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平井社長に聞いた“ソニーの現在”――4Kにハイレゾ、そしてPlayStation 4のこと(2/4 ページ)

» 2014年09月05日 15時05分 公開
[本田雅一,ITmedia]

「これからはバランス駆動」は冗談だと思ってた

――ハイレゾオーディオに関して、ソニーは「ウォークマン」やヘッドフォンなどのポータブル製品が中心です。パナソニックは「テクニクス」ブランドでハイエンドオーディオにカムバックしましたが、この状況をソニーはどう考えていますか?

平井氏:われわれはホームオーディオからポータブルオーディオ、高級オーディオから普及型まで幅広く製品を提供しています。その中で今回は、普及型の手軽なポータブルオーディオが欲しいという要望に応えることで、普及価格帯のハイレゾウォークマンを投入しました。

普及価格帯のハイレゾ対応ウォークマン「NWZ-A15」のほかハイレゾ対応製品は7機種を発表した

平井氏:またポータブルオーディオに関しては、ヘッドフォンアンプの「HPA-2」をやった時、開発陣に「ここまで来たら、この先はどうするんだ?」と尋ねたところ、「これからはバランス型駆動ですよ」というので、てっきり冗談だと思っていたら、本当に「HPA-3」を持ってきました。新しいリファレンスクラスのヘッドフォン「MDR-Z7」、それに世界的なケーブルブランドのキンバーケーブルとの協業でバランス駆動ケーブルも用意しています。ユーザーがこうしたい、こうあってほしいという部分に関して、徹底的に深掘りして製品を出しています。コンセプトは明快ですから、これからも徹底的に掘り下げて行きたいと考えています。

ヘッドフォンのバランス接続に対応したUSB-DAC内蔵ヘッドフォンアンプ「HPA-3AC」。PCMは最大384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまでサポートする

「MDR-Z7」はアルミコート液晶ポリマー振動板による70ミリ径ドライバーを搭載したハイレゾ対応ヘッドフォンだ。展示では、バランス接続ケーブル「MUC-B20BL1」で「HPA-3AC」に接続していた

平井氏:テクニクスに関しては、まだ多くの情報を持っていません。そこはパナソニックさんに伺うのが良いでしょう。われわれはこれまでも、ソニーの原点にはオーディオ技術がある。だから、ここは掘り下げる必要があるのだと話してきました。

 「いまさらオーディオが訴求点になるのか」「そこが利益の源泉になるのか」。そんな批判の声は幾度となく出てきていますが、ハイレゾ音楽ファイルがネットを通じて流通し始めたり、加入型音楽サービスの利用者増加など、音楽の楽しみ方が多様化している中で、ここにしっかりと根を下ろすことは重要だと引き続き考えています。

――今回、普及価格帯のハイレゾ対応ウォークマンを出したが、ハイレゾ対応のオーディオ製品を今後拡充していくのでしょうか?

平井氏:ハイレゾを身近にするため、将来は普及価格帯に積極展開していくことは必要になるかもしれません。しかし、顧客に評価されているのは音質です。高音質のソフト、高音質なハードウェア。価格を下げるため、スペックを満たしただけの、安かろう、悪かろうのハイレゾ製品を出してしまうと業界全体がダメになってしまいます。ハイレゾオーディオという分野は、いかに大事に業界全体で育てるかが重要だと考えています。

――先日、ソニーモバイルの業績予測を230億円下方修正しました。これはXperia Z3シリーズなどの投入による新製品効果も含んだものでしょうか?

平井氏:はい。この数字は「Xperia Z3」「Xperia Z3 Compact」など商品として織り込んだものです。業界全体としては、台数ベースで年23%のペースで伸びているスマートフォン市場ですが、その中でも地域やカテゴリごとに市場はどんどん動いています。年初に今年の予測を出しましたが、現実的には市場環境が変化しているので、業績結果が出る前にタイムリーに情報アナウンスをした結果です。ただし、他のエレクトロニクス製品全般に関しては大きな引き下げ要因はありません。

――CESの時、今年はスマートフォンの出荷台数を追うと話していましたが?

平井氏:CESの時に台数の話をしていたからといって、何が何でもそれを達成しようと躍起になってしまうと、市場環境の変化を追い切れなくなります。市場環境が変化したならば、それに合わせて現実的な戦略を採るべきだと考えていますから、リアルタイムに市場環境に合わせた考え方の修正をしています。今回の修正は、その結果として台数が減るということです。

――スマートフォン市場の変化に対応した戦略変更の詳細について聴かせてください。

平井氏:今回発表した「Xperia Z3」、さらにその派生製品のような高付加価値モデルに事業のウエイトをシフトしていくことが大切です。今の市場環境でシェア競争に足を踏み込んで赤字になってしまうのはよくない。そこで軌道修正をしました。ソニーの技術が活かせる製品、あるいはソニーグループの一員として利益貢献できる製品などに投資分やを絞り込みます。

「Xperia Z3」と従来型スマートフォンの発色を比較する展示

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