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» 2013年12月25日 15時12分 公開

2013年を総括! 「麻倉怜士のデジタルトップ10」(前編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

[芹澤隆徳,ITmedia]

第10位:ソニー「HAP-Z1ES」

――第10位はソニーのHDDプレーヤーです。

麻倉氏: ハイレゾ音源配信にソニーが名乗りを上げ、対応機器を一斉に投入したことは大きな意味を持っています。これまでは一部のオーディオメーカーが製品を作り、特定のファン層が1つのジャンルを形成してきましたが、それだけでは大衆化は難しい。例えばファイルの取り扱い1つとっても、ダウンロードからNASやネットワークの設定など、魅力的な世界ではあっても、そこに到達するまでのハードルがとても多いでしょう。だからこそ、私もいろいろな記事が書けるわけですが(笑)。

麻倉邸のソニー「HAP-Z1ES」

 今回、ソニーがウォークマンからアンプ、スピーカーなど、ハイレゾ対応製品を全面的に展開しました。これによって「入っていけそう」と感じた人も多いはずで、ハイレゾの敷居が下がったことを強く印象付けました。まず戦略として高く評価されると思います。

 なかでもHDDプレーヤーについては考え方が素晴らしい。この連載でも何度か取り上げていますが、対応ソフトとの組み合わせでPCから自動的に転送する仕組みを作りました。また、HDDをプレーヤーに内蔵したことにより、再生から出力まで一貫した“音作り”を可能にした点も評価できます。「HAP-Z1ES」では、ベテラン技術者が担当していますが、有為な人材を新しいジャンルの製品に起用できることもソニーの優れた部分といえます。

 もう1つ面白いのは、HDD内の音源をいったんDSDに変換し、ローパスフィルターで音を出すことです。鮮明でアナログライクな音がしますが、初期の仕様ではすべての音源を一度DSDに変換する仕組みだったのが問題でした。アーティストの中にはDSDが嫌いな人もいますから、少なくともオン/オフできるようにするべきでしょう。それが12月16日から提供されている新ファームウェアにより可能になったのです。

 成長する家電といいますか、時代やニーズに合わせて機能を変えられるのも面白いところです。もう1つ、私の希望を言っておきましょう。音源の転送は無線LANより有線LANのほうが早いので、ぜひLANケーブルでPCとHDDプレーヤーを直結できるようにしてほしいですね。

第9位:エソテリックSACD「金子三勇士 ショパン、リスト、ドビュッシーピアノ作品集」

麻倉氏: 第9位には、エソテリックの自主制作SACDを入れました。エソテリックはオーディオ機器メーカーですがディスクも作ります。大間知さん(エソテリックの大間知元彰元社長)は、ご自身が若いときに聴いて感動したウィーンフィル、ベルリン・フィルなどのオリジナルテープを探し出し、XRCDなどで有名なビクター・クリエイティブの杉本一家さんとコンビを組んでエソテリックのSACDシリーズを出してきました。1960年代や1970年代に録音された古いタイトルが中心ですが、当時より遙かに鮮烈な音が聴けます。1つのタイトルにつき2000枚程度しかプレスしない希少盤で、これまでのシリーズはほとんど売り切れになるほど人気があります。

収録には真空管式コンデンサーマイクの最高峰MEUMANN「M-50C」とBRAUNER「VM1」を使い、DSDで録音した

 今回の作品は、数々の国際コンクールで優勝したピアニスト・金子三勇士さんの演奏を、富山の北アルプス文化センターで収録したものです。北アルプス文化センターは、大間知さんにいわせると「日本一音がいいホール」。マイクは高音質ブランドとして知られる英DECCA(デッカ)が1960年代から主力としている「M-50C」で、江崎友淑さん(プロデューサー)のマイクセッティングや録音ノウハウも加わり、たいへん素晴らしい出来になりました。また、今年9月に収録し、11月の「インターナショナル・オーディオショー」に間に合わせたこともすごいですね。

 繊細にして強靱(きょうじん)、美しい響きと高解像度が両立した圧倒的な音です。私がこれまでに聴いたディスクの中でもとくに秀逸です。ピアノ演奏における私の音質評価用リファレンスディスクとなっています。

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