先週から今週にかけ、主要テレビメーカー3社が今年発売する4Kテレビを相次いで発表した。今回は、各社が取り入れた最新技術トレンドを俯瞰(ふかん)するとともに上位機の画質をチェックしていこう。
パナソニックは、今年から“4Kビエラ”を本格展開する。「AX800/AX800F」シリーズは昨年の「WT600」シリーズ(TH-L65WT600)の後継機という位置付けになっているが、これは採用するパネルのバックライト構成が、サイドエッジのローカルディミング対応だからという意味だ。
しかし、映像処理回路や色再現域は大きく変わった。新しい「HEXA CHROMA DRIVE」(ヘキサクロマドライブ)という6軸カラーマネジメント機能には3次元色空間変換機能を盛り込み、広色域を”派手な絵”ではなく、正確な色再現に活用した。とくに暗部での色再現性を高めることで、プラズマの良さといえる映画画質に近づき、超えようというアプローチだ。
また超解像回路も「WT600」シリーズから基本部分の変更はないものの、処理全体の見直しや各種パラメーターの追い込みなどによって画質は変化している。特に4Kカメラ撮影あるいは4K以上のフィルムスキャンで製作された高画質Blu-ray Discタイトルを見ると、奥行き感と実在感(リアリティー)の増した、自然な映像に変化している。4Kパネル広帯域映像表現能力を生かしたという印象だ。「WT600」シリーズとは発売時期にして半年ほどの違いだが、画質面ではまったく新しくなっている。改良モデルではなく、新規開発モデルとして評価した方がいいと思う。
なお、同社は1月に米ラスベガスで開催された「International CES」において、直下型LEDバックライトを用いた最上位製品もプレビューしている。部分駆動の分割数がさらに多いローカルディミングが特徴となるが、こちらの日本市場投入は、さらに画質面を追い込んでからになるだろう。
一方、昨年末の商戦で国内における4Kテレビ販売で75%ものシェアを獲得したとされるソニーは、一気にラインアップを3シリーズ8モデルに増やした。このうち「X9500B」シリーズは、同社として久々に投入された直下型LEDバックライト採用のローカルディミング搭載機だ。
同社のローカルディミング制御は、画面内に輝度の高い点光源がある場合、部分駆動の良さを生かしてバックライトを“ブースト”するなど、以前から定評あるところ。今回はさらに「X-Tended Dynamic Range PRO」(エクステンディッド・ダイナミックレンジ プロ)というダイナミックレンジ回復機能も手伝い、例えば映画Blu-ray Disc「ゼロ・グラビティ」では宇宙空間に浮かぶ地球、宇宙ステーションや宇宙服などが彫り深く、高いリアリティーで描かれていた。
とりわけ84V型モデルで直下型部分駆動の製品を投入してきた点には敬意を払いたい。詳細な画質検証はまだ行っていないが、4K液晶テレビの高画質化に全力を出した文字通りのハイエンドモデルといえるだろう。
BRAVIAのラインアップでいうと、中核モデルは4Kローエンドの「X8500B」シリーズということになるだろうが、個人的に店頭で確認してほしいのは「X9200B」シリーズである。どちらもバックライト構成はサイドエッジのLEDバックライトで、部分駆動の動きは「X9500B」シリーズには及ばない。しかし「X9200B」の内蔵スピーカーは、おそらく筆者が評価してきたテレビの中で、もっとも優れたものだ。
ソニーは前世代モデルから磁性流体スピーカーを採用するとともに、駆動するアンプ設計も含めたトータルの音の高品位化を進めてきたが、今回はオーディオ回路をさらに改善するとともに、回路基板を映像系から分離。グランドの引き回しなども含め、オーディオ機器と同様に追い込んでいる。
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