ITmedia NEWS >

大画面なら4Kは当たり前? 東芝レグザ「Z8Xシリーズ」が示す“次の一手”麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2013年06月13日 17時41分 公開
[ITmedia]

麻倉氏:1つは、現在のテレビ視聴環境を考え、いかに4Kを生かすかに注力したことです。4Kテレビでは超解像技術が重要になることはすでに触れましたが、Z8Xでは技術開発にあたって一番目においたコンテンツが「デジタル放送」でした。これまでは4Kマスターの“痕跡”を生かせるBlu-ray Discを第一にしていましたし、実質的に第1世代である他社も同様のアプローチです。しかし、先行して経験を積み、またユーザーニーズを捉えた結果、より多くの人たちがよく利用するデジタル放送を第一と考えたのです。

 “Z8X”という型番も意味深です。東芝にとって「55X3」などの“X”型番は最新技術を投入した次世代モデルという意味があります。今回も末尾に“X”は入っていますが、よく見るとXだけ少し小さい(細い)。これは従来の“X”型番と異なり、単に4Kパネルを搭載しているという意味だそうです。

 対して“Z”は現行モデルのフラグシップ。つまり、4Kテレビはもう次世代の製品ではなく、今あるテレビ環境を最高の状態で見るためのテレビというメッセージを含んでいます。Zシリーズは以前からファンの多い製品ですが、今回もZを特長付ける機能はすべて盛り込まれました。それはタイムシフトマシン用のUSB外付けHDD(別売)をプラスするだけで体験できる“全録”であり、自分好みの番組が容易に見つかる「ざんまいプレイ」であり、多彩なコンテンツ専用の映像モードでもあります。以前は4Kだから“X”だったかもしれませんが、今回は“Z”の中に4Kというフィーチャーが入ったと解釈できます。

タイムシフトマシンの「過去番組表」。リアルタイム放送のように録画を活用できる(左)。タイムシフトマシンの設定。地上波6チャンネルを選択できる(右)

「ざんまいプレイ」(左)とレグザクラウドサービス「TimeOn」(右)ももちろんサポートしている

麻倉氏:もう1つ、ユニークな新機能として「Hybridcast」対応があります。知っている人はまだ多くないと思いますが、Hybridcastはいわゆるスマートテレビを実現する日本発の規格。NHK放送技術研究所が開発し、IPTVフォーラムで標準化されたものです。諸外国のスマートテレビが単にネットコンテンツを視聴するものなのに対し、Hybridcastでは番組に同期したIPコンテンツを利用できるのが特長です。詳細は前回の連載を参照してほしいのですが、東芝のレグザクラウドサービス「TimeOn」に近いかもしれませんね。

 Z8Xシリーズは、3月29日にIPTVフォーラムが公開した「ハイブリッドキャスト技術仕様 ver.1.0」に準拠しています。これにより、NHKが年内に開始する予定のHybridcast試験サービスを不足なく楽しめるはず。欲をいえば、HybridcastとTimeOnが合体するともっと面白くなると思うのですが。

 ともあれ、Z8Xシリーズではタイムシフトマシンやネットを活用してテレビを楽しむ“Zカルチャー”ともいうべき部分が、4K解像度を得ることになりました。その意味はとても大きいと思います。

――肝心の画質はいかがでしょう

麻倉氏:前述の通り、4Kテレビでは超解像技術が大きな意味を持ちますが、東芝の場合はすでに5年の実績があります。再構成法から始まり、自己合同型、複数フレーム超解像と機能を追加しながら進化して、非常に細かい部分まで手が届くようになりました。例えば、映像をテクスチャー部、エッジ部、平たん部に分けてそれぞれに特化した処理を行う「微細テクスチャー復元」、画像を光沢成分と物体色成分に分けて処理することで“輝き”(光沢)を再合成する「輝き復元」など、アップコンバートに伴う画質の劣化を抑える機能も加えました。

「微細テクスチャー復元」(左)と「輝き復元」(右)のイメージ

麻倉氏:さらに重要なのは、今まではシーン(フレーム)単位だった画像解析をピクセルごとに変え、超解像の処理レベルを変更可能にしたことです。今までは映画などで制作者がわざとボカした部分にも若干超解像処理が効き過ぎていたところもあり、シーンによっては多少不自然に感じることがありました。今回の機能拡張により、ボカすべき部分はしっかりとボカせるようになったのです。

 また、先ほど「デジタル放送を一番に考えた」といいましたが、超解像技術にも専用の機能が追加されています。デジタル放送にはノイズが付きものですが、今までのノイズ処理だと、ブロックノイズやモスキートノイズまで若干超解像処理がかかり、強調されてしまうことがありました。しかし今回から、ノイズを除去してから超解像処理をかけることでそれを防いでいます。テロップなど文字の鮮明さも向上した印象です。

 さらに4Kでも120Hz(120フレーム/秒)表示が可能という点も合わせ、4Kならではの画質を得ることができました。東芝で4K撮影の映像を用い、BDにダウンコンバート収録したものとオリジナル4K映像をZ8Xシリーズで比較したところ、約90%にあたる2740本の水平解像度が復元できたそうです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.