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空気を浄化する扇風機「ダイソン ピュア クール」の気になるところ滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2015年04月03日 13時25分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

より高性能なフィルターを使わなかった理由

 「Dyson Pure Cool」の開発にあたり、創業者であり、チーフエンジニアのジェームズ ダイソン氏は、既存の空気清浄機の性能に疑問を呈した上で、「PM0.1を99.95%除去」を目標に掲げたという。それを実現するため、35名のエンジニアが2年間でプロトタイプを450個も制作。何度もテストを重ねたうえで完成させた。

「Dyson Pure Cool」のカットモデル。フィルター素材を折りたたんでいることが分かる

 しかし、単純にPM0.1の除去率を上げたいのであれば、HEPAフィルターよりも高性能な「ULPA」(Ultra Low Penetration Air Filter、ウルパフィルター)を使うという選択肢もある。実際にULPAを使った掃除機なども市販されており、特別なものではないはずだ。


 「それは『Dyson Pure Cool』がいくら高い空気清浄機能を有していたとしても、扇風機として開発されたことに関係があります。実際、ULPAフィルターを使うことも検討しました。しかし、結論からいうと、あまりにもフィルターの密度が高すぎて、扇風機としての風量を大幅に弱めてしまうのです」(サヴィル氏)。

 「それにULPAフィルターを使っている掃除機なども検証してみたのですが、実際はそれほどの効果を示していなかった、というのも大きな理由です。ULPAフィルターは病院や製造施設などの無菌状態を保つために使用されるような超高性能フィルターですが、扇風機に使った場合、99.95%という数字をわずかに高めることをできたとしても、空気の流入速度を落としてしまうため、ユーザーベネフィットにはつながりません。例えばPM0.1の除去率を99.99%と“9”を1つ増やすことができたとしても、あまり意味はないのです」(パピエルコゥスカ氏)。

EN1822(欧州規格)に準拠する理由

 もう1つ気になるのは、その空気を吸い込む速度についてだ。同社によると、「Dyson Pure Cool」は8畳を25分、26畳を1時間できれいにするという。これは本格的な空気清浄機と比較した場合、大きく見劣りする数字だ。


 「たしかに吸込スピードは重要ではありますが、“もっとも重要”な要素ではありません。空気清浄機はむしろ、どういった物質をきれいに除去できるが重要でしょう。いくら除去スピードが早くても、PM0.1が取れないようでは、空気清浄機として使っている意味がありません」(パピエルコゥスカ氏)。

 「ユーザーは空気清浄機を使う際、15分できれいにしてほしいとか、そのスピードを意識して使ってはいませんよね? ほとんどの方は24時間動かしっぱなしのはずです。また、アレルゲン、ハウスダスト、ウイルスなど、いわゆる健康に被害を及ぼす有害な物質を取ってほしいとか、イヤなニオイを取ってほしいというのが主目的だと思います。だから、ダイソンは、空気清浄機などの検証を世界基準として認知されている米国のAHAM(米国家電製品協会)基準ではなく、EN1822(欧州規格)に準拠する形で進めました」(パピエルコゥスカ氏)。

 EN1822(欧州規格)に準拠するメリットは何か。もう少し具体的に聞いてみよう。

 「AHAM、EN1822ともに日本の規格であるJEMAに比べ、かなりの高い基準を設けているということでは共通ですが、基準の方向性が異なります。AHAMはどちらかというと空気清浄機のスピードを重視して検証しますが、EN1822は空気清浄機の効率性を重視しています。効率性というのはつまり、特定の有害物質をどれだけ除去できるかに重きを置いているのです」(パピエルコゥスカ氏)。

 「付け加えるなら、厄介な有害物質を見つけ出すことに重きを置いている基準ともいえます」(サヴィル氏)。

 では、その検証作業は具体的にどのような方法で行われるのだろう。

 「ダイソンの施設内に、EN1822規格に基づいたテストチェンバーがあります。大きさについては公表してませんが、ある一定の体積の透明なボックス内に、三角形のコーンのような有害物質などを放出できる装置が入っており、その中にフィルターを設置して、どういった有害物質が除去できて、逆にどういったものが通過してしまうのかを測定できるようになっています。そこでは専門のチームが、EN1822での検証方法とまったく同じ方法で、繰り返しテストをしているからこそ、ダイソンのさまざまなフィルターは、すべてが世界で群を抜いたレベルだと自信を持っていえるのです」(パピエルコゥスカ氏)。

Dyson Pure Coolは2色をラインアップ

 「ちなみに、今回PM0.1を想定してボックス内に散布された物質は、ラテックス素材とオイルベースの物質になります。これらは微小粒子状物質PM0.1前後の物質と見立てられる物質だからです」(サヴィル氏)。

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