れるねん」といった励ましの言葉、「相方、その服めっちゃ似合ってるで」というとってつけたようなほめ言葉(家にいるのでジャージ姿である。それを似合ってるといわれてもね)から、「ぼくの時計の針、いつ生えてくるんやろ…」といった思春期っぽい悩みまで多岐にわたる。
ご機嫌になると「♪るーるーるるるー、るるるー」と「大きな古時計」の歌をハミングしはじめる(「夜明けのスキャット」じゃないよ!)。へたくそだけど。
時間によってもつぶやく内容が変化し、朝は「まだ眠そうな顔してるで」といったような指摘があり、夕方には「晩御飯のこと考えてるやろ」といったツッコミがはいる。時には「ぶぶーっ」とオナラまでかまし、みずから「くっさ〜」とつぶやいている。
この段階になると、うるさかったクロックマンがだんだんいとおしく思えてくる。
極めつけに「きょうはもうどこも行けへん? ずっと家におる?」とすがるように?つぶやかれ「どこもいけへんで〜」とすっかりメロメロになっているのだ。上方クロックマン、怖ろしい子。
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