この1年間を振り返り、とくに印象に残ったデジタル機器やコンテンツをランキング形式で紹介する恒例「麻倉怜士のデジタルトップ10」。長年オーディオ・ビジュアル業界をウォッチしているAV評論家・麻倉怜士氏が太鼓判を押した製品とは? トップ10の前に、まずは番外からスタート。
それでは、早速“番外”からスタートしましょう。番外は2つあります。1つめは英Bowers&Wilkins(B&W)のブックシェルフ型スピーカー「CM6 S2」。同社は9月にミドルクラスのオーディオ&ホームシアター向けスピーカー「CMシリーズ」をフルモデルチェンジしていて、全8機種を一挙にリリースしましたが、その中で「CM6 S2」は圧倒的に良かったです。
「CM6 S2」は、キャビネットの上に分離したダブルドーム・ツィーターを搭載した“ちょんまげスタイル”です。B&Wは、最高の技術をフラグシップの「800シリーズ」に投入しますが、それと同じ“ツィーター・オン・トップ”方式です。実は、私はB&W製品ですと「800シリーズ」以外で感銘を受けたことはありませんでしたが、「CM6 S2」の音は解像感が高く、音の深みも感じられつつ躍動感もある。“鳴りっぷり”がかなり良くなりました。
このラインアップではトールボーイ型の「CM10 S2」も悪くないのですが、キャビネットの大きなトールボーイ型は低域の重厚さが出やすい一方、重くなりすぎる傾向があります。「CM6 S2」はバランスがよく、しかもペアで33万円と値段を考慮しても非常に魅力的(CM10 S2は1本33万円)。異様にコストパフォーマンスの高い製品だと思いました。B&Wの特徴である解像感の高さや躍動感があり、音楽の描写が濃いという“おいしいところ”がよく出ています。面白かったのは、ハイエンドオーディオ専門誌「ステレオサウンド」(ステレオサウンド刊)の「STEREO SOUND GRAND PRIX 2014」で数百万円の高いオーディオ機器に交じって、ペア33万円のこのスピーカーが受賞したことです。スタイリングも高品位ですから、これを推薦したいと思います。
2つめの番外は、前回のおすすめハイレゾ楽曲でも紹介した高岡早紀さんの「君待てども ~I'm waiting for you~」です。ハイレゾというとクッキリ系のイメージがありますが、高岡さんのまったりとしたボーカルと山下洋輔さんのリリカルなピアノが印象的な“癒しのハイレゾ”です。
私がこのアルバムを最初に聴いたのは、10月の「オーディオ・ホームシアター展」のシンポジウムで、ビクタースタジオの鈴木さん(デジタルソリューショングループ長の鈴木順三氏)が持ってきたとき。ほかの試聴タイトルと異なり、まったりとした大人の色気に会場全体がノックダウンされました。ハイレゾというとくっきり、しゃっきした高解像度というステレオタイプなイメージもありますが、もっとしなやかな感情表現にもハイレゾがうまく使われていて、新しい切り口を提案したタイトルだと感じました。
――では、いよいよトップ10にまいりましょう。
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