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ハイレゾ対応、超多機能な“リアルモバイル”ポタアン「SoundBlaster E3」をしゃぶり尽くすハイレゾ対応ポタアン検証(2/5 ページ)

» 2015年03月02日 16時33分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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NFCでのペアリングが可能なBluetoothレシーバー機能

 ここからはE3の多機能な部分だ。大きな特徴になっているのがBluetoothレシーバー機能で、NFCでのワンタッチペアリングにも対応している。A2DP伝送に利用されるコーデックは、Bluetooth標準のSBCに加え、高音質低遅延をうたうaptX、AACにも対応している。Blueotooth伝送は当然ハイレゾ仕様ではないが、ポータブルアンプの存在で音質面は相応に期待できるだろう。

NFCを使ったペアリング。確認ダイアログが表示され、「はい」を選択するだけでペアリングが完了する(c)2013 プロジェクトラブライブ!(c)KlabGames (c)bushiroad All Rights Reserved.

 長辺の側面に装備した6つのマルチファンクションボタンも大きな特長だ。Bluetoothレシーバーであれば珍しくないが、E3の場合は、これらがUSB接続時やアナログ接続時にも利用できる。5つのボタンで再生開始/停止、曲送り/戻し、音量調整などが可能だ。ポータブルアンプを机上で利用するときはともかく、移動しながらの利用時には非常に便利。iPhone 5cとの組み合わせでは標準プレイヤーとオンキヨー「HFプレイヤー」で全ボタンが機能したほか、Windows PC(Windows 7)とのUSB接続時にも音量調整はWindowsのマスターボリュームが動作することが確認できた。プレイヤーは、「foobar2000」「VLC MediaPlayer」だ。

 アナログ接続時にマルチファンクションボタンを利用するにはプレイヤーと4極端子のケーブルで接続する必要があるが、これは付属している。曲送り/戻しボタンは機能しなくなるが、iPhone 5cとの接続では再生/停止ボタンを1回押せば再生/停止、素早く2回続けて押すと曲送り、素早く3回続けて押すと曲戻しになった。iOSでの一般的なワンボタンリモコンと同じ動作だ。またAndroid端末では、イヤフォンマイク端子の仕様がiPhoneと同じCITA仕様のau「ISAI FL」(LGL24)の場合、iPhone 5c同じように利用できた。なお音量調整はE3側で機能する形になる。

PC/Mac接続時にはエフェクト、外部マイク入力、再生リダイレクトもサポート

 PC/MacとのUSB接続時には専用ソフトウェアとの組み合わせでさらに多機能となる。9バンドのイコライザーを筆頭に、サラウンド、音質改善、低音増強、明瞭(めいりょう)なセリフ表現などを可能にする「SBX Pro Studio」、マイク入力利用時の音声品質を改善する「Crystal Voice」、ヘッドフォン/スピーカーの再生環境設定などを備える。いずれもPC向けサウンドカード/ユニットを多数手がけてきた同社製品らしい機能で、音楽を楽しむだけでなく、映画の視聴やボイスコミニュケーション利用なども多分に想定している。ユーザーによって要/不要がはっきりする機能でもあるが、オーディオメーカーの製品とは良い意味で差別化している。

 また面白いのが“再生リダイレクト”という機能だ。これはPCで再生している音をマイク入力としてミキシングする機能で、例えば「Skype」などでの音声チャットでは外部ミキサーなどを使わずにBGMを加えることができる。著作権を考慮すると中々出番のない機能かも知れないが、他のポータブルアンプでは見られない機能だ。

付属(正確にはサイトからダウンロード)の「Sound Blaster E-Series コントロール パネル」。各種エフェクト機能の調整や、本体では行えない各種レベル設定やミキサー機能の操作が可能だ

iPhoneとの組み合わせて使い勝手と音質をチェック

 では、iOSデバイス(iPhone 5c)との組み合わせでポータブルアンプとしての使い勝手と音質をチェックしてみる。特に明記しない場合は、ヘッドフォンはハイレゾ対応のオーディオテクニカ「ATH-MSR7 LTD」を使用している。

 既に触れたが、iOSデバイスとの接続は付属のUSBホストアダプタケーブルをE3のMicroUSBジャックに接続し、LightningケーブルでiOSデバイスとUSBホストアダプタケーブルを接続する形だ。この場合、接続形態としてはE3側がUSBホストになるのでiOSデバイス側に給電(充電)する形になるが、実際に給電は接続直後だけですぐにキャンセルされる。E3はMFi認証製品であり、iAPの機能を使って実現していると思われる。実際800mAhしか容量のないE3のバッテリーから給電してしまったらあっという間にバッテリー切れになってしまうだろうが、実際にはiOSデバイスとE3の組み合わせでのバッテリーの持ちは非常に良い。

