ここまでで触れてきたように「SoundBlaser E3」は非常にマルチパーパスでコンパクトなDAC内蔵ポータブルアンプだ。メーカーであるクリエイティブテクノロジーがPC向けのサウンドデバイスメーカーという印象が強いこともあってか、E3もいまひとつハイレゾ対応ポータブルアンプとしての注目度が低い気もするが、PCやMacとつなげば多機能に、iOSデバイスとの組み合わせでも便利なリモコン機能も使えるなど、競合製品にはない魅力も備えている。もちろんiOSデバイス専用ならE3よりも小型で直結できるような製品もあるが、例えばiPhoneをスマートフォンとしても使いつつとなれば、E3のように接続用のケーブルが選べてワイヤリングの自由が高い方が便利だったりもする。
もちろんハイレゾ対応ポータブルアンプとしての音質だけを追求すれば、本機は価格相応というのが妥当だろう。筆者は普段「iBasso D12HJ」を実質据え置きとして、ソニー 「PHA-1」をポータブル用途で使っているが、価格帯の違いからくる音質差は簡単には形容しがたい。アナログ部に掛かっているコストが段違いなのだからこれは当然だ。一方でハイレゾ音源をいつでもどこでも手軽に楽しむという点では、E3は音質としては若干カジュアルよりだが、音楽ジャンルを選ぶほどではないし、バッテリー動作時間も十分で、そのサイズ感も含めて全体がほど良くバランスされているのも事実だ。この辺は価値観の違いになってしまうが、筆者は「PHA-1」のようなポータブルアンプとしてスタンダードサイズの製品を、正直移動中に使う気にはなれない。
Androidデバイスとの組み合わせはUSB接続でのハイレゾ再生は公式サポートされないが、付属のUSBホストケーブルとUSBケーブルを組み合わせることで利用できた。ハイレゾ再生にはほとんどのAndroidデバイスでAndroid版の「HF-Player」や「USB Audio Player Pro」のような独自USBドライバを備えるアプリが必要となると思うが、筆者の手持ちではLG「ISAI FL」、Google「Nexus5」などで48KHz/24bitでの再生が行えた。この時Androidデバイス側がUSBホストになりE3へ給電する形になるのでバッテリー消費などの課題もあり、また公式サポート外なのでお勧めはできない。ただしポータブルバッテリーからの給電でできるホストケーブルなどを組み合わせればAndroidデバイス側のバッテリー消費の問題も対策はできるので、自己責任という形ならAndroidデバイスとの組み合わせも悪くないだろう。
今回のレビュー作業で気になって点も上げておくと、PCとのUSB接続時にノイズが乗りやすい点がある。Windows PCとUSBオーディオデバイスとの接続では定番ともいえる症状で、CPUやUSBポートの占有時間が長い状況があると、音楽データの転送が途切れることで発生する。場合によってはWindowsの設定を変更するなど対策が必要だ。この問題は筆者のノートPCと、手持ちのUSB接続が可能なポータブルアンプほぼ全てで発生するが、例えば「PHA-1」では音楽データが途切れても無音になるだけで済むが、E3では「ザッザッ」といったノイズになる。CPUの省電力モードを無効にする、バッテリーやACアダプターをデバイスマネージャーから無効化する(監視が無効になる)といった対策で概ね改善するが、PCが非力であればあるほどこの問題は大きくなる。無対策な状態だと筆者の手持ちのほかのUSB接続のポータブルアンプよりノイズの発生頻度が高めだったので、あえて書かせてもらった次第だ。また、ドライバレベルで改善が可能ならこちらも期待したい。ちなみに6コアCPUのデスクトップPCではこのノイズ問題はほぼ発生せず、iOSデバイスやAndroidデバイスとの組み合わせでもノイズが混入することはなかった。
E3は1万円台前半と同ジャンルの製品としてはリーズナブルながら、これ1台でPC/Macに加えてiOSデバイスと組み合わせてのモバイル環境までカバーするハイレゾ再生環境はもちろん、高音質なBluetoothによるワイヤレスオーディオ環境までに手に入るという点で、極めてコストパフォーマンスが高い製品だ。ハイレゾ入門用に購入し、その後ポータブルアンプをグレードアップした場合でも、モバイル環境ではE3を使い続けるといった使い方もできる。音楽は移動中に楽しむことが多いので、まずはどこでも高品位なハイレゾ音源を楽しめる環境がほしい、そういう視点でハイレゾ対応のポータブルアンプを探している人には特にオススメの製品といえる。
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