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直下型だから描ける“漆黒の闇”――ソニーの4Kテレビ「KD-65X9500B」山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2014年04月21日 16時32分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 夏のボーナス・シーズンを前に、パナソニックソニー東芝と各社から4Kテレビの新製品発表が相次いでいる。いずれ近いうちにシャープやLGエレクトロニクスなどからも4Kテレビのニューモデル発売のお知らせがあるだろう。

 各社の発表内容を吟味してみると、昨シーズンの4Kテレビとの大きな違いが 2つあることに気づく。1つめはサイズ・ラインアップが充実し、機種数が増えたこと。昨年の4Kテレビは55V型以上に限定されていたが、50V型(パナソニック)、49V型(ソニー)、40V型(東芝)とより身近な画面サイズの製品が増えてきている。

49V型のソニー「KD-49X8500B」(左)と40V型の東芝「40J9X」(右)

 40インチ台のテレビで4K高解像度の恩恵がどれほどあるのかという疑念がないではないが、実際に試作機をチェックしてみると、フルHD機とは明らかに異なる画素の緻密(ちみつ)さ、色合いの豊かさが実感できる。4K高解像度がもたらす画質インパクトが生々しく実感できるのは55インチを超えたあたりからだと思うが、パーソナルユースの“趣味の小型4Kテレビ”というカテゴリーができれば、それはそれで面白いというのが筆者の感想だ。

 2つ目に、すべての4Kテレビが近い将来の4K放送、4K配信、4K Blu-ray Discの登場に向けて周到な準備を行って製品発表されたことを挙げておきたい。具体的にはHDMI 2.0 、HDCP 2.2 への完全対応ということになる。

 HDMI 2.0は、4K/60p信号を伝送できるデジタル映像伝送規格の最新バージョン、HDCP 2.2 はハリウッドがすべての4K関連機器に搭載を要求している最新の著作権保護技術だ。また、4K放送/配信で採用される予定の最新動画圧縮規格H.265/HEVC用デコーダーがすでに内蔵されている製品も多いことにも注目しておきたい。124/128度通信衛星(CS)を利用した4K/60pのテスト放送の開始を6月に控え、対応チューナー(セットトップボックス)の間もなくの発売が噂されるこの時期、買ったばかりのに4Kテレビがすぐに陳腐化せず長く使えるように、各社ともに意を尽くしているのは間違いない。

 さて、そんな4Kテレビの新製品群をチェックした中で、とりわけその画質のよさに感銘を受けたのがソニーの「X9500B」シリーズだ。「ブラビア史上最高画質」をうたう本シリーズの65V型「KD-65X9500B」の画質をじっくりチェックする機会を得たので、さっそくその魅力についてつづってみたいと思う。ちなみに本機は、先述したH.265/HEVC用デコーダー内蔵タイプである。

65V型「KD-65X9500B」

3倍の電流でピーク輝度を確保

 昨年のソニーの4Kテレビ「X9200A」シリーズは、予想を超えるヒット商品となった。画面両サイドに従来の液晶テレビの常識を打ち破る本格的なステレオスピーカーを配置し、波長変換デバイスを用いた色域拡張技術「トリルミナスディスプレイ」を投入して液晶テレビの弱点といわれ続けてきた色再現にメスを入れたこの高級4Kテレビが、テレビのコモディティ化が続くわが国の市場であたたかく迎え入れられたという事実は、長年オーディオビジュアルの世界を見つめ続けてきた筆者にとっても実に心強い出来事だった。

 一方で、エッジ型LED バックライトでは物足りない、LEDのきめ細かな部分駆動(ローカルディミング)が可能な直下型バックライトを使った「X9200A」を超える画質性能を持った製品が欲しいという熱心なユーザーの声も数多く寄せられたのだという。そして、そのリクエストにすかさず応えたのが、今回の「X9500B」シリーズということになる。

 LED バックライトの分割数は明らかにされていないが、その部分減光の制御はとても見事。漆黒の闇をリアルに実現しながら、急激な輝度変化が続くシーンでもエリア駆動の反応が遅れて映像がパカパカとぎこちなく変動したり、明るいピーク成分の周囲が薄ぼんやりと明るくなる瑕疵(かし)がほとんど気にならないのだ。

 また本機には、「X-tended Dynamic Range」(以下XDR)と呼ばれるたいへん興味深いコントラスト改善技術が投入されていることにも注目したい。これは部分駆動によって生まれる電源の余裕を明るい部分に振り分けて、高輝度化を図るという技術。「X9500B」では、明るい部分に約3倍の電流を振り込めるように設計されており、約2倍の「X9200B」シリーズの“XDR”に対して“XDR PRO”と命名されている。直下型LED バックライトが使われた以前のフルHD機の店頭用「ダイナミック」モードでこの技術の採用例はあるそうだが、今回はハイライト部分の階調表現を向上させる独自手法を併用して、この技術を映画観賞用の「シネマ2」に採用しているのが目新しい。

「X-tended Dynamic Range」の比較デモンストレーションとその概要。デモは左から「X9500B」「X9200B」、従来機となっている(左)。XDRでは従来の2倍、XDR PROでは3倍の電流を明るい部分に使う(右)

 その独自手法というのが、ACE(Advanced Contrast Enhancer) と呼ばれるもの。これは暗部のガンマカーブはそのままに、中間調からハイライトにかけてガンマを適応的にコントロールして明部をツブさずに情報をきちんと出そうという技術で、伝送系で失われた明部階調も、その痕跡が残っていればそれをエンハンスすることで、撮影時に記録したかったであろう明部の情報を生々しく甦らせることができると開発者はいう。

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