1月中旬にビクター/JVCのプロジェクター「DLA-X9」を自室に導入し、この数カ月、同社技術陣が映画画質を徹底解析した映像モード「フィルム」を中心にBlu-ray Discでさまざまな映画ソフトを楽しんできた。
また、昨年来少しずつタイトル数が増えてきたBlu-ray 3Dもそのほとんどをこのプロジェクターでチェックしてきた。昨年から今年にかけて、3D対応を果たしたプロジェクターがビクター含めて3社から登場したが、クロストーク(二重像)の少なさ、映像のキレ、明るさで本機に勝るものはないというのが各製品をテストしてのぼくの認識だった。
しかし、実際に自室でX9を使ってみてその3D画質に100%満足していると言ったらそれはウソになるだろう。輝度レベルをかなり持ち上げた映像モード「3D」に設定しても、3Dメガネ越しに見る映像の明るさとコントラスト感の不足、色合いの不自然さをもう少しなんとかしたいという思いはぬぐいきれなかった。
そんな折り、試作機を見て驚かされたのが、ソニーの「VPL-HW30ES」である。7月下旬に発売が予定されている本機は、昨年発表された安価なLCOS(反射型液晶)タイプ「VPL-HW20」の後継機という位置づけになるが、上級機「VPL-VW90ES」と同じ240Hz駆動のSXRDパネルを用いて3D対応を果たし(VPL-HW20は120Hz駆動で3D再生には未対応)、型番末尾にソニー高級モデルの証となる“ES”が刻印されたモデルである。そして、その値段はDLA-X9の約3分の1(店頭予想価格は37万円前後)。しかし、その3D画質はDLA-X9以上に明るくてキレがよく、クロストークが気にならないのだ!
フレームシーケンシャル方式を採ったBlu-ray 3D再生時、120Hzデジタル駆動方式のDLA-X9は、3Dメガネのシャッターの開いてる時間がVPL-HW30ESの2倍になるわけで、原理的にはX9のほうが絶対明るいはず……。もちろん昨年暮れに発売された同社のトップエンド・モデル、VPL-VW90ESに比べても、3D画質に関してはHW30ESのほうが断然明るくて見やすいのは言うまでもない。
では、なぜ本機はそんな画質を獲得することができたのか。
まずその3D再生時の驚異的な明るさだが、それは新しく導入された「ダイナミックランプコントロール」技術のたまものだ。VPL-HW30ESに使われている光源は、VPL-VW90ESと同じ高圧水銀系ランプだが、今回同社技術陣は、フレームシーケンシャル方式のBlu-ray 3D再生時に、3Dメガネが開いているときだけこのランプ輝度をVPL-VW90ES比で2.1倍持ち上げるという工夫を施したのである。また、ランプの最大輝度そのものもVPL-VW90ESの1000ルーメンに対して1300ルーメンまで上がっているので、VPL-VW30ESは3D再生時にVPL-VW90ESに比べて約2.7倍の輝度アップが図られたことになる(2.1×1.3)。
さらにもう一点、VPL-VW30ESでクロストークが目立たない理由だが、これもダイナミックランプコントロールの使いこなしによるものだ。つまり、3Dメガネのシャッターの開閉とランプ輝度のコントロール(上げ下げ)のタイミングを完全同期させないで、クロストークが発生しやすい開き始めのタイミングではランプを光らせず、クロストークが出なくなった時点で一気にランプ輝度を持ち上げる工夫が施されているわけである。
ところで、本機VPL-VW30ESとVPL-VW90ESのスペック表を見比べてみると、前者のオートアイリス時のコントラスト比は7万:1で後者は15万:1。画素間ギャップが0.2マイクロメートルの同じ0.61インチSXRDパネルを使っていながらのこの差は、迷光対策など光学系にかけたコストの違いが表れているということだろう。VPL-VW90ESの上位機としての存在価値がまさにここにあるわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR