5月末に東芝から“レグザ”「Z8Xシリーズ」が発表され、各社から2013年度の新4Kテレビが出そろった。「大画面なら4Kは必須」というAV評論家・麻倉怜士氏に、改めて4K化の意味と新製品の傾向、そして新登場のZ8Xシリーズについて詳しく話を聞いていこう。
――各社から4Kテレビが登場し、注目度も高いようです
麻倉氏:1月に米ラスベガスの「International CES」を取材したときも4Kテレビに対するメーカーやユーザーの関心が高まっていることは感じましたが、実際に製品が発表されてテレビ売り場の雰囲気も変わり始めたようです。私は家電量販店で定期的にイベントを開催していますが、前回はすぐ横のテレビ売り場に大きな空きスペースがありました。ソニー、シャープ、東芝と立て続けに新製品の発表があったので場所を開けていたのです。
――改めて4Kテレビの存在意義を教えてください
麻倉氏:理屈は単純です。最近は店頭で売れるテレビの10台に1台が50インチ以上というほど大画面化が進んでいます。例えば先日GfK Japanが発表した2013年5月の販売実績調査では、全体の9.6%が“50インチ以上”でした(数量ベース)。
しかし、テレビが大きくなると画素1つあたりの面積が広くなり、人の目には粗く見えてきます。もともと現在のデジタルハイビジョンが持つ2K(1980×1080ピクセル=フルHD)という解像度は50インチ程度を想定して作られたもの。それよりも大きな画面に映したら粗くなるのは当然でしょう。特にテレビの置き場所と見る位置はテレビを大きくしたといっても、簡単に変えられるものではありません。私の見るところ、65インチあたりになると2Kは画質が粗くなってきて、画作りの技術が高くてもなかなか追いつきません。そこで高精細な4Kパネルを使い、超解像技術を組み合わせて高精細な映像を映す必要があるのです。
麻倉氏:さきほどのGfKの調査によると、4Kテレビは前月(2012年4月)の5.4倍も売れたそうです。全体から見ればまだ小さな数字かもしれませんが、急速に定着していることがうかがえます。そもそも大きな画面を求める人たちは「従来と明らかに違う感動」を求めて売り場にくるのですから、4Kテレビの需要が増えることは必然でしょう。
いま大型テレビを購入している人たちは、およそ10年前に出始めの薄型テレビを購入した人たち。いわばフロンティアです。新しいものに敏感で知識もあり、良い物に相応の対価を支払うことに抵抗の少ないユーザー層で、彼らが買い替え時期に入ったことは4Kテレビにとって追い風だと思います。しかも10年前といえば720p以下のプラズマテレビが主流で、現在の4Kテレビとはサイズや画質以外の部分もかなり違いますから、買い替えの満足度は高いでしょう。
――各社の新製品に傾向はありますか?
麻倉氏:まず全体を俯瞰(ふかん)すると、各社とも「大画面=4K」という意志を明確にしました。2社から84V型が登場するなど、“超”が付くくらいの大画面化ですね。
もう少し細かく見ると、三者三様の特長があります。例えばソニーは、84V型で「4Kの世界がくるぞ」と打ち出して成功しました。そして薄型テレビではこれまで日陰者扱いされてきたスピーカーを大きくし、4月に発表された「X9200Aシリーズ」では、よりはっきりとしたアピアランスで訴求しています。映像と音の両方で感動を与える、その姿勢は評価すべきでしょう。
麻倉氏:一方のシャープは2月に発売した「ICC PURIOS」が原点であり、リファレンスになりました。ICC PURIOSは高価で特別な製品ですが、やはり素晴らしいもの。もちろん、ほぼ手作りのパネルと高価なチップを搭載した製品はおいそれと安くはできません。このため春の新製品「UD1シリーズ」では、汎用のパネルとチップを使いながら、これまでに培ったノウハウを生かし、どこまでICC PURIOSに近づけるか挑戦したのです。
東芝の4Kが面白いのは、既に第2世代であることでしょう。2011年秋の「CEATEC JAPAN」で裸眼立体視対応の「55X3」を発表しましたが、これが4Kパネル(QFHD)を採用した最初の製品です。裸眼3Dとしては世界初で面白い技術だったものの、残念ながら画質はいまひとつでした。ただ、その経験は次の製品に生かせます。55X3に続いて2D専用の4Kテレビ「55XS5」を経て、この春に第2世代の「Z8Xシリーズ」が登場しました。機能的にも前回までの経験が生きていると思います。
――具体的に、どのような点に経験が生かされているのでしょう
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