JVCケンウッドは10月18日、JVCブランドの高級カナル型イヤフォン「HA-FXZ200」および「HA-FXZ100」を発表した。スピーカーの“ケルトン方式”を応用したという新開発ウーファーを搭載。重低音とクリアな中高音を目指した意欲作だ。11月下旬にオープンプライスで発売する。店頭価格は、上位モデルのHA-FXZ200が2万5000円前後、HA-FXZ100が1万8000円前後になる。
ここ数年、スマートフォンなどの普及を背景に「意識的に1万円前後のミドルゾーンに製品を投入してきた」という同社だが、今回のFXZシリーズで再び高級タイプを手がける。「今後も独自技術による他社にないイヤフォンを“連打”していくが、今回はその第1弾」(同社)という。
“迫力の重低音”をうたう製品は多く存在するが、一方でボーカルが聞き取りにくくなったり、音の分離が悪いと指摘されることも多い。振動板が1つの場合、中高域に低音が被るなどの悪影響が出やすいためだ。そこで同社は、独立したスーパーウーファーを設け、かつネットワーク回路ではなくアコースティックに周波数帯を分けることで“リアルな重低音”と“解像度の高い中高音”の両立を目指した。
注目したのは、ケルトン方式と呼ばれるスピーカーの構造だ。ケルトン方式は、スピーカーユニットの周囲を筐体(きょうたい)で密閉し、音はダクトから出す。低域成分のみを抽出できる特性があり、サブウーファーに多く利用されているという。
ただし、イヤフォンの小さな筐体で、目標の“100Hzカットオフ”を実現するには、非常に細くて長いダクトが必要だった。「普通は“音の通り道”を細くすることなど考えないが、ダクトの共振周波数をとるには、ダクトを長くするか、細くするしかない。今回はあえて挑戦した」(同社シニアエンジニアリングスペシャリストの三浦拓二氏)。
カーボン振動板を採用した8.8ミリ径のユニットは、金属製のカバー(ユニットベース)で中に空間を確保しながら密閉。その中から内径0.4ミリのダクトが、ユニットベースをぐるりと1周した上で前方に延びる構造にした。これは長さをかせぐためだ。「30ミリの通路を通過する中で質の高い低音成分だけが抽出される。重厚でリアルな重低音サウンドを実現できた」(三浦氏)。
中高域用には、「HA-FXT90」で開発した「ツインシステムユニット」を採用した。金属ベースにカーボンナノチューブ振動板とカーボン振動板の5.8ミリユニット2基を固定する仕組みは従来機と同じだが、中高域の応答速度を高めるためにカーボンナノチューブ振動板を薄膜化したうえ、ネオジウムマグネットの磁力を強化、さらにユニットベースには比重の高い真ちゅうを採用して不要振動を排除する。なお、ツインシステムユニットは再生周波数帯域を分けていないため、全体の構成としては「サブウーファー+フルレンジ」に近いという。
2モデルの違いは、ウーファーを固定するユニットベースおよびコードの素材。上位機のHA-FXZ200では真ちゅう製ユニットベースと、芯線を純銀でコーティングした“銀コートOFC線”を採用している。一方のHA-FXZ100はアルミ製のユニットベースとOFC線だ。
型番 | HA-FXZ200 | HA-FXZ100 |
---|---|---|
型式 | ダイナミック型 | |
出力音圧レベル | 96dB/1mW | |
再生周波数帯域 | 5〜2万6000Hz | 6〜2万6000Hz |
インピーダンス | 16オーム | |
最大許容入力 | 50mW(IEC) | |
重量 | 約11グラム | 約10グラム |
コード | 1.2メートルY型、3.5ミリ金メッキステレオミニプラグ | |
付属品 | シリコンイヤーピース(S、M、L)、コードキーパー、クリップ、キャリングケース | |
価格 | オープン(2万5000円前後) | オープン(1万8000円前後) |
発売日 | 11月下旬 | |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR