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» 2013年03月07日 14時38分 公開

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(前編) (2/4)

[芹澤隆徳,ITmedia]

ベスト高画質賞・映画部門(洋画)

「【初回限定生産】ダークナイト ライジング ブルーレイ&DVDセット(3枚組)」(発売元・販売元:ワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社)

麻倉氏:今回は「ツリー・オブ・ライフ」(ディズニー)などがノミネートされていましたが、「ダークナイト ライジング」は圧倒的な映像力と高い情報量が評価されました。タイトルの素晴らしさとは、IMAX65ミリフィルム撮影の素晴らしさ。思い起こせば第1回のグランプリが「ダークナイト」でしたが、理由はそのときと同じです。例え4K編集を経て2Kのパッケージになっても、実はオリジナルの情報量が最終的な画質を左右するという好例でしょう。

 また、第1回のダークナイトのときはIMAX65ミリ撮影のシーンと35ミリレターボックス撮影の部分にかなりの画質の差が生じていましたが、今回は35ミリで撮影された部分も画質が良かったところもポイントです。5年が経過して、フィルム撮影能力も向上していることがうかがえます。

 受賞理由として、解像度が非常に高く、先鋭感、輪郭感が際立っていたこと。また豊かな色の階調によっても精細感が付与されていることが挙げられます。輝度と色の情報量がストーリーテリングにも大きな影響を与え、トータルとして解像感、情報量がBD-ROMというパッケージにどこまで入れられるかという挑戦が受け入れられたわけです。

 もう1つは、テクスチャーにこだわった部分が評価されました。暗部の明かり表現やキャットウーマンの衣装など――とくにキャットウーマンは全身がセクシーアピールといった存在ですから、色気がにじみ出てくるような描写は見どころの1つといえます。

ベスト高画質賞・映画部門(邦画)

「わが母の記」(発売元・販売元:キングレコード株式会社)

麻倉氏:はっきりいって、これまでは平均的なハリウッド作品と邦画作品を比べると、かなりのクオリティー差がありました。ハリウッドはダークナイトのような画質に力を入れた作品が多いのに対し、邦画は全体的にダイナミックレンジが狭く、黒が締まっていない、白が延びていないなど、はっきりと見劣りしていました。

 しかし一方で、ハリウッドと同じことやっていていいのか? という視点もあります。映画の内容から言っても、ハリウッドはアクション中心で二番煎じも多いいわば“売れ筋”志向。邦画は内面的というか、人間のあり方を説くモノが多いですね。そうした作品性にあった独自のピクチャートーンがあるのではないかと思っていたのですが、それを再認識させてくれたのが、「わが母の記」(発売元・販売元:キングレコード株式会社)でした。

 井上靖さんの原作から考えても、映像としてコントラストや色の濃さなどの派手なピーキー画調が求められるものではありません。このため映画化にあたり、“はんなり”とした色であったり、細やかな階調表現であったり、原作のイメージや作品コンセプトに合った映像を徹底的に追求したそうです。

 しなやかで階調情報も多いが、それが弱さにはつながらず、独特な存在感を示しています。繊細な輪郭描写と同時にしなやかさも感じられる。日本らしい繊細な画質になっているところが高く評価されました。母役の樹木希林さんが年代ごとに演じ分けた細やかな演技が、BDならではの再現性によって細かく描かれています。

 とくに伊豆の海で、役所広司さんと宮崎あおいさん、樹木希林さんが語り合うシーン。ナチュラルで繊細な映像とともに、海の描写がきれいでした。しっとりとした、しかし内に力強さを秘めた描写は素晴らしいものです。

 それ以外に評価が高かったのは、「はやぶさ 遥かなる帰還」(発売元:東映ビデオ株式会社、販売元:東映株式会社)と「テルマエ・ロマエ」(発売元:フジテレビ、販売元:東宝株式会社)です。遥かなる帰還は、ハリウッド調のハイコントラスト映像が評価されました。テルマエ・ロマエは、お風呂がテーマの映画ということもあり、肌色の再現性と階調性が高く評価されていました。

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