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魅せる有機EL、技術押しのCrystal LED――CESまとめ(前編)2012 International CES(1/2 ページ)

» 2012年01月19日 13時08分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
展示会場の様子

 2012年のスタートを飾った「2012 International CES」は、15万人以上の来場者を集めて盛況のうちに閉幕した。ことテレビの分野に絞ってふかんすると、LGとSamsungの55V型有機ELディスプレイに始まり、第2世代Google TV、そしてソニーの“隠し球”ともいえる55V型「Crystal LED Display」と、比較的新技術や話題に恵まれた年であったと思う。今回は、International CES全体を通して感じた傾向とトレンドをまとめていこう。

 これまで、プラズマや液晶、リアプロジェクションと、大型ディスプレイ実現に向けてさまざまな技術が開発され、互いにしのぎを削ってきたが、数々の技術的困難を乗り越え、現在ではシェアの面で液晶パネルがほぼ市場を席巻している。一方で価格の下落も著しく、とくに競争の激しい北米市場においては、液晶テレビが30〜40V型で500ドル以下、50V型クラスでさえ800ドル以下という状態も珍しくない。一時期はフルHD対応やLEDバックライトの搭載、3D対応などが付加価値として期待されていたが、結局のところ、これらすべての機能を包含したものが前述のような価格帯まで落ち込んでいる。

 状況の打開に向け、メーカーはさまざまな方向性を模索している。例えばソニーはSamsungとの提携を解除してパネル生産会社のS-LCDから撤退。より柔軟に市場から液晶パネルを調達する計画を打ち出した。国産にこだわっていたシャープも液晶パネル生産の一部を国外移転する方針を出すなど、厳しい競争の中でコスト削減の努力が続いている。

 一方、独自の技術やサービスにより、製品としての付加価値を高める方向性もある。東芝の裸眼立体視対応の4Kテレビなどはその典型といえるが、CESの展示からはいくつかの傾向が見えてきた。それは、60V型を超える大型テレビの拡大、さらなる高精細化(4K2K)、デバイス連携を含むテレビのスマート化。今後1〜2年のトレンドになると思われる。

 そしてもう1つ。パネルそのものの変革を目指す動きだ。冒頭で触れたLGとSamsungの大型有機ELディスプレイ、ソニーが発表して話題になった「Crystal LED Display」――まずは、この新型パネルについてみていこう。

情報の少ない有機EL

 CES開催直前、「LGが55インチの有機ELディスプレイを発表する」という噂が業界を駆け巡り、大きな話題になった。その後、Samsungも同じ55インチの有機ELディスプレイを発表するという話が持ち上がり、技術的にも韓国メーカーが家電業界をリードするといった論調の報道が増えた。中には有機ELテレビで先行していたソニーが、他社にお株を奪われたとセンセーショナルなとらえ方をする向きもあったが、結果としてCrystal LED Displayの公開で多いに面目を保った。

 さて、うわさの大型パネルの有機ELディスプレイを眺めた感想だが、どちらも発色が非常に明瞭(めいりょう)で明るく、非常にインパクトの強いものだった。とくにSamsungはブース入り口に有機ELディスプレイを集中配置して来場者の目をひくなど、インパクト優先で成功していたイメージを受ける。通常であれば同サイズの液晶ディスプレイと並べてその違いをアピールする技術展示を行うのだろうが、そんな必要もないくらい歴然とした差があるといいたいのだろう。技術展示というより、あくまで“魅せる”ことを中心とした展示だ。

Samsungブースの正面入り口にやってくると、まず目に付くのはうわさの「55インチ有機ELディスプレイ」の大量展示だ。そのキャッチコピーも「Ultimate TV - Super OLED Sensation」(究極のTV――スーパー有機ELの衝撃)となっている。有機ELディスプレイの特長を生かすべく、とにかく派手な色調でコントラストの強いコンテンツを流して来場者の目をひく展示としていた

 また、ディスプレイの側面や背面に回り込むことも容易で、シンプルな背面やその薄さを体感することができる。LGは55インチ有機ELディスプレイのプレス発表会の際、「薄さ、軽量性、色」を3つのポイントとして挙げていたが、なるほど実際の展示を見れば、この3つが最大のセールスポイントであることはすぐに分かる。個人的には発色や明るさよりも“薄さ”のインパクトの部分が大きいと考えており、壁掛けTVや店舗等でのディスプレイなど、今後据え置きTV以外の用途への応用も期待できるのが最大のメリットだと考える。大型ディスプレイでもこの薄さを実現できる点が有機ELの強みだろう。

本当の注目点はその“薄さ”だろう。展示物の側面や背面にまわることが可能で、その驚異的な薄さを体験できる。当然、薄いということは“軽い”ということでもある(左、中)。別の特別室では、1画面で同時に2つのコンテンツを表示するデモを公開。3D表示の応用で、有機ELの反応速度(と明るさ)を示すデモだといえる

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