ディーアンドエムホールディングスは、2月14日に中野サンプラザで開催された「ポータブルオーディオ研究会」において、audioquestブランド初のヘッドフォン「NightHawk」を国内発表した。セミオープン型オーディオリスニングを楽しむハイエンドユーザーに加え、伝統的なスピーカーのユーザーにアピールしたいとしている。参考価格は米国で599ドル。国内での発売時期に関しては3月末を目指して調整中だ。
NightHawkは、インイヤモニターで有名なWestoneでチーフエンジニアを務めていたスカイラー・グレイ氏が設計を担当した。以前手がけていたインイヤモニターとはドライバーの動作原理が異なるため、ヘッドフォンの開発はまさにゼロからのスタートだったという。開発にあたっては、およそ100のヘッドフォンを取り寄せ、分解して分析を行った。新技術も多数取り込んだため、スカイラー氏はaudioquest社に移籍してから2年間、新製品の開発にのみ従事した。
さまざまな試行錯誤を繰り返した結果、初期設計と製品版を比較すると、技術変更は35以上、磁気回路変更は50以上、サスペンション変更は100以上、その他細かいパーツ変更は1000を超えた。完成までには多大な失敗もあったというが、諦めることなく一貫して開発を続けた。「急いでもロクなものは出来ない」という、audioquest社オーナーであるビル・ロウデン氏の思想が現れている。
新技術に関しては、音響特性は木材で加工が容易な新素材である「リキッドウッド」がイヤーカップに採用された他、「スプリットギャップモーダーデザイン」という特殊な磁気回路を採用し、ボイスコイルの特性を高めた。仮想的にマグネットが2つあるような数値を出すという理論を試験で確認し、駆動力の大きさに設計したスカイラー氏自身が驚いたという。
ディフューザー部には3Dプリントを用いて、ダイヤモンド立体結晶構造を採用している。これは蝶の羽の構造から着想を得たもので、非常に複雑な構造なため、3Dプリント技術でしか作れないそうだ。
また開発にあたって、ヘッドフォンであってもラウドスピーカーと理念は同じという考えが貫かれた。そのため、さまざまな場面でラウドスピーカーの設計からインスパイアを受けたという。
例えば「バスケット」というスピーカーのフロントバッフルにあたるパーツや、補強用に使われたボイスコイルフォームは、通常ヘッドフォンには見られない。カップの内側はスピーカーと同等の強度を持たせると同時に「エラストマー・コーティング」という吸音処理を施している。ドライバーユニットの端には「サラウンド」と呼ばれるエッジを持たせたことで、駆動がより自由になった。これらもやはりスピーカー由来の発想だ。
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