毎年、CES開催の前には取材メンバーが編集部へと集まり、事前に得られた情報からその年のトレンドや予測しつつ、取材対象を絞っていく作業が行われる。だが正直、今年に関しては“フタを開けてみるまで分からない”という状態だった。いくつかのトピックはあっても、今後数年のトレンドを牽引するような技術や製品が思い浮かばなかったからだ。
では実際、現地を巡ってみてどうだっただろうか。まず4K対応はすでに一段落し、次は高画質競争へと移りつつあるテレビメーカー各社の動きが見えた。米国で特に顕著だが、テレビで最大のボリュームゾーンである30〜40インチの製品はすでに恒常的に500ドルを下回る価格になっており競争も激しい。そこで高画質化を中心にライバルとの差別化を図っていたというのが、ここ数年の日系メーカーの戦略だった。そしてそれがより短いサイクルで韓国や中国といったメーカーにキャッチアップされるようになり、そうしたアピールもなかなか難しくなってきていたというのも同時に抱いていた印象だ。今年はそれが顕著で、ほぼすべてのメーカーが高画質さを全面に押し出した展示を行っており、技術的な差異こそはあれ、“高画質”だけがセールスポイントというのはもはや成り立たなくなりつつあるのかもしれない。
こうした高画質競争だが、ある意味で対照的だったのがサムスンとLGエレの韓国メーカー2社だ。サムスンが「S UHDTV」をうたって4K(UHD)の液晶テレビを全面的にアピールしているのに対し、ライバルのLGはOLED(有機EL)テレビで、「LGにしかできない」というメリットを強調していた。OLEDは自発光素子であり、輝度や色味の表現において液晶方式に比べて有利だといわれる。2010年には両社ともにOLEDテレビの発表で同市場への参入をアピールしていたが、結果としてサムスンは徐々にフェードアウトする形で今年の展示からは完全に撤退。複数のパネルサイズのバリエーションも合わせてテレビ関連の展示の半分以上を占めるのはLGだけとなった。
両社は同じOLEDでもテレビの表示で異なる方式を採用しているが、結果として製造面で難易度の低いLG方式が残ることになったようだ。LGのOLEDテレビは価格も決して特別高くはなく、筆者が確認した範囲で、フルHDモデルがドイツやフランスでは2999ユーロ、米国では3499ドルでの店頭販売が行われていたりする。
LGは従来の55V型に加え、昨年には66V型と77V型とOLEDテレビのラインアップも拡充しており、基本的には同社テレビ製品のハイエンドモデルと位置付けている。一方で液晶テレビのラインアップも引き続き用意しており、こちらも「ColorPrime」のブランド名でサムスン同様に高画質をアピール。HDR、量子ドット(QD)技術を組み合わせた色表現技術、アップスケーリングなどのデモストレーションは「Ultra HDTV 4K」と書かれたブースで行われていた。ColorPrimeは参考展示として98V型の8Kテレビ上でもデモストレーションが行われ、来場者の目を引いた。
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