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ダイソン「DC48」、音を小さくできた工夫とは?(1/2 ページ)

» 2013年04月01日 15時16分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ダイソンが3月28日に発表した新しいキャニスター型掃除機「DC48」は、従来機「DC46」に比べ、ボディーを30%小型化し、動作時の音も40%低減したというモデル。製品発表会では、背が低くなったエアマルチプライアー「AM02」とともに「日本市場に向けて開発した」ことをアピールした同社。英DysonシニアデザインエンジニアのMatt Steel氏に詳しい話を聞いた。

英DysonのMatt Steel氏は、モーターを専門に扱うエンジニア。DC48に採用されたデジタルモーター「V4」には3年ほど前から携わり、モーターそのものに加え、量産技術の開発にも深く関わった

――発表会では「日本市場に向けて開発した」という話がありました。まず、日本市場をそこまで意識する理由を教えてください

Steel氏:日本は私たちにとって非常に重要な市場です。ダイソンは世界60カ国で製品を販売していますが、市場規模からいうと日本はアメリカに次ぐ第2位のマーケット、実は本国イギリスよりも上なのです。しかも、日本の皆さんはハイテクなものが大好きだと聞いていますから、ダイソンの製品には訴求力があるのではないでしょうか。

 DC48もまた、日本市場を念頭に置いて作られたものです。例えば、日本の住居スペースを考慮すると、やはり小型で取り回しの良いものが受け入れられやすいでしょう。同時に日本の方々は製品を見る目も厳しいと聞いていますので、性能面でも妥協はできません。掃除機であれば、集塵力に関しても最高のものが求められます。

 DC48は、小さく軽くなりましたが、集塵力では従来機と同等かそれ以上です。そのポイントが、この新しいダイソンデジタルモーター「V4」。横にある典型的なACモーターと比べてください。一見してサイズ、容積ともに半分程度になっていることが分かります。

ダイソン「DC48」(左)。白いモーターが「V4」。横にある一般的なACモーターと比べると半分程度の大きさだ(右)

Steel氏:この小さく、ハイテクなモーターは、完全に独自技術で作られたものです。ダイソンは、デジタルモーターの開発に対し、過去15年間で1億ポンド(約148億円)を投資しており、V4自体の開発にも7年間という歳月を費やしました。

 私はシンガポールの生産拠点で小さなチームを持っていますが、そこでは年間400万台のモーターを生産しています。ちなみに、実際にモーターを製造する機械は、日本の平田機工製。12秒に1つ、モーターを作ってくれる優れた機械です。

――モーターが小さくなったことで、製品そのものにどのような利点が生まれたのでしょう

Steel氏:まず商品自体の小型化が可能になりました。しかし、より重要なことは、40%もの静音化を実現したこと。これは日本市場でも重要なことだと思います。

 モーターというのは、もともと騒がしいものです。しかしDC48では、モーターが小さくなって空間に余裕が生まれたため、吸音に役立つ多くの技術を盛り込めるようになりました。

 掃除機の場合、空気の経路が長ければ長いほど音は軽減されますが、DC48ではボール部分の上側から入った空気が、中で5回もターンします。中には180度折り返す部分もあり、間違いなく“ダイソン史上最長の空気経路”です。音は角を曲がるたびに跳ね返り、エネルギーが失われていきます。「やまびこ」を想像すると分かりやすいかもしれません。

複雑な空気経路

Steel氏:実は今回、初めてモーターの位置を変えることができました。通常は直線的に排気するよう斜めに配置するのですが、モーターが小さいため、モーターの背面を通してから空気を外へ出すことができるようになったのです。これも大きなポイントでした。

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