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3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2013年03月11日 09時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベストBlu-ray 3D賞

「ヒューゴの不思議な発明 3Dスーパーセット」(発売/販売元:パラマウント ジャパン合同会社)

麻倉氏:3D映画の歴史は古いですが、しっかりと3Dの効果や安全性を考慮した作品作りは2005年以降と浅い歴史しかありません。まず劇場用映画として素晴らしいモノが出てきて、それがBlu-ray 3Dになり始めたという状況です。

 ノミネート作のうち、「アベンジャーズ」はアクション物の典型で、内容は可もなく不可もなく、楽しめれば良いといった映画ですが、3D作品として見ると、前後の激しい動きで奥行き感を出す面白い試みをしています。アクション作品にあったダイナミックな3Dでした。

 ベストレストア賞でも触れた「タイタニック」は、2Dから3Dへの変換です。もとが2Dだったものは大抵前後関係が分からなくなったりしますが、タイタニックは正確に描かれています。ただ、やはり3D用に作られた作品とは雰囲気が異なります。人物が看板のようになる“かきわり”的なシーンがあって見ている人は違和感を感じてしまいます。現在の3D映画制作において、今やかきわりはタブーです。

 ベストBlu-ray 3D大賞を受賞した「ヒューゴの不思議な発明」は、奥行き感とともに画面内のオブジェクトが持つ立体感が素晴らしい。審査員の間では、とくに質感の評価が高く、CGと実写の区別がつかないという意見もありました。

 さらにすごいのは、手前にくる“飛び出し感”でしょう。以前のハリウッドは、安全性第一で奥行きに注力していましたが、「塔の上のラプンツェル」あたりからは、ここぞという場面で“飛び出し”にも挑戦するようになってきました。「ヒューゴの不思議な発明」でも、冒頭に描かれるパリ上空の雪のシーンなど、本当に目の前を雪が舞っているように感じます。

 3D効果は、ストーリーテラーでもあります。映画では登場人物の人間関係をフレーム内で表現することも多いですが、2Dでは横方向だけしか使えません。しかし3D映画であれば、縦方向も物語が見えてきます。スコセッシ監督は3Dをストーリーテリングの手法に昇華し、人物の内面描写のツールとして巧みに活用しました。観客の感情移入を誘い、今までよりも深く、物語に入り込むことができるのです。

ベストインタラクティビティ賞

「猿の惑星:創世記(ジェネシス)2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)(初回生産限定)」(発売元・販売元:20世紀フォックスホーム エンターテイメント ジャパン株式会社)

麻倉氏:ベストインタラクティビティ賞は、Blu-ray Discのインタラクティブ機能をうまく活用した作品に贈られる賞です。受賞した「猿の惑星:創世記」は、CGを多用した作品ならではの工夫がありました。

 BD視聴中にリモコンのカラーボタンを押すと、CGによる映像制作が分かる映像に切り替わります。これによって、劇中に登場する猿たちの豊かな表情や、滑らかな動きがどのように作られたのか、普段はユーザーが見ることのできないCG制作の裏側が分かります。ボタン1つですぐに呼び出せる点、またコレクションとしても高い評価を受けました。

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