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ヤマハの新世代AVアンプ「AVENTAGE」で気付く“楽器の個体差”かなりピュア(1/2 ページ)

» 2011年10月14日 17時35分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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 近頃のAVアンプには、2つのプライオリティーがある。1つは最新フォーマットやデバイスに対応する、マルチメディア・センターユニットとしての多機能さ。そしてもう1つが、オーディオ機器としての本来の性能、プリメインアンプとしての実力の高さだ。

 Blu-ray Disc登場時に劇的に変化した音声フォーマットが一段落し、この点でAVアンプが、1つの“買い時”を迎えているのは間違いない。最近はiPod/iPadやネットワークオーディオ再生といった新しいデバイスや機能への対応に焦点が移り、また震災後の電力不足から省エネ性も重視されるようになった。

 一方、後者に関して言うと、ここ1〜2年でかなりのレベルアップが図られたように感じている。ひと昔前は、AVアンプといえば、「音質に関してはピュアオーディオ製品に敵わない」というイメージが音楽ファンを中心に語り継がれていたが、ひとまとめには出来ない実力派が登場しているのである。その先端を走っているメーカーの1つがヤマハ。同社のDSP技術が音質・音場の両面で先端を走っていることは広く知られているが、近年の同社製AVアンプは、その基礎体力の高さからピュアオーディオ派でも一目置く存在になっている。

「AVENTAGE」(アベンタージュ)

 そしてこの秋、こうしたトレンドを網羅する形で登場したのが、「AVENTAGE」(アベンタージュ)シリーズである。トップモデルの「RX-A3010」、ミドルレンジの「RX-A2010」、コストパフォーマンスモデルの「RX-A1010」という3モデルがラインアップされており、共通デザインのフロントマスク同様、コンセプトも一貫している。それは、「次の世代のAVエンターテイメントをカバーしながら、時が経っても陳腐化することのない、基礎体力のしっかりした製品を作り上げること」。AVENTAGEというシリーズ名称は、「AV Entertainment for the New AGE」という製品コンセプトを象徴する造語だという。そして製品のメーカー保証期間が5年間に延びたのは、長く愛用できる製品という自信の現れなのだ。

「AVENTAGE」の3モデル。基本デザインは共通だ

 今回は、トップモデルのRX-A3010を中心に内容を確認していこう。

最大11.2ch対応のシネマDSP HD3採用

 シリーズ中、最も高価なモデルだけに、RX-A3010はかなり凝った造りが施されている。まずシネマDSPは、ヤマハAVアンプシリーズの中でも名機とされる「DSP-Z11」で初めて採用された「シネマDSP HD3」(エイチディ キュービック)を継承。フロント/リアのプレゼンススピーカーを含む9.2ch構成のシネマDSP HD3を外部機器なしで実現する。また外部2chパワーアンプの追加によって最大11.2ch構成まで拡張が可能になっている。

 そもそもシネマDSPは、サラウンドデコードした音声にデジタル信号処理で響き成分を加えることで、独自の臨場感を演出するものだ。楽器メーカーであり、コンサートホールなどの設計も多く手がけるヤマハが長年に渡って蓄積してきた生の実測データを活用し、家庭でも本格的な音場再現を可能にした。

 このシネマDSPに“高さ”方向の音場データを加え、立体的なサラウンド空間を再現するのが、「シネマDSP<3Dモード>」。AVENTAGEシリーズでは、RX-A2010とRX-A1010に採用され、とくに9chパワーアンプを搭載するRX-A2010では最大9.2chの“フルスペック”な3Dモードを単体で利用できる。またフロントプレゼンススピーカーを設置できないケースでは、仮想的に音源を作り上げる「VPS」(バーチャルプレゼンススピーカー)が役に立つ。

 そしてシネマDSP HD3は、生の音場データに含まれる膨大な初期反射音情報まで完全再現することを目指した、いわば3次元立体音場再生の最高峰。サウンドが立体的になるのはもちろん、まるで音のドームに囲まれたかのような緻密(ちみつ)でリアルな音場再現が特長になっている。数年前ならハイエンド機でしか味わえなかったものが、今はミドルクラスの価格で手に入るのだ。

シネマDSP HD3のイメージ

サクサクっぷりは健在、Android版も出た「AV CONTROLLER」

「AV CONTROLLER」(iOS版)

 AVENTAGEシリーズは、iPhone/iPod touch/iPad用のコントロールアプリ「AV CONTROLLER」にも対応している。無料で配布されているこのアプリ、無線LANを介してAVアンプの操作が可能。2009年秋モデル以降のネットワーク機能付ヤマハ製AVアンプ(RX-A3010、RX-A2010、RX-A1010、RX-V771、RX-V3067、RX-V2067、RX-V1067、DSP-Z7、DSP-AX3900)に対応しているため、これまでも使用したことはあったが、改めて使い勝手のよさに感心した。

 他社製品用のアプリに比べて、明らかに動作が軽快なうえ、コントロールできる項目も多岐にわたっている。AVアンプの基本操作はもちろん、シネマDSPの設定変更やオンオフ、ピュアダイレクトモードへの変更など、かなり細かい調整が行えるため、なかなかに使い勝手がよい。NASなどの楽曲リストをiPodのごとくスピン操作できることも、扱いやすくありがたいかぎりだ。なお、「AV CONTROLLER」は、先日Android版も公開された。もちろんこちらも無料だ。



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