 なお推奨は付属のUSBホストケーブルとiOSデバイス付属のLightningケーブルの組み合わせだが、他社のUSBホストケーブルやLightningケーブル(確認したのはMFiライセンス取得製品のみ)でも問題なく動作した。

付属のUSBホストケーブルとサードパーティー製の短いLightningケーブル(MFiライセンス取得)で接続した例。E3を胸ポケットなどにクリップで固定して、iPhoneを胸ポケットから出し入れして操作することもできる(左)。こちらはサードパーティのUSBホストアダプターと短いLightningケーブル(MFiライセンス取得)でさらにケーブリングを最適化した例。こういうちょっとした工夫が結構楽しいのもスマートフォンとポータブルアンプを組み合わせてハイレゾ環境を構築する魅力かもしれない(右)(c)2013 プロジェクトラブライブ!(c)KlabGames (c)bushiroad All Rights Reserved.

 今回はiPhone 5c標準プレイヤーとオンキヨー「HFプレイヤー 2.0.0」(有料版)を利用した。ハイレゾ音源はFLAC/WAVフォーマットで、HFプレイヤーではそのまま、標準プレイヤーでの再生ではiTunesで同期できる上限の48KHz/24bitにダウンコンバートのうえ、ALACフォーマットに変換した楽曲をそれぞれ使用している。なお量子化ビット数とサンプリング周波数の確認できるUSB-DACを使い、標準プレイヤーでも最大48KHz/24bitで出力されることは確認済みだ。

 E3を接続して、標準プレイヤーで48KHz/24bitのALACファイルが、HFプレイヤーでは96k/192KHzの音源は48KHzにダウンサンプリングされた形での再生になった。HF-Playerならもしや……と期待していたが、スペック通りの再生になったことになる。使い勝手にさっと触れておくと、E3のマルチファンクションボタンは全て(5つ)機能し、音量調整はiOSデバイス側が無効となり、E3側で調整することになる。E3の電源を入れた直後は音量は規定値になるが、「ATH-MSR7 LTD」との組み合わせではこの規定値が結構大きめの音量になるのが少し気になった。せっかくWindowsやMacOS上では専用ユーティリティーが利用できるので、音量の規定値を設定できればうれしい。

 では、音質はどうだろうか。ヘッドフォン直差しは標準プレイヤーで48KHz/24bitに変換したALACフォーマットを、E3経由は「HFプレイヤー」でハイレゾ音源をそのまま再生してみよう。

 最初に音源としてピックアップしたのは「μ's」の「No Brand Girls」。ラブライブのアニメ1期の楽曲としてはもっともビートの効いた曲で、96KHz/24bitで配信されている。ALACに変換した楽曲とE3経由のハイレゾ再生を比較すると、直差しでもハイレゾっぽい鳴り方はするものの、E3経由の方が低域の表現が豊かかつメリハリがあり、ノリノリなボーカルが埋もれず前にでてくる。直差しは高音が刺さり気味で全体にダイナミックレンジが狭い印象を受ける。

試聴曲の「μ's」の「No Brand Girls」をHF-Playerで再生している所。ジャケットの左上にファイル形式がFLACであること、右上にPCMの48KHzでデコードされていることが表示されている。infoボタンを押すと再生しているファイル自体は24bit/96KHzであり、ダウンコンバートでの再生であることが確認できる

 96KHz/24bitでのハイレゾ版がリリースされたばかりの「やなぎなぎ」のアルバム「ポリオネア」に含まれる「トコハナ」(テレビアニメ ブラック・ブレッド エンディング)に変更すると、E3の良さがさらに引き立った。直差しと比較すると、E3経由では冒頭の少しエコーを掛けたようなボーカルが心地よく響き、直後に一気に走り出す低音のスピード感も直刺しとははっきりと異なる。高音に関しては直刺しでも十分良く出ていると思うが、ボーカルのくっきり感もE3の方が良好だ。

 ボーカル色が強くアコースティックな音源として、192KHz/24bitで配信されている「やまざきまさよし」 のライブ音源「One More time,One More Chance」(LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾)で比較してみると、アコースティック感は直刺し(48kHzダウンコンバート)の方が少し良く感じられるものの、E3の方がやはりボーカルが近くつややか。後半に向けてすこしずつ楽器の主張が強くなっていくが、E3の方がボーカルが埋もれず、音場も広い。

 ここでの3曲の試聴で感じたのは、E3はハイレゾ対応のDAコンバータ内蔵ポータブルアンプとしては決して高価な部類ではないが、アンプ部分を含むアナログ回路は、プレイヤーとして使ったiPhone 5cのそれよりは少なくともしっかりと作られているということだ。もちろん音に対しての味付けの違いもあるとは思うが、E3の方が聴き心地が良く音量を上げていっても不快な音を感じることが少ない。

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